寺田和代【Book Review】ノダル・ドゥンバゼ『僕とおばあさんとイリコとイラリオン』児島康宏訳
「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」
第2回 ジョージア篇【Book Review】〔1〕
◆ノダル・ドゥンバゼ『僕とおばあさんとイリコとイラリオン』児島康宏訳、未知谷、2004年2月
黒海地方のおばあさんの家で、イリコとイラリオンという大人げない2人のおじに養育的配慮ゼロながらも愛情たっぷりに構われて育つ“僕”。
12歳で酒も煙草も大人顔負けの悪ガキだけど、彼の賢さは3人の誇り。
やがてトビリシの大学に進学し、下宿先の大家や魅力的な同級生らとの関わりの中で大人になっても “僕” の心に変らず灯っていたのは……。
1930年代、ソ連邦下で政治犯として逮捕された両親を9歳で失い、祖母に育てられた著者の自伝的長編小説。
底流に喪失と痛みがありつつ両親の運命を匂わせる記述は一文字もなく、物語はどこまでも破天荒、時に切ないほどロマンチック。そのぶんも結末の光景が胸に迫り、読後しばらく本を抱きしめてしまった。
ジョージアでは誰もが知る国民的な小説で、ジョージア小説として初邦訳された作品。
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