マガジンのカバー画像

ゴミの城

26
動画~https://youtu.be/YN4iTq7kIF4  父親が他界、実家に残されたのは子供のように振舞う母親と引きこもりの兄、そして大量に残されたゴミの山だった。 登場…
運営しているクリエイター

#ゴミ屋敷

ゴミの城〜026~夏休みの宿題はギリギリまでやらなかった

久しぶりにパソコンを開いた。夏前に両膝を痛めて、あっという間に十一月になってしまった……。夏が終わってしまった。 久しぶりに文章を書いてみる。 現在は右の膝がときどき痛むので、膝は右だけサポーターをしている。「膝は」と書いたのは別のところにもサポーターをしているからだ。 腰が痛い。 少し前に腰をやってしまった。いわゆる「ぎっくり腰」というやつ。仕事中に屈んだ体制から立ち上がろうとしたら腰がパキンとして、……激痛。帰りにドラッグストアに寄って、店内を少しずつ歩き「腰のサ

ゴミの城〜025~父親の命日

これまでのお話 仕事が休みの日に、少しだけゆっくりと過ごしてから家のドアを開けると、太陽が何時間も前から活動をしていて、外に出かけることを躊躇わせる。 先日は父親の命日だった。当日は仕事で都合が悪く、休みの日に実家の近くのスーパーで父親が好きだったポテトチップスなどを買って、太陽の光をサングラスで遮りながら実家へと出かけた。 実家へ着くと入れ違いに兄が買い物へと出かける。父親の遺影の前には何も置かれていなかったので、父の命日など誰も気に留めなかったのだろう。兄に声をかけ

ゴミの城~001~主人を失ったゴミ屋敷

 先日、父が亡くなった。  結婚して実家を出てから三十年近くが経つ、実家には両親と兄が暮らしていた。僕は男だらけの三人兄弟の真ん中。弟も結婚して実家を出ている。その弟から夜中に電話があった。とても暑くて寝苦しい夜だった。 「父さんが亡くなったみたいだよ」  父は今月もたないだろう。と思っていたのでショックは少なかった。それでも心臓がドクンドクンといつもより早く動いていた。すぐに車を走らせ、隣町の市立病院の前で弟と合流して、静まり返り明かりも最小限しか点灯していない深夜の

ゴミの城~002~暗い時間

 これまでのお話  母に対して最初に違和感を感じたのは去年の春のことだった。世界を覆ったコロナウィルス、なるべく僕は人に会わないような生活をしていた。それまで月に一度は顔を出していた実家へも行かなかいようにしていた。  数か月ぶりに実家へ顔を出し、母と買い物に出かけたときのことだった。実家に行くといつも利用するスーパーの屋上の駐車場。そこに車を停めたとき、母がこう呟いた。 「ここに停めるのは初めてね」 「んっ? 何回もここに停めてるじゃん」  何を言っているのだろう

ゴミの城~003~要因

 これまでのお話  ほんの少し前、手を伸ばせば届きそうな距離に過去がある。目をつぶればすぐに戻れそうなのに戻れない。戻ってやり直せればどんなに良いことだろう。  父が嫌がっても病院に入院させれば良かった。頻繁に母親に会いに行けば良かった。そうしていれば、二人は今も元気で暮らしていたのではないか? 両親を色んな所に連れて行ってあげれば良かった。日本には素敵な所がたくさんある。もっとお金を貯めておけば良かった。もっと勉強しておけば良かった。  それでも過去には誰も戻れない。

ゴミの城〜004〜故人の名誉

 これまでのお話  父親が亡くなり数週間が経つが、部屋を埋め尽くすゴミの多さに泣きたくなる。一週間に一度か二度しか行けず、それでもゴミを袋に詰めていくのだが、段々と親父に腹が立ってくる。 「馬鹿なんじゃないのか?」 「……なんだよ、これ」  父親は大工でもなかったのに、金槌が三十本くらいあったし、カンナも二十本以上あった。カセットテープも二百本以上、MDも三百本以上。フィルムカメラなんか四十台くらいあるんじゃないのか?     ここ何十年と何かを捨てた事がないのでは?

ゴミの城~005~庭やベランダのゴミを処分する

 これまでのお話  父親が他界して一か月、呆れるほどのゴミをちょこちょこと片付けているのだが、ゴミが家の外にも及んでいる。庭や駐車場、家と塀の50㎝程の隙間にさえ物が置かれている。と言うよりも「ゴミが詰め込まれている」が正しいのだろう。  基本、家の中はゴミ袋に入る大きさの物が多いが、外となると事情が変わる。厄介な「燃えないゴミ」それも大きな物が多い。プラスチックの大きなタライやスキーの板に壊れた自転車。それに大きな水槽が何個もある。その他にも酒屋でもないのにビールや酒の

ゴミの城~006~恐るべきゴミの王

  これまでのお話  ゴミ屋敷の主人、父親が他界して一か月。一週間に何度か実家へ行って、呆れるほどのゴミを片付けているが、先日、兄に 「ベランダにハクビシンが居る」  と言われ半信半疑だったのだが、いつも通りゴミをまとめて帰ろうとした時に、庭にある父の仕事場だったプレハブ小屋の裏から鳥のような鳴き声がした。そこはゴミだらけで覗くこともできない。実家を後にして歩きながらスマホで「ハクビシン 鳴き声」を検索してみた。  動画はすぐに見つかり、それを再生してみた。……似てい

ゴミの城~007~一難去ってまた一難

これまでのお話  前回からかなり日にちが空いてしまったが、こまめに実家に帰り掃除をしている。前回の続きでいうと、庭とベランダをうろついていたハクビシンは、二階のベランダにまで伸びる葡萄の木を切って、ベランダを片付けたことによって居なくなった。  屋根の上は下から伸びた葡萄の木と発泡スチロールに入った水やら植物やらが沢山。全くどうやって運んだのだろう?   何度も物を下へ運び、なんとかここまでに  とりあえず一階の部屋へ持っていったのだが、庭も物だらけで置く場所がないの

ゴミの城〜008~雨ニモマケズ、風ニモマケズ

これまでのお話  二ヶ月ぶりに実家に行った。仕事を変え、ふいに休みが出来たことで逆にだらけてしまい、家に引きこもるようになってしまった。そうなると実家に行きづらくなりズルズルと月日が経ってしまった。ダラダラと過ごしたせいで体調も悪くなり、精神的にも様々な面において気力を失ってしまった。  これではいけないと、兄にメールをして「お昼ごろに行きます」と伝えたのだが、当日は朝から頭痛に悩まされ翌日に延期してもらうことに 「おかあさん、明後日は医者だよ。ワクチンの三回目を打ちに行

ゴミの城〜009~ゴミ屋敷は家の中より外が大変!

これまでのお話  ここ最近、かなりの頻度で実家に顔を出してゴミを片付けているのだが、掃除していて、つくづく呆れ果てる。家の中でもインスタント麺の袋が綺麗に折りたたまれて何枚も取ってあったり、舟和のくず餅の容器を洗って何枚も取ってあったりと。家に来た封筒なんか中身を捨てて全て取ってあったのではないかな。何年も前の市役所から来た封筒やダイレクトメールの封筒がたくさん。  それらの積み重ねが、全ての部屋に詰め込まれていた。歩くスペースもない程に。掃除をしていてそんな物を見つける

ゴミの城〜010~ゴミ屋敷の成り立ちを考える

これまでのお話  父親が「なぜゴミを集めることになったのか」を考えてみた。なにぶん母親は健在なのだが、少し心が不安定なので母から父親のことを聞くことが出来ず、自分で見たことや兄から聞いたことを元に憶測をしてみた。  ゴミと書いたが、本人からしたらそれはゴミではない。部屋にあるあらゆる物を父に見せ、捨てて良いかと尋ねたが、答えは決まってこうだった。 「それは使うんだよ」  僕から見たらゴミでも父から見たら使う物、使える物なのだ。使う物は捨てない。当たり前のことだ。  元々

ゴミの城〜011~後ろの正面だぁーれ

これまでのお話  ゴミを片付けに実家へ行くと、すぐに兄に留守番を頼まれ、玄関の鍵を掛け、更にチェーンも掛けて庭を掃除していた。たまに手を止めて家の中に入り玄関を確認していたのだが、何度目かに家に入ると玄関の方で声がした。 玄関にいたのは家の前に住んでいらっしゃる、おじさんとおばさんでその横に母親が不安そうに立っていた。二人は一人で外に出てきた母を心配して家へ連れ戻してくれたのだ。その方々はうちの事情も知っているし、家の木を切ってもらったりと何かと良くしてもらっていたのでとて

ゴミの城〜012~逃避と笑顔

これまでのお話 日曜日に実家へ行って家の掃除をしていたのだが、先週に引き続き兄が買い物に行く間、留守番をしていた。前回は庭を掃除していて少し目を離した隙に母親に外に出ていかれてしまったので、今回は玄関のチェーンが外れないように鍵をかけておいてから、一階の部屋を掃除していた。 母親を逃さないように。というと人聞きが悪いが、いまの母は一人で外に出ていってしまうと、帰ってこれないという危惧がある。案の定、五分もしないうちに母親が二階から降りてきた。 「お兄ちゃん、買い物に行っ