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苦いようで甘いようなこの泡に。

今年は、特にビールの美味しい1年だった。


ビールってもともと飲める方じゃなかった。どちらかというと苦手なほうで、いつ頃から美味しいと思うようになったかは覚えていないけれど、必死で背伸びして飲んでいた記憶はある。

東京へ出てきたばかりの頃はいわゆる"飲み友達"がなかなかできずにいた。福岡での大学生活であれだけ覚えたお酒の飲み方は、全く役に立つことなく、むしろ綺麗に忘れてしまうほどに人付き合いも減った気がした。

でもそうやって飲む機会が減ったからこそ、東京に来てからのビールにたくさんの思い出が付いて来たなと思う。


仕事と環境になれず、お金もない一年目。大学の友人たちが空港に近い私の家を、ホテルがわりにと言わんばかりに頻繁に東京旅行に来た。「また来たと〜?」なんて悪態つきながら5畳半の部屋で、大きな夢を語りながら飲んだ発泡酒は、深みのない安い味のくせに美味しかった。

苦手な会社の飲み会。上司と同期の名前を一致させるのでも精一杯だったのに、早く馴染まないとって最初の一杯目は「生で。」なんてかっこつけて。

時にしんどくても泣けない時の泣き薬になったかと思えば、八つ当たりするための火種になったり。

初めて仕事でミスをした日に、先輩がおごってくれた恵比寿ビールは、なんだか東京の味がした。

そうして時が経つに連れてだんだんと「飲めるお酒」から「飲みたいお酒」に変わっていって。



”仕事終わりのビール”という至福を覚えたのはいつだっただろう。

一仕事終えた後のあの一口目は何なのか。もうなんていうかめちゃくちゃうまい。もうそれだけ。あのうまさを言葉にするだけのボキャブラリーが今の私にはないことが残念だが、控えめに言ってもやっぱり「うまい!」のだ。

今年も、”仕事終わりのビール”はもちろん何度も飲んだが、その感覚と似た違った場面での美味しいビールもたくさん飲んだ。

職場が変わったおかげで、お酒好きな先輩と出会い、ガールズトークのできる立ち飲み屋を見つけた。平日のサラリーマンに紛れながら、ビール二杯分くらいで終わる今の目標を語る。その時間が今私はとても好きだ。



全てがうまくいかないと嘆いていたあの頃よりも、今の方が断然ビールが美味しくもある。

そしてこれからも、こんな風に美味しくビールを飲める大人でいたい。

日常の「ちょっぴり苦い」あれこれを、きちんと乗り越えた大人にだけ訪れる至福の時を、しっかり噛み締めながら、

今年も私は大切な人たちと乾杯しようと思う。


一杯目はもちろん、

「生で」ってね。



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