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寺田和代【Book Review】『20世紀ジョージア(グルジア)短篇集』児島康宏編訳
「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」
第2回 ジョージア篇【Book Review】〔2〕
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◆『20世紀ジョージア(グルジア)短篇集』児島康宏編訳、
未知谷、2021年8月
20世紀初めからソ連邦時代にかけてのジョージア(グルジア)文学を代表する6人の短篇集。
果樹や家畜に人のように語りかけ、彼らを自らの存在の一部として暮らす豊かな人生観を持ちながら、規範の多い社会で自由な個として生きられない人々の切ない姿が、ジョージアの自然やコミュニティの描写を伴いながら、どの作品からも詩的な言葉で立ち上がる。
『僕とおばあさんとイリコとイラリオン』の著者ドゥンバゼによる、少年時代に悪口雑言を吐き合ったギリシャ移民の友とのつらい別れを描いた『HELLADOS』はエピソードの明暗の落差にがくぜんとし、痛切さに思わず息が止まる。耳の不自由な若い漁師と老父、漁師の妻という3人の、時とともに変わりゆく心的世界を繊細な言葉で織り上げたグラム・ルチェウリシヴィリ『唖のアフメドと命』の心のひだに沁みいる読後感に酔う。まいった……。世界の広大さと人間の生き方の多様さへの認識が改めて更新され、そのことへの感嘆が体に沁みわたる。端正な訳もまたすばらしい。
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