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寺田和代「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」 第2回 ジョージア篇(6)

(5)崩れかけた旧市街地のエレガントな味わい(下)からのつづき

ジョージア篇(6)
廃墟のアルメニア教会と青い部屋


 午後3時すぎ、ホテルに戻って荷物を受け取り、1キロほど歩いて今夜から予約したホテルへ移動。

ホテルといっても、廃墟となったアルメニア教会の敷地内にある3部屋だけの宿泊施設。ユニークな立地への好奇心から 宿泊自体をこの旅の楽しみの一つにしていた。
宿泊代は8ヶ月前の早割(&為替相場)で一泊6000円ほど。

場所はすぐにわかった。住宅地の一角に木々が集まってそこだけ森のようになっていたから。

廃墟になったアルメニア教会。教会奥に見える赤屋根の小屋が宿泊施設


が、鍵のかかった鉄扉には施設名も住所表記も、呼び鈴さえない。

門扉の前で途方にくれていると、どこからともなく現れた温厚そうな初老男性がこっちこっちと手招きする。
ガマルジョバ(ジョージア語で "こんにちは" )!  予約したカズヨです、と名乗ると
うなずいて鍵を差し出し、小さな建物の入り口を指さす。

あまりのそっけなさに、オーナーのカハさん?(※以降、人名の敬称略)と、メールでやりとりした名をこちらから思い切って口にすると、そうだ、という。

 私は客として歓迎されていないのでは、と心配になるほど口数の少ないその人が、それからの3日間、どれほど滞在を助け、安心させてくれたことか!

廃教会に隣接する小屋ふうの部屋の印象は期待以上だった。
狭いながら2方向に窓があり、椅子とテーブル、部屋の外にはベンチまで備えた充実ぶり。
スモーキーな青で塗られた壁や、スタイルのある照明はインテリア誌に出てきそうなほどおしゃれ。
ステキな部屋ですね、と思わず歓声をあげると、
壁は好きな色を選んで息子と塗った、テーブルは自宅の古ミシンを再利用した、気に入ってくれてよかった、という。

ホテルの室内。渋いブルーの壁と窓からの光が美しかった

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