好きな音
僕には好きな音がある。とてもたくさん。
僕は作られた音じゃなく、日常に転がる音が好きだ。
同じ音色、同じ音圧では一度しか聞くことができない音。それが好きだ。
鼻を啜る音がかすかに聞こえる、出会いと別れの春の音。
風が吹き込み風鈴が揺れる、爽やかな夏の音。
冬に備えて葉が落ちる、寂しさと哀愁の秋の音。
人々が霜を踏みしめ職場や学校に向かっていく、冬暁の音。
小鳥が目覚ましのようになく、眠い通学路の音。
水が一滴一滴と垂れてくる、美術室の水道の音。
誰かの足音と鼻歌が響く、放課後の学校の音。
雨をパチパチと弾く、傘の音。
時計の歯車だけが聞こえる、一人の夜の音。
好きな君と会う前の、胸の高鳴りの音。
そんな音たちが僕の人生にリズムと音色をつけて、いきいきとさせてくる。
みんなの好きな音を聞きたいな。
サポートしていただいたお金で本を買います!