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W・ヴェンダースが再び東京を描く
TOHOシネマズ・シャンテにて『PERFECT DAYS』を観てきました。久しぶりにこういう構成の映画を見た気がします。どことなくJ・ジャームッシュ作品やW・ワンの『SMOKE』のような感じというか。映画館を出た後にLou Reedの「PERFECT DAY」が聴きたくなりました。
内容
東京でトイレの清掃員として働く男・平山の日常を描いた作品。東京スカイツリーのお膝元のアパートに住み、早朝に聞こえる箒で道路を掃く音で目覚め、車で都内の公共トイレ掃除に向かう。1日のルーティンを終え、銭湯に行き帰りに浅草の飲み屋街で酒を飲み家に帰る。そんな淡々と続く生活の中に小さな発見や彼を取り巻く人達との交流が描かれる。
見どころ
*エピソードの連なりによる構成
本作は起承転結というより一つ一つのエピソードの連なりで構成された作品なのが特徴。エピソードそれぞれの関連性は薄く、これはどこでも終われるなと思いました。短編でも面白く作れるんじゃないかなと。
*セリフではなく仕草による描写
主人公の平山はキャラクター的にも寡黙なので必然的に仕草や小道具による感情表現が活きる芝居が多かった。フィルムカメラ、カセットテープ、ガラケーなどによる一世代前のガジェットによる平山の質素さの描写やメモ用紙による他者とのコミュニケーションなどほのぼのとした感じが心地よく、それを押し付けがましくない距離感で表現しているのが凄く良かった。
*W・ヴェンダースの二人の天使。画面サイズとPOV
ヴェンダースの過去作『ベルリンー天使の詩ー』の冒頭でトリュフォー、タルコフスキー、小津について言及していましたが、画面サイズや首都高速のPOV動画を通して小津映画やタルコフスキーの『惑星ソラリス』の移動シーンの描写を思い出しました。オマージュかどうかは分かりませんが『惑星ソラリス』と『ベルリンー天使の詩ー』を観た人はそんな事を感じたんじゃないでしょうか。
という感じのレビューでした。
座組に大手の広告代理店やファーストリテイリング、渋谷区などが入ってる事からレビューで拒否感を示している人もいましたがそれを差し引いても良い作品である事に間違いないし、日本の映画制作者がこういう作品を造れないかと言ったらそんなコトない訳で。
外国人が描いた東京を通じて海外からどのように見られているのかを知る機会にもなるんじゃないかなと思いました。
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PERFECT DAYが複数並んでて『PERFECT DAYS』という粋な表紙