寺田和代「本と歩く アラ還ヨーロッパひとり旅」 第2回 ジョージア篇(5)
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ジョージア篇(5)
崩れかけた旧市街地のエレガントな味わい(下)
そぞろ歩きの途中、2004年までジョージア正教の総本山(現在の総本山は、川をはさんだツミンダ・サメバ大聖堂──数日後に訪ねるカズベギの教会と同名。こちらは "大聖堂")だったシオニ大聖堂を通りかかると、ジョージアの伝統衣装を身につけた、結婚式を終えたばかりとおぼしきカップルが扉から出てくる場面に行き合わせた。
創建は5〜6世紀、現在の建物は13世紀のものといわれる聖堂を背後にした伝統衣装の結婚式。
その光景を、居合わせただれもが気圧されたように立ち止まって眺めていた。
ものの魅力は使われてこそ最大限に引き出されるのと同様、建物はその役割や目的の下に集う人々がいてこそ輝く。
まして時を超えて連綿と受け継がれてきた聖なる場での儀式なら。それを偶然見せてもらえたなんて。
大聖堂の守護神で、この3日後に訪ねたシグナギのボドゥべ修道院に亡骸が眠る聖ニノの計らいかも。なぁんて勝手に解釈して、ちょっと幸せな気分を味わった。
まち歩きのゴールはさらに15分ほど先、硫黄の匂いが立ち込める川沿いにドーム型の建物が並ぶ温泉街、アバノトゥバニ地区だ。
旧市街同様、シルクロード時代に温泉場として拓け、13世紀には65もの浴場が連なる一大温泉エリアだったそう。
今は入浴料500円ほどの大衆浴場から、1時間5000円くらいの高級個室浴場まで12施設。
せっかくだもの、大衆向けの施設にトライしようと入場待ちの列に並んではみたけれど、ジモティとおぼしきマダムたちが大声でおしゃべりしながら順番待ちをしている光景に圧倒され、すごすご引き返す。
貫禄ある彼女たちのコミュニティによそ者中のよそ者ひとり、裸でまぎれこむ勇気は絞り出せなかった。
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