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『ナボコフ全短篇』を読む日記2022.02.18(30/68篇)
「クリスマス物語」(1928年)「名誉の問題」(1930年)を読む。
「クリスマス物語」は、主人公の作家が批評家に仕向けられクリスマスを題材とした物語を書こうとする話。
「名誉の問題」は、妻を取られたアントン・ペトローヴィチがベルクという敵に酔った勢いで決闘を申し込む話。これはどうやら決闘もののパロディであるらしい。決闘に至るまでの経緯やその結末など、決闘のロマンチシズムが剥ぎ取られて、なんともいえないもの悲しさに包まれている。
太宰にも「女の決闘」という決闘もののパロディがあったことを思い出す。あれはたしか、「女の決闘」という、森鴎外が訳したオイレンベルクという作家の作品がまるごと入っているものだった。
それはそうと、ナボコフの二篇にはゴーリキーやトーマス・マンの『魔の山』など、同時代の作家への言及があって、ナボコフと同時代のことを考えさせられる。
ロシアとアメリカの作家というイメージの強いナボコフだけれど、ここまで読んできた短篇はほとんどがベルリンで書かれたもののようなので、自ずとドイツやベルリンのことが意識される。
マンへの言及とかまさにそうだろうし。マンは読みたい作家であって、僕は地元の図書館にある合計2000ページ近い『ヨセフとその兄弟』をいつ借りるかよく悩んでいる。
それよりもまず、光文社新書の『文学こそ最高の教養である』というインタビューで、訳者の岸美光さんが「エロス三部作」としている、「ヴェネツィアに死す」「だまされた女」「すげかえられた首」を読まなければならない。「ヴェネツィアに死す」は「トニオ・クレーゲル」と一緒に読んだのだけれど、もうほとんど忘れてしまっている。それにしても、三部作というのは魅力的なくくりだ。読みたくなってしまう。
久しぶりに図書館に行った。
『ジョン・ダン詩集』を借りた。廃棄する本で持っていってもいい本があって、佇まいがよかったので神品芳夫さんの『ドイツ 冬の旅』をいただいた。
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手に取った時はわからなかったのだけれど、神品芳夫さんはリルケの研究者で、『リルケ 現代の吟遊詩人』という本を買ったまま手つかずなのを思い出した。