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シングルマザーとマスコミが怖くなった日

先週の今頃は、兵庫知事選挙がどうなるのかとドキドキしていた。

「既存メディア VS ネット」などと言われていたけど、今回のことで、テレビや新聞などに不信感を持った人が多いと思う。

知事も一人の公務員と見れば、壮大なバッシング(公務員いじめ)だったようにも思える。

たとえもし、知事が何かをしていたとしても、あのときのメディアは「異常」というか、見ていて決して気持ちの良いものではなかった。

きっと同じように思っていた人も多いと思う。


今だから話せるが、私も公務員側にいたとき、ある不祥事の”当事者”となり、テレビや新聞でバッシングを受けたことがある。

約13年間の市役所時代で、一番の苦い思い出と言ってもいい。


休みの日、突然、当時の課長から電話がかかってきた。

鮮明には覚えていないが、「説明資料を早急に作らなければいけない」とのことだった。

何が起きているのか、全然わからなかった。


私は当時、ひとり親家庭の担当をしていた。

ひとり親となった人の相談を受け、「手当」「医療費助成」などの制度の案内や申請の受付・審査をしていた。


休日、急いで市役所に行くと、
「窓口で対応した市民が市役所に対して怒り、マスコミが動いている」
ということが分かった。


先日、私が窓口で対応したお母さんだった。

彼女の言い分は、こんな感じだった。


・ひとり親になり市役所の窓口に行ったが、子どもの学校の就学援助(給食費の軽減など)の案内がなかった。

・学校の担任からも案内がなく、申請するのが遅くなった。

・遡って受けられるようにしてほしい。


確かに、お母さんの言い分もわかる。

今まで、学校(教育委員会)の制度を、市役所の窓口で案内することはしてなかった。

ただ、これは本来は「学校側が知らせるべき」ものだったと思う。


しかし、当時は「ワンストップ窓口」が意識され始めたころ。

「教育委員会の制度であれ、最初に対応する市役所の窓口で案内されるべきだった」

という結論にせざるを得なかった。


最初に対応した市役所の職員が、私。

個人的なミス・・・というよりも、縦割りの組織的な問題で、たまたま対応したのが私だっただけ。

そう言って慰めてくれる人もいたし、大きなダメージを受けたわけではなかったけれど、

お母さんの怒りの矛先が「市役所の窓口」なのであれば、「私の対応」に不満を持ったのだろう。


課長は何度かそのお母さんと電話した。

しかし、怒りは収まらないようで、物事は大きくなっていった。


ついに、マスコミが来た。

地元の放送局の記者が、課長と係長に取材をした。

番組リポーターもする人で、テレビで見たことがあった。

いわゆるネチネチした記者っぽくはなく、こちらの言い分にも耳を傾けてくれて、中立な雰囲気だった。


しかし、その夕方のニュースを見て愕然する。

当時、残業してた課の人と一緒に見ていたら、

「市役所がまたやらかした」

「市民が苦しんでいる!かわいそう!」

という雰囲気の報道がされた。

そして、あのお母さんが泣きながらインタビューを受けているのだ。



なかなかセンセーショナルな報道だった。

少しでも中立的に報道してくれる、と期待した私がバカだった。


マスメディアが、公務員なんかの肩をもつはずがない。

税金をもらっている公務員はたたきやすいし、民意を得られやすい。

報道には、持っていきたい”結論”があり、それに合う素材を取材し、つなぎ合わせるのだ。

この報道のされ方に、同僚と一緒にショックを受けて、一気にその記者やテレビ局のアレルギーになった。


ただ、同時にマスメディアの影響力も実感した。

一連の報道で、教育委員会が制度を見直し、そのお母さんは遡って受けられることになった。

その後、窓口では網羅的に制度を案内するように改善したし、学校側も制度の周知を徹底するようになった。


内側からは、なかなか変われないのが行政。

痛みは伴ったけれど、結果的には良い方向に変わっていったので「必要な出来事」だったのだと今は思う。

でも、私の中には「メディアへの不信感」は残った。


もともと不信感が全くなかったわけじゃない。

秘書課に勤務していたときに、ある市政記者が言い放った言葉が今でも忘れられない。


「そんなことなら、◯◯市さんの、都合の悪いこと書きますよ。」


どういう経緯でこの言葉がでたのかは覚えていない。

でも、これはいわゆる「脅し」ではないだろうか。

記者というのは、そんなに偉いのか?

影響力を持つと、ここまで言えてしまうのか?

そんなヤクザみたいな記者とも、うまくやろうとしていた秘書課長はすごいと思った。(というかそうせざるを得ない)


もちろん、市政記者はみんながそんな人ばかりではなく。

どんな小さな地域のネタも丁寧に取材してくれたり、新聞の影響力を良い風に活用してくれているような人もいたと思う。

私のような下っ端は直接関わるわけではないが、端からみていると「いろんなタイプの記者がいるな」と思った。


今回の兵庫県知事選挙。

斎藤さん側が有利になる証拠、数々の音声データなどがでてきたのは、どんな組織の中でも「大きい声は出せないけど本当はおかしいと思っている」という良心を持つ人がいてくれたおかげだと思う。

SNSという個人メディア、そして立花さんというスピーカー的な存在がいたからこそ、オールドメディアに対抗する大きなうねりになった。


日本は地方から変わっていく。

それを実感して希望が持てた出来事だったけど、逆に、政治やメディアの闇深さを見てしまった気がする。


これからどんどん膿出しが始まるのだろうか?

素直に謝れる大人はどのくらいいるのだろうか?



とにかく最近、政治が面白い!

(年取ったな・・・笑)


おしまい。


秘書課時代の楽しかった思い出👇️








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ナカノ@まったりフリーランス🪴
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