WEリーグカップ決勝戦 観戦記
両チームスタメン
広島はほぼいつも通りもメンバー。市瀬選手の相方に左山選手が入る。新潟はアジア競技大会明けの石田選手はベンチスタートで滝川選手をトップ下、山谷選手と浦川選手でCBコンビを組んだ4-2-3-1で臨む。
マッチレビュー
どちらが勝っても初タイトルとなるWEリーグカップ決勝戦。グループAはを無敗で勝ち上がってきたサンフレッチェ広島レジーナと最終節までもつれる大混戦のグループBを制したアルビレックス新潟レディースが死闘を繰り広げられる。序盤から広島がシンプルな縦へのボールからゴール前に迫り、左サイドの中嶋選手を存分に活かし打開を狙う。29分には中嶋選手のカットインからファーへ落とす絶妙なクロスに松本選手が合わせるなど良いシーンを作る。前半は広島が主導権を握ったものの決めきれずスコアレスのまま折り返す。新潟はボールを持つ時間はあったものの広島の速い帰陣とコンパクトなブロックに苦しみ打開策を見出せない。
しかし後半に入ると新潟が息を吹き返し始める。52分バイタルにポッカリと空いたスペースで滝川選手が受けると巧みなドリブルで一枚剥がし、左足でシュートを放つがこれは木稲選手の正面。広島も62分、左山選手のロングボールから高橋選手が抜け出しループシュートを放つがクロスバー上部をかすめる。69分、左サイド低い位置で引き取った園田選手のロングボールに滝川選手が絶妙なフリーランで抜け出してクロスを送るも道上選手には届かない。続く70分、右サイドでの崩しから渡邊選手が反転し左足で狙っていくとこれが石田選手の手に当たる。PKかFKかとても際どかったが判定はエリア外。これで得たFKを高橋選手が隙間を狙っていくが壁に当たる。82分に新潟は山本選手、白井選手を投入し攻勢に出る。87分、石田選手が左サイドで一度は奪われたボールを自ら奪い返すとクロスを送り山本選手がシュート、そのこぼれ球を川澄選手が左足で放つもどちらも広島の体を張った守備に阻まれる。直後には杉田選手のスルーパスに道上選手が抜け出すもここは木稲選手が前に出て防ぐ。その後もオープンな展開が続き両チームゴールを目指したがスコアレスで前後半90分が終了。15分ハーフの延長戦へ突入する。93分、左サイド深い位置で広島がフリーキックを獲得しキッカーは小川選手。ゴールに向かう速いボールにニアに飛び込んだ高橋選手がバックヘッドでうまく逸らすがわずかに枠を外れる。新潟は102分、右サイドで受けた川澄選手のピンポイントのクロスを山本選手が頭で合わせるも枠には飛ばせない。続く105分にも川澄選手の背後に落とすロブパスに道上選手が胸トラップで反転し滑り込みながらシュートを放つも木稲選手がワンタッチ。クロスバーに直撃する。延長後半に入り新潟は山本選手が何度も仕掛けペナルティエリア内に侵入するが決定的な場面は作れなかった。90分終了して0‐0。PK戦へ突入する。先行の広島は高橋、上野、柳瀬選手と3人連続成功。対する新潟は杉田、道上選手が成功し3人目、園田選手のシュートはゴール上に外れる。続く広島の4人目立花選手が決め、新潟は外せば終わりの場面で石田選手。ど真ん中を狙ったシュートがバーを叩いてゲームセット。PK戦まで及ぶ死闘を制したサンフレッチェ広島レジーナがWEリーグカップ女王となった。
振り返り
チャンスを作りながらも決めきれない苦しい展開の中PK戦で初タイトルをもぎ取った広島。CB2人に対して新潟が2枚で前からかけてきたことでなかなか後ろから狙い通りに前進することはできなかったが、両CBのロングフィードを中心に背後を狙う形でチャンスを作った。中嶋選手が何度も左サイドを切り裂きゴール前に侵入し続けた。リーグ戦ではクロスの精度やゴール前での合わせ方を改善しサイド攻撃をより強力なものにしていきたい所。守備面でも道上選手にボールが入る前に潰す意識が高く、新潟の中盤、サイドの選手に攻撃参加する時間を与えなかったこと。仮に前を向かれたとしても素早く帰陣し中央を固めるコンパクトなブロックで外まわりの攻撃にさせたことで大きなチャンスは作らせなかった。
新潟は新潟は序盤から主導権を握られる時間が続いたが山谷選手、浦川選手の強さのあるCBがサイドからのクロスをことごとく跳ね返し無失点に抑え、カウンターから前線の選手が前向きでボールを受けたシーンでは期待感のある攻撃を見せた。トップ下に入った滝川選手、山本選手のドリブルは相手に脅威を与えていたはず。しかし攻撃の生命線である道上選手が厳しいマークにあい全体を押し上げる時間が作れなかったことでゴール前に侵入する場面自体を多く作れなかった。リーグ戦では道上選手を抑えられたときのプランBが重要になってくる。
印象に残った選手
サンフレッチェ広島レジーナ 11番 中嶋淑乃選手
何度も何度も左サイドから仕掛けゴールに迫った。相手も警戒してCBの2枚目のカバーが素早く深くえぐることはできなかったがクロスを供給しつづけた。周りで観戦していた人たちも「あの11番うまいな」と口を揃えていたように一目見てプレーに花を感じる選手。代表にも追加招集されたWEリーグナンバーワンドリブラーには注目だ。
アルビレックス新潟レディース 19番 川澄奈穂美選手
なかなかボールが届かなかったが右サイドをベースポジションとしながら内側と外側を使い分け、自ら空けたスペースに入っていく動きは流石だった。ボールを持ったときもブロックを敷いた相手に対してのサイドからの正確で鋭いクロスや背後に落とすパスなど受け手だけでなく出し手としても躍動ていた。