「丸い大空」ってなんだ?
スピッツ草野正宗さんの書く歌詞は、つかみどころのない感じで、何通りもの解釈ができる。だから誰の人生にでも寄り添ってくれる。というのはよく言われることです。草野さんご本人もあえて歌詞の意味を語ることはせずに、聴く人に想像の自由を残しておいてくれている。様々な人が、それぞれの解釈を披露し、また、それをフムフムと読んでくれる人もいて、にぎわっていますよね。私は、自分の解釈を語ることはあまりしたくない派の人間ですが、自分語りはしたい!というわけで、ひとつの楽曲が、一人の人間の急カーブの人生にも見事に寄りそっちゃったよというお話をしたいと思います。
「優しいあの子」は、2019年度前期のNHKの朝のドラマ「なつぞら」のために書き下ろされた楽曲です。父の四十九日と年度替わりの重なった、節目のタイミングで、この曲がテレビから流れてきました。その頃の私は、悲しむ暇もなくドタバタの日々が過ぎて、少し落ち着いたものの、頭の中は真っ白でした。読んだり考えたりする余裕はなく、歌詞は、ただ音として聴いていました。キレイな声の鳥が鳴いている…みたいな。キラキラした雪解けのイメージのギターと前向きなリズム隊が心地良くて暖かかった。聴いていると、脳の中で何かが起こり、喉の奥のツーンとした感覚が再現されます。子供の頃、大泣きしたあとで泣き止むことができたときの感覚。それが、なんだか自分の今置かれている状況と重なって、ものすごく力を貰えました。
この朝ドラの主人公は戦災孤児。その印象から、この【丸い大空】って、防空壕から見上げた空?なんて思っていました。その後、この表現は、草野さんが取材旅行で十勝の広大な大地に立った時に、思い付いたものであるらしいと聞きました。丸い形が目の前に見えるのではなく、東西南北を見渡して「丸い」ということなんだ!自分の視野の狭さが恥ずかしくなったものでした。
これが、2019年4月のこと。当時、うちには、若々しい美貌が自慢の19歳の兄妹猫がいました。20歳を越え、さらに長生きしてくれると思っていました。
しかし、19歳の壁は厚かった…2019年12月、2020年4月と、彼らは、立て続けにこの世を去り、私はペットロス人間となりました。この頃の私は、仕事帰りにバスを待ちながら、よく、ぼんやりと、夕暮れの空を見てました。たまたま、雲が猫っぽい形に見えたら、小躍りしたりして。
まさにこんな感じです!空を見上げては、雲の形に、死者とのつながりを探してしまう。無意識に、死後の世界と現実が空を通してつながっているんじゃないかと考えているんでしょうね。「みなと」の暗~い感じ大好きです!!
【丸い大空】に話を戻しましょう。こんなふうに空を眺める日々を過ごしていると、【丸い大空】って、空の向こう側にある、死後の世界の側(現実世界側からみれば裏側)から見た空のことなのではという考えが湧いてきました。(裏側ってどこよ?空の上?宇宙空間じゃないの?なんて、言わないでくださいね。【時の流れ方も弱さの意味も違う※】 話ですから。)※「未来コオロギ」byスピッツ
この世界と死後の世界は、大空という膜一枚で接していて、離れ離れになってしまった者達が、膜を挟んで、じーっと見つめあっているというイメージです。膜だから完全にシャットアウトじゃなくて、何かは通して何かは通さないという機能も持っているかもしれない。その機能を知りたい。でもそれは、無い物ねだりと分かってる。その機能を教えてしんぜようという人が現れたら、それは、霊感商法ですよ!
でも、これだけは正解。元飼い主が空を見つめて、雲を猫毛に見立てて涙をためているとき、猫ズもまた、その裏側から空を見つめて、優しかった元飼い主のことを想っている。美味しいものを食べてるかな。可愛いものを見つけられたかな。悲しい思いをしてないかな。悪いやつらに騙されてないかな。愛してくれてありがとう。
自称ペットロス人間は、この歌詞をそんなふうに感じています。
アルバムだと、「優しいあの子」の次の曲は「ありがとさん」。【怖がりで言いそびれたありがとう】は、次の曲で【化けてでも届け】られてしまうのです。スピッツの意外と押しが強いとこ好きです♡←こちらについてはまたいつか別記事で。