愛知室内オーケストラ 第78回定期演奏会

日時:2023年8月30日(金) 愛知県芸術劇場コンサートホール
会場:18:00
開演:18:45
終演:20:25

・演奏:愛知室内オーケストラ
・指揮:山下一史
・チェンバロ:マハン・エスファニ*
・マリンバ:安江佐和子**
・プログラムノート:小味渕彦之

【曲目】
・ラクリメ、あるいは5つの涙 Op.196(権代敦彦)* ※委嘱初演

・ヴァイオリン協奏曲(A.ハチャトゥリアン)**
 第1楽章「Allegro con fermezza」
 第2楽章「Andante sostenuto」
 第3楽章「Allegro vivace」

—休憩20分—

・交響曲第3番「ライン」(R.シューマン)
 第1楽章「Lebhaft」
 第2楽章「Sehr mäßig」
 第3楽章「Nicht schnell」
 第4楽章「Feierlich」
 第5楽章「Lebhaft」

ACOの公演に足を運ぶの今シーズン初です。平日公演だと休みが取れず足を運べないんですよねorz
往年の名作から、コアな作品、現代曲から委嘱作品まで幅広いレパートリーをお持ちの御楽団。2023年4月から、コンポーザー・イン・レジデンスを設けられ、権代敦彦さんが就任されました。2024年2月末に惜しまれつつ閉館となった、三井住友海上しらかわホールにて、ヴァイオリン協奏曲「永遠と時を結ぶ絃」が世界初演され、今回は2作品目の世界初演作品となります。
権代さんの近年の創作テーマは「有限の生命、有限の音楽」における「死と永遠、無限」との関係。本公演で世界初演された「ラクリメ、あるいは5つの涙」は前作「永遠と時を結ぶ絃」レクイエムの連作として作曲されたそうです。

委嘱作品は、J.ダウランドの歌曲「流れよ、わが涙」の冒頭である下降4音の「流れる涙」のモティーフによって作られています。


ダウランドは、「ラクリメ=涙」をテーマにした編曲集「ラクリメ、あるいは7つの涙」を発表しましたが、権代さんはそれにあやかって「5つの涙」と名付けたそうです。

さて、本作の編成をご覧いただきましょう。

打楽器が左右に配置されています。
冒頭から高音域で静謐な響き。徐々に音が下降していき、左右の打楽器が呼応するかのように響きます。チェンバロはトリルを繰り返していたかなと感じますが、管弦打の音から仄かに響く音色が印象的でした。
途中、音が上行していき、力が増してバスドラムの強烈な音からアンティークシンバルを弓で弾いたり・・それは死を目の前にした生命の足搔きの様を想起しました。
最後は、下降しチェンバロが、しとしとと同音を弾き静かに幕を閉じました。死に向かって歩き続ける光景が浮かびます。
演奏終了後、周りのお客様の拍手で黄泉の世界から現実に引き戻されました。凄まじい世界観を体感でき大満足。

続いて、ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲をマリンバで演奏。ランパルがフルート独奏用に編曲した版もあるそうですが、今回はヴァイオリン独奏をマリンバで演奏されていると思います。
権代さんの作品とは対照的で、ロシア色ムンムンの華やかで華やかなで活気のある作風です。3楽章は圧巻でした。いやぁ、この作品をマリンバで演奏される安江さん、凄いの一言です。

休憩を挟み、メインはシューマンの3番。個人的な意見で申し訳ないですが、シューマンの3番は魅力を感じていない作品でした。音楽は流暢に流れるのにオーケストレーションが重く感じるんですよね。今回の公演は、心地よく鑑賞することが出来、本作の魅力が少し分かったかなぁと感じました。

ベクトルが全く違う3作品のプログラミングだったかなと感じますが、素晴らしい演奏と作品を鑑賞させて頂き、夢のような一時でした。

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