パスポートなしで異文化にふれる 日本最大のモスク 〜東京ジャーミイ〜
小田急線 代々木上原駅下車。徒歩5分ほど歩くと住宅街に突如、異国情緒溢れる白い建物が見えてきます。
日本には100以上のモスク(イスラム教徒の礼拝の場)がありますが、ここは日本最大のモスク「東京ジャーミイ」
前回は駆け足での見学。異文化をもっと深く知りたくて、以前購入したパンフレットを読んでから、再びこの場所へ訪れました。イスラム教徒でなくても、誰でも無料で見学をする事ができます。また書店や図書コーナー、ハラール食品を扱うハラールマーケット、カフェもあります。時にはイベント等も開催されていたりと色々と楽しめます。
まずはトルコ茶とデーツで
エントランスを潜ると、テーブルの上に置かれているトレーを発見。その上には茶色の謎の物体...
えっ!?何かのサナギ!?....
そこを通りかかる人々がそれに手を伸ばし、何だか美味しそうにモグモグと食べています。よく見るとデーツと書かれていて、どうやらナツメヤシの実らしい...私も安心して手を伸ばし、食べてみたら甘くて美味しい。無料のトルコ茶も美味しくてデーツと共に3回もおかわりをしてしまいました。
トルコ料理を食べてみる
2階にあるカフェが閉まっていて1階の受付に案内されました。本日のメニューは1品のみ。ハラールマーケットで販売されていたスイーツにも心惹かれていましたが、やはりここでトルコランチを注文しました。さて気になるお味は...!?
⚫︎トルコ風ピラフ・・・上部は甘く下部の方は塩味がきいていました。シンプル過ぎて想像していたピラフとは違いましたが、苦手な味ではなかったです。
⚫︎牛肉となすのシチュー・・・甘くてまろやかな優しい味でした。
⚫︎サラダ・・・口に入れた途端、爽やかな味が広がり最後にピリッと辛みがきいてきました。辛みが苦手な方は、シチューとこのサラダを一緒に口に含むと調和されて良いかも!
⚫︎ヨーグルトスープ・・・レアチーズケーキを液状化して更に爽やかな方向に一癖つけたような味。これが少し口に合わなくて友人共々、最後まで食べ切る事が出来ませんでした。
本に触れてみる
多目的ホールの一角に図書コーナーがあります。
中には日本語で書かれた本もあり、友人はコーランの成り立ちに関する本を読んでいました。
♦️東京ジャーミイの歴史
東京ジャーミイの歴史は戦前にまで遡ります。
1917年ロシア革命が起き、多くの※ムスリム(イスラム教徒のこと)達は迫害を受け、生命の危機を逃れる為に海外へ避難せざるを得なくなり、※タタール人達(トルコ系民族)は中央アジアを経由して満州へ移動、さらに韓国や日本へと安住の地を求めて移住して来ました。東京ジャーミイの歴史は彼らによって作り上げられます。
東京ジャーミイの前身
東京や神戸に定住したタタール人達は気候の温暖な日本の生活にすぐ馴染むことが出来たようです。
1922年の関東大震災の発生直後、アメリカ政府が東京在住の外国人を救助する為、横浜港に船を用意したにも関わらず、タタール人達は申し出を断り日本から離れる事はありませんでした。
東京で新たな生活を始めたトルコ人達の悩みは子ども達の教育。1928年に日本政府から学校設立の許可を得た後、学校を設立。後に日本政府の協力により渋谷区に土地を購入し、1935年にその地に学校を移転。1938年、隣接した場所に彼らの悲願であった礼拝堂(東京回教礼拝堂)を建設する事が出来たのです。
東京ジャーミイの誕生
以来、礼拝堂は長きにわたりムスリム達の心の拠り所となってきましたが1986年に老朽化によって取り壊されました。
その跡地はトルコ人協会によって「ジャーミイ再建」を条件にトルコ共和国に寄付されました。
1997年、トルコ共和国宗務庁のもと「東京ジャーミイ建設基金」が設立。トルコ全土から寄付金が集められました。
新しい礼拝堂の設計は、現代トルコ宗教建築の代表的建築家 ムハッレム・ヒリミ・シェナルプ。建設にあたってはトルコ本国から約100人もの技術者や工芸職が来日。
1998年に開始された建設事業は日本とトルコの関係者の尽力により2年余りで完成し、2000年6月に盛大な開館式典が行われ、礼拝所としてまた人々が集う場として生まれ変わったのです。
(後に学校も老朽化で取り壊され、トルコ文化センターに生まれ変わりました)
アザーン(礼拝への呼びかけ)の声を聞き礼拝堂へ
服装のマナー
イマール(指導者)が自室に鍵をかけ何処かに向かいました。ガイドさん曰く、間も無く礼拝の時間で、これからイマールがアザーンをするとの事でした。
暫くするとアザーンが聞こえてきました。
私達も靴を脱ぎ礼拝堂の中へ入ります。
礼拝時の服装のマナーがあります。
女性は髪の毛を布で覆わなければなりません。
大きさ、色、柄は不問です。
もし布がなくてもストールの貸し出しがあります(無料)。服装も長袖、長ズボン、足首まで隠れるスカートを着用します。キャミソール、短いスカートは不可です。男性も膝上の短パン、タンクトップは不可です。万一、肌が露出してしまっていたら、アバヤといって身体を覆う黒いコートの貸し出しが無料でありますのでそちらを借りてください。
アッラー(神)に祈りを捧げる礼拝
男性は2階、螺旋階段で女性は3階と上がり、分かれた場所で礼拝をします。決して差別をしているのではなく、これは神に祈りを捧げる時に膝まづきお尻を突き出して祈ることや、やはり同じ空間ですと男性はDNA的に女性を意識してしまい、神に対して集中が出来ないので場所を分け、尚且つ女性が後ろという位置取りのようです。
(3階は見学者の男性でさえ上がる事が出来ません)
決して強要をしない
最初に任意の礼拝が始まり、その次にイマールがコーラン(聖典)を唱え、一斉に礼拝をします。
小さな子どもたちは、絨毯で遊んでいたりしてもOKだそうです。決して宗教を強要しない、そして理屈も教えないそうです。何故なら理詰めをすると嫌になってしまうから。親が礼拝をしている姿を見て自然と真似ていくようです。
そこは芸術の宝庫であった
この建物はオスマン様式です。ここは芸術の宝庫、見るものを圧倒します。
♦️東京ジャーミイの見どころ
オスマン様式による建築物で、もうそこは芸術作品の宝庫…圧倒されます。
〜より美しく書きたいという敬神から生まれたアラビア書道〜
アラビア文字の書体をデザイン化。スルス体、ナフス体、タアリーク体など様々な書体があります。
〜カリグラフィに注目〜
1階の玄関の扉、2階礼拝堂入り口扉、内部の壁や天井など、ありとあらゆる所に様々なカリグラフィの装飾が施されています。
アラビア語書体で神のメッセージや預言者の言葉が短い文章で込められています。
東京ジャーミイに装飾されているカリグラフィの解説などが、細かくパンフレットに掲載されているので購入をおススメします(200円)
〜美しいステンドグラス〜
石膏の窓枠に着色したガラスをはめこみ模様を書く技術。窓の内側と外側にはそれぞれ異なる模様が施されています。光の反射具合に合わせてガラスの大小や色の有無が決められています。緻密に作られていて、凄いですね…
〜多様な彫刻技術で形作られた石と大理石の装飾〜
〜偶像は描かれず、幾何学模様や植物模様があしらわれる〜
〜大ドームを6つの小ドームが支える〜
ハラールマーケットで楽しむ
ハラール食品が多数置いてあります。
デーツも容量によっては1000円以内で購入出来ます。今回は見るだけに留まりましたが、次回はハラールマーケットでスイーツをいただき、デーツとトルコ茶をお土産にしたいと思います。
他にも男性用の帽子、お祈り用の絨毯、ネックレスなど色々と置いてありました。
おしまいに
パスポートなしで異文化に触れる事が出来ます。
東京ジャーミイの歴史を知り、信仰を目で見、耳で聞き、食にも触れ、そして芸術にも触れる事が出来て充実した良き1日でした。でも一番は館内で迷った私達に2度も丁寧に声を掛けてくれ、案内までしてくれた信徒さん。この方の優しさに触れられた事が1番嬉しかったです。