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エッセイ集

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現在や過去にある想いを言葉にしました。
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2021年2月の記事一覧

時は平等に訪れる。

 突然ですが、なぞなぞです。 「朝は4本。昼は2本、夜は3本の足を持つ生き物は、なんでしょう?」  このなぞなぞは、聞いたことがある人も多いかと思います。  これはギリシャ神話に出てくる、怪物スフィンクスが出す謎かけです。スフィンクスから出された謎に答えられない者は、スフィンクスに食べられてしまいます。答えたのはオイディプス王。その答えとは「人間」でした。産まれたときは4つ足で歩き、成長していくと2本足で歩く。さらに年齢を重ねると杖をつき3本足で歩く。オイディプス王に答

ゲームを操るのではなく、実際にはゲームに操られていたのである!の巻

 ♪トゥン、トゥ、トゥ、トゥー、トゥー♪  これはゲーム『ドンキーコング』の音楽だ。1983年、任天堂がファミリーコンピュータを発売、爆発的なヒットを記録した。その看板ソフトが当時ゲームセンターで人気のあった『ドンキーコング』だった。  あの頃、ファミコンは日本の子供全員が欲しかったんじゃないのかな? どこの玩具店も売り切れで、まず手に入らなかった。セガさんには悪いが、ファミコンが買えずに妥協して親にセガのゲーム機『SG-1000』を買ってもらった。セガのゲームは少しマニ

心の中に置いておく物

 先日、押し入れを整理していたら子供の習字の道具が出てきた。 「そういえば、もう何十年も習字なんて書いてないな」  子供の頃は習字教室にも通ったこともあったのに。小学校低学年の時だったと思う、初めての習い事。先に兄が通っていたのでそこに後から入った。普通の家の畳の部屋で、おじいちゃんの先生に教わった記憶がある。五級くらいですぐに辞めてしまったのだが。なんとなく家の感じは今も覚えている。  全く関係ないのだが、小学校や中学校の習字の時間では、机が汚れないように家から新聞紙

大切なことは客観的に考えるということ

 大人になってから泣いた事は何度あったのだろうか?   号泣。いま思えば懐かしくもあるが、失恋をして女友達に話を聞いてもらい、その彼女の前で涙が止まらなかったことがある。あの時の涙は透明で清らかだった。  この人の為に生まれてきた。初めてそう思った人だった。それまでは自分勝手な恋だったと思う。  失って暫くは前に進めなかった。それでもまわりに居てくれた人が支えてくれた。    たくさん映画も観たし、たくさん本も読んだ。悲しい物語に涙し、わくわくする冒険話に心を踊らせた。ハラ

特殊詐欺には気をつけろ!〜善意と悪意〜

 仕事中に時間をチェックしようかと思いスマホをひらくと、そこには隣町の警察署からの着信と留守電が入っていた。しかも10分ほど前のこと。 「なんだ……?」  隣町といえば実家がある街だが、不安な思いを抱えたまま留守電を再生してみた。 「……警察生活安全課の……ですが、……さんのお父さん、……さんのことでお電話を致しました。お手数ですが、このメッセージをお聞きになられましたら折り返しお電話を下さい」  予期せず警察官の口から父親の名前が出てきて激しく動揺した。すぐさま電話

父親の全力疾走

 夕暮れの街、駅のロータリーから、帰宅する乗客を大勢乗せた一台のバスがゆっくりとドアを閉めると、次の停留所を目指して発車した。車内に目を移すと、泣きそうな顔でバスの窓から外を見る少年、その窓の外には彼の父親が慌てて走っていた。……全力疾走、陸上の選手でもない限り、なかなか大人の全力疾走は見られない。  五分ほど時間を戻そう。バスの車内、左側の前方の二人掛けのシートに父親と小学生低学年の男の子が坐っている。バスは乗降口を開け出発の時刻を待っていた。 「ちょっと叔母さんちに電

お盆の海には近寄るな!の巻

 深夜の港の防波堤、右足を一歩前に進めたときにバランスを崩し、そのまま深い暗闇へと吸い込まれていった。すぐに水面からドバァンと音が上がる。 「九死に一生を得る」  何十年と生きていると、何度か危険な状況に陥ることがあるものだ。  あれは二十歳前後のこと、友人と二人で夜釣りに出かけ、千葉県の外房までやってきた。釣りが出来そうな場所を探し、車を停めては歩いて様子を見る。ようやく良さそうな港の防波堤を見つけ、そこで釣りをすることにした。車から荷物を下ろすと、コの字になった防波

映画と館名入りのパンフレット!

 ここ最近、松竹の映画をチャンネル登録して「男はつらいよ」のシリーズをずっと観ている。半年ほど前にも全シリーズを観たのだが、また一作目から順番に五十作まで観るつもり。  両親が映画好きだったせいか、幼い頃からたくさんの映画を観てきた。映画館で一番最初に観た映画は何だったのだろう? 「ドラえもん のび太の恐竜」とか「スニーカーブルース」だったかな。洋画は「ブッシュマン」か「レイダース 失われたアーク」かな? 「スターウォーズ ジェダイの復讐」は兄貴と観た記憶がある。まさかダー

キッカケと可能性

 ここ最近、動画を作ってみたり、文章を書いてみたりと新しいことに手を出している。なかでも動画を編集することがとても楽しい。フリーの効果音を拾ってきて動画に入れてみたり、文字を動画に入れてみたり。 「こんな感じにしたい」  ただそれを実行するのは、なかなかに難しい。頭の中にビジョンはあるのだが、それを具現化するスキルとツールが追い付かないのだ。インターネットで調べてその通りにやってみるのだが出来ない。たいていのページは丁寧に画像付きで説明がしてあるのだが、その画面を出すこと

記憶のスイッチ

「この道って、こんなに細かったかな……」  平日の午前中、まわりの景色を気にながら、通りをゆっくりとした速度で車を進める。そこは何十年かぶりに通る道。目で入ってくる情報を頭の中の記憶を探り、照らし合わせる。  ここ最近、母親の具合が悪く休みの度に実家に顔を出す機会が多いのだけれど、その時にふと普段通る道を変えて、子供の頃によく使った道を通ってみる。  たいていの道は車一台が通るのがやっとだった。まわりの建物はすっかりと変わってしまっている。それでも何となくは覚えているも

現状と負けない心

「えっ、どうしよう……。言えない」  それは十数年ぶりに子供と二人で山登りをした時のことだった。開始早々、大きな岩が目の前に広がっていたその山は、山道も若干湿っていて、かなり滑りやすくなっていた。300mも登っていないだろう、急に心臓がバクバクと早く鼓動するし、頭も酸欠のような状態になり、寒気がして顔が真っ白になっているのが鏡を見なくてもわかった。  子供がきょとんとした顔で僕を見る。 ……言えない。来て早々に帰りたいだなんて、絶対に言えない。  別に此処は日本一の山

あと半分とまだ半分

 ここ数日、嫌なことが続いている。身内の付き添いで病院へ幾度となく行く用事もあったし、親類が亡くなったりもした。その他にも仕事でミスをして怒られたりと散々な日々。……ちなみに、左の頬には大人ニキビもできている。しかもかなり大きめときた。  基本的に物や他人には過度の期待はしないようにしている。自分勝手に期待をするから、それが叶わないと悲しくもなり、怒りの感情もわくというものだ。物事もなるべく全体を見るようにして不測の事態にそなえる。  それでも悪いことや嫌なことは訪れる。

クリスマスには国旗が付いた爪楊枝!

「朝晩は、特に寒くなった」  年齢と季節のせいだろう、夜中に何度かトイレに行く回数が増えた。もうじき一年が終わろうとしている。外に出るのに何枚も洋服を重ねなければならない。駅前や表通りにはイルミネーションが点灯され、年末の物悲しさの中でも気持ちを幾分かは明るくさせてくれている。ショッピングモールに入ると、飾り付けられた大きめなクリスマスツリーが入り口に置かれ、それに合わせて心が温まるような軽やかな音楽が耳から胸の奥へと流れてくる。  子供の頃はショッピングモールなんて便利