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「つわり いつ終わる」検索


妊娠をしたら悪阻があることは知っていた。
漫画やドラマで何度も見てきたから。

その漫画やドラマは大体そのあとすぐ安定期か出産後へとワープし、つわりのピークはだいたい闇の中だ。

7週に入った頃から朝から晩まで吐き気に襲われ、
水でも吐いてしまう日々が始まった。

2日ほど休んでから、
「流石に会社にはまだ言えない
とはいえ、こんな何日も休むわけには…」
と体にムチを打って出勤を決意したが、
電車でも仕事中も吐き気が続くので、
ビニール袋を常に手に握りしめていた。

在宅勤務にさせてもらった日は、
太ももでゴミ箱を支えながらなんとかPC操作をしていた。

気づいたら1ヶ月で7キロ痩せて、41キロになった。

検診に行くと点滴しますか?と言われたが、

聞かれるってことは必須じゃないのか…
病気な訳でもないし…

と自分に言い聞かせて点滴を断っていたが、
メンタルはかなり落ちていた。
この頃の検索履歴は、

つわり いつ終わる
つわり 死にたい
つわり 消えたい
つわり 辛い

寝室で横になりながらスーッと涙が勝手に流れていた。

Twitterやたまひよアプリのルームを5分毎にパトロールのを繰り返す。

「辛いのは自分だけじゃない。
入院してる人に比べたら大したことじゃない。」

と思い込んでは涙を流していた。

検索をすると時々、
つわりないから育ってるか不安…
と言ってる人を見つけては、

マウントだ
嫌味だ
悔しい

と妬んでしまう。
そして妬む自分が醜くてまた落ち込んでしまう。

そして理不尽にもその悲しみや苛立ちの鬱憤を、旦那さんへと向けてしまっていた。

悲しい日は、
"何もできない"
"外に出ることもできない"
"大好きなコーヒーの匂いが気持ち悪い"
"お風呂に入ると湯気で吐いちゃう"
"息しかしてない"

とワンワン泣いてすがり、

イライラする日は、
"どうして自分だけお酒飲むの?"
"飲み会なんで行くの?"
"当たり前に身だしなみを整えられていいね"
"健診で会社休むのも私だけだしね"
"SNS見るくらい元気があると思ってるんでしょ、吐き気が辛くて眠れないから気を紛らわせてるのに"

とチクチクした言葉を浴びせる。

夫は必死に、

"育ててくれてありがとう"
"何もできてなくてごめん"
"嫌な気持ちにさせてごめん"
"変わってあげられなくてごめん"
"一緒にお散歩行けそうならどうかな?"

と少しでも私の情緒が乱れないように、
back numberの花束並みの「ごめんごめんありがとうごめん」くらいの言葉をかけてくれたし、私の相手に疲弊していくのも感じた。

旦那の優しさを感じると自己嫌悪でまた泣いた。

いつか終わるって聞くけど2ヶ月後とかのこと言われたって今が辛いのだ。
1日、そして1週間がとんでもなく長く感じるのだ。

いくら子が育っていてる証拠とはいえ、
お腹にいる子はまだ人の形にすら見えないのだ。

まだ膨らんでいないお腹を愛しいと思える余裕などないのだ。

私は安定期に入って割となんでも口にできるものの、32wくらいまで1日1回は吐いていた。

ただ、苦しむ自分を支えてくれたのは、
まだ会えぬ子の存在だった。

今つわりで辛い思いをしてる人たちに、
いっそ消えてしまいたいと願うほど辛い人たちに、
一度想像してもらいたい。

目が合うとニコッと笑ってくれる瞬間
小さい手を伸ばして私の頬を触ってくれる瞬間
そばを少しでも離れたら泣き喚く瞬間
そばに戻ったことに気づいたら泣きやむ瞬間
小さな手が自分の服をギュと握った瞬間
安心したように腕の中でウトウトしている瞬間
名前を呼ぶと振り向いてくれる瞬間
子供からギューと足にしがみついたきた瞬間
ハイハイでトイレまで追いかけてきて外からアウアウ聞こえてくる瞬間

ああ、この子の親なんだとじんわり心が温まる。
これほどに幸せな瞬間はないと思う。
そして子が育つに連れてその幸せの幅もさらに広がってゆく。

悪阻は本当に辛い。
2回経験したが、出来ることならもう経験したくないし、誰がなんと言おうと妊娠中最も無駄な現象だと思う。
辛い思いした方が、とか意味わからない。
頼むからもっと医療発達してほしい。

ただ、乗り越えた先にとんでもないご褒美がある。

つわりに苦しむ初期妊婦さん、今日もなんとか耐えてて本当にお疲れ様です。

未来の我が子との陽だまりのような生活を想像して、なんとか今日も乗り越えてください。



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