ISO/IEC 25010 製品品質モデル
製品品質モデルは、製品品質の特徴を8つの特性に分類している。また、各特性は、関係する副特性の集合から構成されている。
以下に各特性の説明をまとめた。
また、品質特性(副特性)について、自分なりの解釈は引用表示にて記載している。
機能適合性
明示された状況下で使用するとき、明示的ニーズ及び暗黙のニーズを満足させる機能を、製品又はシステムが提供する度合い。
注記)
機能適合性は,機能仕様にではなく,機能が明示的ニーズ及び暗黙のニーズを満足させるかどうかにだけ関係している
明示的、暗黙問わず、製品やシステムの機能がニーズを満たしているか。
機能完全性
機能の集合が明示された作業及び利用者の目的の全てを網羅する度合い。
機能が利用者の目的を満たしているか。
機能正確性
正確さの必要な程度での正しい結果を、製品又はシステムが提供する度合い。
機能が正しく動作するか。
機能適切性
明示された作業及び目的の達成を,機能が促進する度合い。
例)
不要な段階を除いて、作業を完成するために必要な段階だけを利用者に提示する。
注記)
機能適切性は,JIS Z 8520 における仕事に対する適合性に該当する。
機能が利用者の目的(業務など)を達成するのに適切な仕様となっているか。
性能効率性
明記された状態(条件)で使用する資源の量に関係する性能の度合い。
注記 1
資源は、他のソフトウェア製品、システムのソフトウェア及びハードウェア構成、並びに材料(例えば、印刷用紙、貯蔵媒体)を含むことができる。
注記 2
その他の特性の定義にあってこの特性の原文に落ちている“degree to which《度合い》”を補足して翻訳した。
システムが使用する資源の量の性能度合い。
時間効率性
製品又はシステムの機能を実行するとき、製品又はシステムの応答時間及び処理時間、並びにスループット速度が要求事項を満足する度合い。
システムの機能実行時の速度(応答、処理)が非機能要求を満たしているか。
資源効率性
製品又はシステムの機能を実行するとき、製品又はシステムで使用される資源の量及び種類が要求事項を満足する度合い。
注記
人的資源は、効率性の部分に含まれる。
システムの機能実行時の使用資源量(メモリなど)が非機能要求を満たしているか。
容量満足性
製品又はシステムのパラメータの最大限度が要求事項を満足させる度合い。
注記
パラメータには、保存することができる項目の数、同時に利用する利用者の数、通信帯域、トランザクションのスループット、及びデータベースの大きさを含む。
システムの容量(データ許容量、同時利用数、同時接続数など)が非機能要求を満たしているか。
互換性
同じハードウェア環境又はソフトウェア環境を共有する間、製品、システム又は構成要素が他の製品、システム又は構成要素の情報を交換することができる度合い、及び/又はその要求された機能を実行することができる度合い。
システムが環境を共有している他のシステムとのデータの互換性。また、システムの機能が問題なく実行できるか。
共存性
その他の製品に有害な影響を与えずに、他の製品と共通の環境及び資源を共有する間、製品が要求された機能を効率的に実行することができる度合い。
他のシステムと共存した環境でシステムの機能が問題なく実行できるか。また、他のシステムに影響を与えていないか。
相互運用性
二つ以上のシステム、製品又は構成要素が情報を交換し、既に交換された情報を使用することができる度合い。
他のシステムとデータの互換性があるか。
使用性
明示された利用状況において、有効性、効率性及び満足性をもって明示された目標を達成するために、明示された利用者が製品又はシステムを利用することができる度合い。
注記)
使用性は、副特性、すなわち、製品品質特性として明示し若しくは測定するか、又は利用時の品質の部分集合である測定量によって直接的に明示し若しくは測定できる。
利用者がシステムを満足(有効、効率)に利用できる度合い。
適切度認識性
製品又はシステムが利用者のニーズに適切であるかどうか(機能適切性)を利用者が認識できる度合い。
注記 1
適切度認識性は、製品又はシステム、及び/又は他の関係する文書の最初の印象から、製品又はシステムの機能の適切さを理解することができるかどうかによって決まる。
注記 2
製品又はシステムによって提供される情報は、デモンストレーション、チュートリアル、文書類又はウェブサイトのためのホームページ上の情報を含むことができる。
「システムの機能が利用者のニーズに適切であること」を利用者に認識できるようにしているか。
習得性
明示された利用状況において、有効性、効率性、リスク回避性及び満足性をもって製品又はシステムを使用するために明示された学習目標を達成するために、明示された利用者が製品又はシステムを利用できる度合い。
利用者が定義されたシステムの学習目標を達成できるか。
運用操作性
製品又はシステムが、それらを運用操作しやすく、制御しやすくする属性をもっている度合い。
注記
運用操作性は、JIS Z 8520 で定義するように、可制御性、誤りに対しての許容度及びユーザの期待への一致に対応する。
システムが運用しやすい操作性か。運用時に想定される誤操作に対する許容やユーザーの期待に一致しているか。
ユーザエラー防止性
利用者が間違いを起こすことをシステムが防止する度合い。
システムが利用者が誤操作しないよう防止できているか。
ユーザインタフェイス快美性
ユーザインタフェースが、利用者にとって楽しく、満足のいく対話を可能にする度合い。
注記
このことは、利用者の精神的快適性及び満足を増加させる製品又はシステムの特徴、例えば、色の使用、グラフィックデザインの種類に言及している。
システムのUIがユーザーを満足(色、デザイン)させているか。
アクセシビリティ
製品又はシステムが、明示された利用状況において、明示された目標を達成するために、幅広い範囲の心身特性及び能力の人々によって使用できる度合い。
注記 1
能力の範囲は、年齢による身体障害を含む。
注記 2
身体障害をもった人々に対するアクセシビリティは、次のいずれかによって明示され、測定されることができる。
− 明示された利用状況において、有効性、効率性、リスク回避性及び満足性をもって明示された目標を達成するために、明示された身体障害をもつ利用者によって、製品又はシステムを利用できる程度について
− アクセシビリティを支援する製品特徴の存在によって
システムが想定される利用者(身体障害者や老人なども含む)の目的を達成することができるか。
信頼性
明示された時間帯で、明示された条件下に、システム、製品又は構成要素が明示された機能を実行する度合い。
注記)
ソフトウェアでは、摩耗は起こらない。信頼性の限界は,要求事項、設計及び実装での障害が原因である。また、(利用)状況の変化が原因である。
システムが非機能要求(利用時間帯、利用条件)を満たしている度合い。
成熟性
通常の運用操作の下で、システム、製品又は構成要素が信頼性に対するニーズに合致している度合い。
注記)
成熟性の概念は、通常の運用操作の下で要求されたニーズに成熟性以外の品質特性が合致している度合いを示すために成熟性以外の品質特性に適用することもできる。
システムの信頼性が利用者のニーズに合致しているか。
可用性
使用することを要求されたとき、システム、製品又は構成要素が運用操作可能及びアクセス可能な度合い。
システムが利用者が使用したいときに使用することができるか。
障害許容性
ハードウェア又はソフトウェア障害にもかかわらず、システム、製品又は構成要素が意図したように運用操作できる度合い。
システムが障害発生時には、意図した動作になるか。
回復性
中断時又は故障時に、製品又はシステムが直接的に影響を受けたデータを回復し、システムを希望する状態に復元することができる度合い。
注記
故障に伴い、コンピュータシステムが一定の時間停止することが時々あるが、そのシステムの回復性によって、停止時間は決まる。
システムが故障時にデータを回復し意図した状態に復元できるか。
セキュリティ
人間又は他の製品若しくはシステムが、認められた権限の種類及び水準に応じたデータアクセスの度合いをもてるように、製品又はシステムが情報及びデータを保護する度合い。
注記 1
蓄えられたデータ又は製品若しくはシステムによって蓄えられたデータと同じように、セキュリティは送信中のデータにも適用する。
注記 2
生存性(survivability)(攻撃が存在するにもかかわらず,時期を逃さずに,必須のサービスを提供することによって,その使命を製品又はシステムが満たし続ける度合い。)は、回復性(4.2.5.4)によって取り扱われる。
注記 3
免疫性(immunity)(製品又はシステムが攻撃に耐える度合い)は、インテグリティ(4.2.6.2)によって取り扱われる。
システムが攻撃の有無に関わらずデータを保護できる度合い。
機密性
製品又はシステムが、アクセスすることを認められたデータだけにアクセスすることができることを確実にする度合い。
システムが権限に応じたデータにのみアクセスできるようにしているか。
インテグリティ
コンピュータプログラム又はデータに権限をもたないでアクセスすること又は修正することを、システム、製品又は構成要素が防止する度合い。
システムが権限がない場合にデータへのアクセスや修正を防止しているか。
否認防止性
事象又は行為が後になって否認されることがないように、行為又は事象が引き起こされたことを証明することができる度合い。
システムでの行為や事象が証明できるようになっているか。
責任追跡性
実体の行為がその実体に一意的に追跡可能である度合い。
システムでの行為が一意に追跡できるか。
真正性
ある主体又は資源の同一性が主張したとおりであることを証明できる度合い。
利用者やデータを認証することができているか。
保守性
意図した保守者によって、製品又はシステムが修正することができる有効性及び効率性の度合い。
注記 1
修正には、環境における変更、並びに要求事項及び機能仕様における変更に対するソフトウェアの訂正、改良又は適応を含むことができる。修正には、特別の支援要員によって実施される修正、及び事業要員、運用要員又はエンドユーザによって実施される修正を含む。
注記 2
保守性には、更新機能及び向上機能の実装を含む。
注記 3
保守性は、保守活動を手助けするための製品若しくはシステムの固有の能力、又は製品若しくはシステムを保守する目標に対して保守者が経験する利用時の品質のいずれか一方として、説明することができる。
システムの修正ができること、および修正時の効率性の度合い。
モジュール性
一つの構成要素に対する変更が他の構成要素に与える影響が最小になるように、システム又はコンピュータプログラムが別々の構成要素から構成されている度合い。
システムが影響を考慮した作り(モジュール構成)となっているか。
再利用性
一つ以上のシステムに、又は他の資産作りに、資産を使用することができる度合い。
システムが別のシステムに再利用できるか。
解析性
製品若しくはシステムの一つ以上の部分への意図した変更が製品若しくはシステムに与える影響を総合評価すること、欠陥若しくは故障の原因を診断すること、又は修正しなければならない部分を識別することが可能であることについての有効性及び効率性の度合い。
注記
故障又はその他の事象の発生以前に、製品又はシステムが自分自身の障害を分析し、報告書を提供するための仕組みを提供することを、実装に含めてもよい。
システムの修正時に影響範囲の解析ができるようになっているか。または、修正箇所の特定ができるようになっているか。
修正性
欠陥の取込みも既存の製品品質の低下もなく、有効的に、かつ、効率的に製品又はシステムを修正することができる度合い。
システムの修正時にバグが出にくい、またデグレードも出ないようになっているか。
試験性
システム、製品又は構成要素について試験基準を確立することができ、その基準が満たされているかどうかを決定するために試験を実行することができる有効性及び効率性の度合い。
システムの試験基準が明確で試験の実行もできるようになっているか。
移植性
一つのハードウェア、ソフトウェア又は他の運用環境若しくは利用環境からその他の環境に、システム、製品又は構成要素を移すことができる有効性及び効率性の度合い。
注記)
移植性は、移植活動を容易にするための製品若しくはシステムの固有の能力、又は製品若しくはシステムを移植する目標を経験した利用時の品質のいずれかとして解釈できる。
システムを他の環境(ソフトウェアや利用環境など)に移すことができるようになっているか。または移植時の品質は問題ないか。
適応性
異なる又は進化していくハードウェア、ソフトウェア又は他の運用環境若しくは利用環境に、製品又はシステムが適応できる有効性及び効率性の度合い。
注記 1
適応性には、内部容量・能力(例えば、スクリーン領域、表、業務処理量、報告書様式)の拡張性を含む。
注記 2
適応性には、特別の支援要員によって実施されるもの、事務要員、運用操作要員又はエンドユーザによって実施されるものを含む。
システムが他の環境(ソフトウェアや利用環境など)移植時や環境のバージョンアップ、業務処理量の変化などにおいて問題なく動作するか。
設置性
明示された環境において、製品又はシステムをうまく設置及び/又は削除できる有効性及び効率性の度合い。
システムを非機能要求に応じた環境で設置、または削除できるか。
置換性
同じ環境において、製品が同じ目的の別の明示された製品と置き換えることができる度合い。
注記 1
ソフトウェア製品の新しい版の置換性は、機能向上の場合利用者には重要である。
注記 2
置換性は、設置性及び適応性の両方の属性を含むことがある。概念は、その重要さのために独立の副特性として紹介される。
注記 3
置換性は、特定のソフトウェア製品だけしか使えなくなる状態に陥るリスクを軽減する。例えば、標準化されたファイル様式の使用によって、現在使用しているソフトウェア製品を他のソフトウェア製品で置き換えることによってもたらされる。
同じ環境でシステムをバージョンアップすることができるか。または類似の別のシステムに置き換えることができるか。(特殊な仕様になっていないか)
ここから先は
ソフトウェア品質倶楽部
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