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【アセンション】その日、僕が三次元残留を選んだ理由
「そのアセンション握ってもらえる?」
「アイよ!」
「あ、んーと、それはサビ抜きで、いや、ちょっと炙ってもらえる?」
「サビ抜き、炙って、ハイよぉ!」
「はいお待ち、炙りアセンション、サビ抜きぃー!」
「はほ、うんめ」
「お客さん、あんたー、もしかしてお故郷は地球じゃないかい?」
《ギクッ》「どーして?」
「なんたって、アセンションはちかごろあの星の近海じゃとんと採れなくなっちまってねぇ。だから、時折あんたみたいに、あそこからわざわざここまで訪ねてやってくる美食家がいるんでさぁ」
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「(先客がいたんか・・・)そうなんだ。あそこは僕の第二の故郷なんだ。もう何千年住んだことか」
「やっぱりですね。あっしも同じだから直観的にわかるんですよ」
「え? 大将も?」
「日本という地方出でっさ」
「ぼ、僕もそうだから言っちゃうけど、あそこは民族的に見たら正確には地球には属さないよね」
「そーすな。元はと言えば”天孫降臨”で、昴はじめいろんな星々から来た魂たちの住処、っときたもんですからね」
「でも、すっかり奴らに侵略されちゃった」
「え? とうとう日本も・・ですかぁ・・日本は世界の雛形ですから、てことは、地球世界のどの国もアレってことですかね・・やっぱり、あのマインドコントロールとインプラントなんかで眠らされている?」
「そう、連中は相変わらず古典的なやり方でそうしてるけど、このところちょっとそれも綻びが見えてきてますよ」
「ていうと?」
「覚醒者が増えてきてるんです」
「そりゃあ、めでたいことですな。でも、大丈夫ですかい?」
「え? なにが?」
「いやねぇ、覚醒者って、いつの日も理解されないじゃないですか? そればかりか、迫害されたりね」
「そうですね、結局はノアの箱舟じゃないですが、心ある人のみがついてくるしかないんでしょうね。自身のハイヤーセルフと向き合って自身で判断を下せるもののみが分かることだから、逆に言えばそういう方向に向かおうという人がアセンションをけん引しているっていうか、アセンションそのものなのかもしれませんね」
「それを外から眺めてばかりいる人々は、すっかり蚊帳の外ですわ。おかしなことに蚊帳の中にはごく一握りの人しかいないですからね。蚊帳の外では、いつもアイツはなんかおかしなことばかり言ってる、何かの変動が起きるってばかり言って何も起こりゃしないじゃないか😡何を物騒な、人騒がせなって―話になっちまいやすね」
「連中は、アセンション、アセンションって、何年も煽っておいて、結局それは何にも起きないじゃないか、そんなのは単なる妄想か理想主義者のお花畑症候群だ・・ということにしておきたいんですよ」
「まるで、幼いころにおっ母から聞いたイソップの『オオカミ少年』のお噺ですな」
「起きる時は起きる。でも、起きる前にそれは起きるとは思わない。それが分からない。道理が見えなくなっている。まして初めて経験することに、耳を貸す人なんていないんですね。奴らの”昨日と同じような今日があり、今日と同じような明日が来る”という呪文にすっかり引っ掛かってしまって、自分はさてまた寝るとするか、ってね」
「将棋の千日手みたいなもので、出来るだけ先延ばしして勝敗をつけないようにしようと、奴ら必死ですからね」
「大将、今度はアセンションそのまま切って頂戴、シャリは要らないや」
「はいヨ、はいお待ち!」
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「それにしても、このアセンションうま! これを食べたら地球の本マグロトロなんて霞んじゃいますね。これって貴重な品種なんでしょ?」
「いやあ、そんなことありませんでして。この辺じゃゴロゴロ採れますんで見慣れたもんです。ていうか、それを食べたことがない人は一人もいないでしょう」
「うわー! それはミラクルですね。ここは天国ですか?」
「いかにも、天国って言うのならばそうですね」
「手前味噌でなんですが、うちの新鮮なアセンション食べたらほかのどんなものも喉を通らないんでさあ・・皆さんそうおっしゃられるんで。ほら、うまい饅頭の味を知ったらほかの饅頭が食べられなくなるのと一緒ですわ。そんな意味で、アセンションは罪作りですよ。もう元には戻れない。戻りたくもない」
「あたしも時折思い出すんですよ。地球のあのお釈迦さんがおっしゃってましたね。執着を手放すということ。あれは、まんまアセンションに向けての心の準備ですよ。あたしにも妻子がいましてね、当時は思い悩んだもんです。どちらもご多分に漏れず奴らに洗脳されてしまっていて、あたしとの距離は離れていくばかりでした。とても不憫で、妻子を置き去りにしてあたしだけが行くというわけにいかない気がしてたんです」
「そりゃ、僕もまったく一緒ですよ」
「でもね、気づいたんです。それらの煩悶そのものが、三次元という幻想のなかでのものだったということに。五次元では一切の対立も、不調和も、出会いも別れもないんですね。すべてが始めから”在る”し、無くなるものもない。しかも誰でも五次元界に住んでいないものはいない。そこには妻も、かわいい子供たちも、先に逝ってしまった優しかった母親も、みんな一緒に住んでいるんだ。だから、そこに行ってしまえばすべてOK、ノープロブレムだということに」
「大将が今この星にいるってことが、その証明ですね」
「三次元(みんなが仮に”この世”って言っている現実世界)では、すべて一切──例えばくしゃみ一つしたことさえ──が”問題”ですが、五次元世界には一切”問題”がないんですね。そんな三次元にいて五次元世界を眺めるから、みんなちょうど水泳で飛び込みをする前の様に怖気づいちゃうんです、何も失うものなんてないのに。むしろ三次元にいることが全体の欠損ですらあるのに・・もっともそれは幻影ですがね、三次元にいちゃー、そのことに気づかない」
「でも僕は三次元のマトリクス世界に残ろうと思うんです。何も、妻や子供たちと別れたくないからってことじゃあないですよ。あのプレアデス人らもその気になればできるのに、アセンションしてませんね。五次元にいる彼らがそうであるのには理由があるんでしょう。少なくとも、地球的な意味での憐憫とか、愛とかよりも高い何かでしょうね。まあ僕なんかが地球でなにがしかのことが出来るなんて思っちゃいませんし、大したことはコレまでもしてこなかったんですが、しばらくは僕というお荷物を抱えて生きることも意味があるのかなってね。ほとんどダメにさせられてしまった地上の人間たちは、そのダメさを身をもって体験しているものからしか聞く耳を持たないもんです。アセンデッドマスターであれ、異星のダメさ未経験のモノたちには彼らを救うことはできないですからね。そんな意味で僕は自分のダメさに光を当てられます。そして、それをこれから活かせると思うからです」
「あんた、正直すぎるわ。もっともあっしはそういう方、好きですけどね。ははは、なんだか涙止まんなくって、すいません。いやぁ、話が湿っぽくなってはせっかくのアセンションネタのイキが下がっちまいやす。ただこうして日々天国で遊ばせてもらってますと、時折三次元的湿っぽさが妙に懐かしくなっちまっていけねーもんですがね」
「さ、天国にいる楽しみは、また後ほど来る時まで取っておくことにして、大将、あがり頂戴」
「はいヨ! 上がっちゃってよ!!」
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