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職人。

僕の祖父は元々は飛騨高山の宮大工さんでした。すごく腕が良くて、優れた技術をもつと言う事で県から表彰されたり、「可児さん(祖父)に家を建ててもらいたい」と依頼が来る事もしょっちゅうでした。(亡くなった時には新聞にも載りました)
体が大きくて、寡黙で、本当に絵に描いたような職人さん。
幼かった僕は木の香りが立ち込める祖父の仕事場でまるで魔法のように木が形を変えていくところや、カンナで紙よりも薄く削られた木が空を舞うのを見るのが本当に大好きでした。
カンナで削られた木があまりにも綺麗だったので、それを持って帰ろうといつもこっそりポケットに詰めて込んだりしていました。
祖父が大工を辞めてしまったのは、まだ体も元気な60過ぎ。
詳しい事情は分からなかったけど、新しい時代の流れの中で大工として自分の信念を貫けなくなり、それならもうやらないと決めたようでした。

写真はうちの店のオープンです。
三つあるレバーで火の大きさを加減します。
温度はオーブンの中に手を突っ込んで、その感覚で測ります。
うちの店にはオーブンはこれしかないので、営業中の肉を焼いたりとかはもちろん、コンフィも作るし、パンを焼いたり、クッキーやジェノワーズ、マカロンもこれで焼きます。
全て温度は違うので、手を突っ込んで、その感覚で微妙な温度調整をします。
営業中はこのストーブ前にいると野菜も肉もその香りの変化や音で、最も美味しくなる瞬間を知る事ができます。
見ようとして見て、聴こうとして聴き、感じようとして感じる。五感を料理に集中させる。
極めると塩加減も香りで分かるらしい。

祖父にはまだまだ程遠いけど、いつか職人と呼ばれるような料理人なりたい。
目指すところは遥か彼方ですが、少しずつでも真っ直ぐ歩み続けます。
成長し続けるトピナンブールをどうぞ宜しくお願いします。

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