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心の浄化週間〜DAY5-①〜
「行ってきまーす。」
ランドセルを背負って、プールバックと上履き袋をぶら下げ、玄関から息子が飛び出して行った。
「行ってらっしゃーい。プール入れるといいね。」
閉まるドアに押されて熱された空気が入ってきた。
今日は朝から関東全域に熱中症アラートが発令されている。暑すぎると学校のプールは中止になる。
17:30に病院の予約があるが、久しぶりに横浜の洋館達に会いに行くと決めている。
昨晩、私の愛読書である『洋館さんぽ』を開いたら、ひらりと紙が落ちた。
拾うと入館チケットであった。
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よくみると、神奈川近代文学館・太宰治と書いてある。
いつ行ったんだろう?と記憶を辿る。
-生誕105年太宰治展2014年-とある。10年前だ。
息子を妊娠する1年前、私何してたっけ?と考える。
時期からいって、馬車馬のように働いていた時だ。
好きな仕事に邁進し、すべて順調で、自分が決めた事が型になり、目標を達成していた頃。
その頃、洋館の魅力に取り憑かれアマゾンでポチッた本がこの『洋館さんぽ』で、これを片手に一人で洋館巡りをしていた。
横浜の洋館を訪れた時にこの文学館に立ち寄ったのだろう。
チケットに誘われるように横浜行きを決めた。
石川町駅の改札を通り抜け、日傘をさす。
暑さと紫外線対策を万全にしたので、ハンディーファンを首からぶら下げ、日傘にサングラスという姿は滑稽だが構ってはいられない。
適応障害と診断された頃は、他人の目が気になり目立たない服ばかり着ていたが、元々の私はゴーイングマイウェイな人間だ。
だいぶ回復したのかな?と思うが、面談での上司の言葉を思いだす。
「鬱状態の時は、早計に判断しない方がいい。自分の判断で勝手に薬をやめてはいけないんだぞ。」
その上司は20代後半から30年間薬を服用しているということを私に話し、アドバイスをくれたのだ。
まずは「外交官の家」に向かう。
急な坂道を噴き出る汗をハンカチでぬぐいながら、辛抱強く登っていくと、小さな門柱に「山手イタリア山庭園」と書いてある。階段を上がるとグリーンとホワイトの南欧風の洋館にでくわした。裏側の方から入ってしまったらしい。
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ブラフ18番館
このフランス瓦の洋館は、ブラフ18番館だ。
ブラフとは崖という意味だそうだ。見晴らしのよい丘(崖)の上に立っている。
中に入るのは初めてだが、こじんまりとしているが、暖かみがあり、ここに住んでいた牧師さんご一家の生活の息吹が感じられた。
![](https://assets.st-note.com/img/1720407900863-Pov5i1WiLG.jpg?width=1200)
外交官の家
噴水のあるイタリア風幾何学庭園をぬけると、外交官の家が現れた。
アメリカン・ヴィクトリアン様式の素敵な建物だ。
わたしはこの八角形の小部屋(サンルーム)にとても浪漫を感じる。こんな八角形の趣味部屋がもてたら、何しようかな?
レース編み、ステンドグラス作り…脳内で愉しむ。
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1階ハ角形のサンルーム
![](https://assets.st-note.com/img/1720409404725-9XsqOdaqyx.jpg?width=1200)
2階ハ角形の婦人趣味部屋
ここは明治政府の外交官であった内田邸を渋谷から移築したものであることを初めて知った。
なんで同じ敷地に2件、趣きの異なる洋館があるのだろうとは思っていたが、合点がいった。
マリアージュと言う言葉とは微妙にちがうが、日本式結婚みたいなものかしらね、と考えると妙にしっくりした。
横浜の洋館はどこであっても「いらっしゃいませ。」と入口の方が声をかけて誘ってくださる。
横浜の洋館達には人が集う。
入口の受付の方が数人、庭師の方が数人、警備の方、清掃の方。皆いそいそと洋館のお世話をしている。
館内は清掃が行き届き、生花や季節の飾りがしてある。庭園の花々は手入れをされ、朝夕しっかり水やりをされて活き活きしている。
とても愛されているな、と思う。
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