ヤマハ吹奏楽団元団員によるカスタムコンサートⅡ

日時:2024年11月17日(日)
会場:14:30
開演:15:00
終演:16:30

演奏:カスタムフェローズ吹奏楽団
指揮:森田利明
プログラムノート:片山信次

【曲目】
<第一部:林光吹奏楽作品の「再発見」>
・与えよ、さらば 与えられん組曲(K.ヴァイル/林光)
 第3曲「大砲ソング」
 第5曲「カネあっての楽しい暮らし」
 第8曲「思い出タンゴ」
 第9曲「マック・ザ・ナイフのコラール」

・ユーフォニアムと吹奏楽の為の「架空オペラ組曲」(林光)

・プロメテウスの火(林光)
 1. 火をつくるプロメテウス
 2. 神々の勝利の行進
 3a.囚われたプロメテウス
 3b.火を運ぶプロメテウス

—休憩15分—

<第二部:兼田敏編曲による「小品の愉しみ」>
「小編成のバンドのために」
・海(井上武士)
・黄色いリボン(アメリカ民謡)

「中規模編成のバンドのために」
・赤とんぼ(山田耕筰)
・ロンドン橋(イギリス民謡)

「大規模編成のバンドのために」
・五木の子守唄(熊本県民謡)
・口笛吹きと子犬(A.プライヤー)
・A.saxとバンドのためのアニー・ローリー(J.スコット)
・草競馬(S.フォスター)

~アンコール~
???

カスタムフェローズ吹奏楽団はヤマハ吹奏楽団で活躍した団員が、定年や業上・家庭上の事由で退団した団員が吹奏楽の熱が冷めず、活動の継続を望んだ元団員により結成された楽団です。月に1回、森田利明さんの指導で活動されています。
ヤマハ吹奏楽団OBバンドと称しておりましたが、今年10月から心機一転新たな飛躍を目指して、楽団名を「カスタムフェローズ吹奏楽団」としました。

指揮者の森田利明さんは、1984年よりヤマハ吹奏楽団の第2代目常任指揮者に就任されています。
また、アンサンブル・ヴァン・ドリアンのクラリネット奏者として、数多くの現代曲を初演されています。
ピアノ調律師で、「プライヴェート・コンサート」を開催されていた原田力男さんの公演で「森田利明と六人の若い作曲家~クラリネットと現代作品の夕べ(第6回)」、「森田利明クラリネット・リサイタル(第7回)」でも演奏されており、日本の現代音楽に多大なる貢献をされてきました。

今回の目当ては林光さんの吹奏楽作品。楽団の代表であり、プログラムノートを執筆された片山信次様より承認を頂き、プログラムノートを全文公開することが可能となりました。この場を借りて、感謝申し上げます。

まずは、K.ヴァイルの作品から。

 「三文オペラ」はベルトルト・ブレヒトの戯曲で、クルト・ヴァイルが作曲を手掛けた音楽劇である。1928年にベルリンで初演され、翌年ヴァイル自身の手により劇中歌を管楽器中心の室内オーケストラ組曲「小三文曲集」として書き直した。
 本作品は、それとは別の選曲で新しく編曲されたもので、タイトルの「与えよ、さらば与えられん」は、乞食商会の主人ビーチャムの店先に掲げられた聖書のもじり句。
 今回は全9曲のうち、以下の4曲を取り上げる。

プログラムノートより

1986年6月8日に初演されました。
組曲からの編曲ではなく、作曲自身が選曲されたのはプログラムノートより明らかです。抜粋ではあったものの、貴重な情報が知れたのは有難い限りです。ヴァイルの三文オペラ、もっと予習しておけば良かったと後悔しております・・。

ここで、御楽団の編成をご覧頂きましょう。
フルート:3名
オーボエ:2名
ファゴット:2名
クラリネット:10名
サクソフォン:4名(内1名賛助出演)
トランペット:4名
ホルン:3名
トロンボーン:4名
ユーフォニアム:2名
チューバ:1名
パーカッション:5名 計40名

本編曲もそうですが、大編成の吹奏楽作品に見られる、コールアングレ、コントラファゴット、チューブラーベル、タムタム、チェレスタ等の楽器は含まれていません。また、クラリネットが10名(バスクラリネットを含む)というのが特徴でしょうか。この編成で作り上げる響きが自分の中ではいいなと感じた次第です。

続いて、架空オペラ組曲。

 ユーフォニアムのソロをオペラの主役(テノールそれともバリトン)に見立て、『実在しないオペラ』からの組曲として書かれたのがこの曲であり、タイトルもそれに由来する。
 作曲者の林光は、当日のプログラムノートで「クルト・ヴァイルが切りひらいた『クラシックの作曲家にしか書けないポピュラー』という、ジャンルを、森田利明さんの勧めで試すことができてうれしい」と語っている。
 第一部は、葬送行進曲ふうの「アリア」、そして第二部は、主題と変奏となっている。
 なお、本日のソリスト永井豊治は、初演時にもソロを担当した。

プログラムノートより

1987年6月12日に初演されました。
後で紹介する、プロメテウスの火もそうですが、是非出版して頂きたい作品。失礼を承知して書きますが、オペラやバレエ音楽を吹奏楽に編曲して演奏するより、この2作品を演奏して頂けたらと感じております。
独奏のユーフォニアムは、プロの演奏者ではないと技術的に難しいことはなく、アマチュアでも十分に挑戦できる内容かと考えられます。
永井さんの豊穣な音色に恍惚となりました。演奏時間は12~13分ほど。

最後に、プロメテウスの火。

ギリシャ神話を題材とし作曲されたもので、その大筋は次のようなもの。
『1.「火をつくるプロメテウス」』
プロメテウスは幸福な少年時代を送るが、ある年、突然おそった寒気のために、両親を失う。
『2.「神々の勝利の行進」』
プロメテウスは、人々が寒さで死ぬことがないようにと願って、消えず、減らない火を発明するが、その火はまた人間の健康を蝕む性質があることを知り、ふたたび消滅させようとする。
『3a.「囚われたプロメテウス」』
これを知った神々は、火を独占して利益を得ようと企み、プロメテウスを幽閉して、火を奪う。
『3b.「火を運ぶプロメテウス」』
プロメテウスは脱走し、神々から火を奪いかえし、災厄の根を断つため、宇宙の果てへ火を運んで行く。

プログラムノートより

1988年6月14日に初演されました。
初演以来の再演かと思われがちですが、2009年に浜松の積志ウィンドアンサンブルさんが再演されております。その時の公演がこちら
16分ほどの作品で、自分の印象は架空のバレエ組曲といったところでしょうか。前記した、架空オペラ組曲もそうですが、決してライトでポピュラーな音楽にならず、純音楽としての佇まいのある作風と構成でした。

休憩を挟んで、兼田敏さんのYBSシリーズ。

 兼田敏は日本の吹奏楽草創期に、盟友保科洋とともに作・編曲を通じてその発展に大きく貢献した一人である。兼田は東京藝大時代の朋友で当時ヤマハ吹奏楽団指揮者でもあった原田元吉氏の勧めもあり、ヤマハ音楽振興会からの委嘱を受け、吹奏楽普及のための小・中規模編成の編曲に没頭し、60曲もの作品を残した。
 それら作品が生まれたころは、我が国の吹奏楽勃興期で小規模編成のバンドが多く、こうした作品群がその後の吹奏楽発展に大きく寄与したことに疑問の余地はない。
 背景は異なるものの、今日に見る少子化による中・高部活動の規模縮小化と、教員の働き方改革に伴う部活動の地域移行に即し、演奏が容易ではあるものの豊かな音楽性を備えたこれら作品群が、改めて見直されることが期待される。
 今回はオリジナルの小・中規模編成版に加え、保科洋による編成拡大版も取り上げる。

プログラムノートより

 兼田さんのYBSシリーズの一部は、CAFUAさんから出版されていますね。詳細はこちら
小編成、中規模、大規模と編成別に演奏して下さいました。大規模編成は楽団員全員での演奏です。
小編成では・・
・フルート:1名
・クラリネット:3名
・ホルン:2名
・トランペット:2名
・トロンボーン:2名
・チューバ:1名
・打楽器:3名
だったと記憶しています。サクソフォンとユーフォニアムは0名でした。中規模になると、サクソフォンとフルートが各1名増えて、トランペットが3名になり、ユーフォニアムが1名になっていたかなと思います。
海と赤とんぼに関しては、打楽器は降り番になります。個人的に惹かれたのは赤とんぼと口笛吹きと子犬ですかね。
赤とんぼは、最初の旋律(夕焼け小焼けの赤とんぼ~)はトランペットとアルトサクソフォンが各1名で演奏。この響きがとても素敵でした。演奏者の技術もあると思いますが、演奏者が各2名になったら、この響きは出せないのではないかと感じた次第です。小編成だからこそ、出せる響きですね。
口笛吹きと子犬は恥ずかしながら、今回初めて拝聴した作品。打楽器奏者の方がユニークな演奏を聴かせて下さり、楽しかったです。

今の時代だからこそ、このシリーズは復刻して頂きたい楽譜ですが、作曲家の中橋愛生さんが権利上、難しいところがあるとXで言及されています。

YBSシリーズを調べてみたら、興味深い記事も見つけましたので、こちらもご紹介させて頂きます。

この記事を見ると、海は打楽器が編成に入っているようですが、今回の演奏では無かったはず。教科書的なポピュラーな吹奏楽作品は、演奏・楽曲分析・指導とあらゆる方向性で学べるのかなと思います。いつの日か、全曲復刻出来るといいですね。

ヤマハ吹奏楽団の委嘱作品は、未出版の作品となると再演されることが殆どないため、今回の公演は大変貴重な経験をさせて頂きました。
今後、毛利蔵人さんの「Surely You're Joking」や松本日之春さんの「NOVAS」、「クリムソン スカイ」など、森田利明さんとヤマハ吹奏楽団が委嘱された作品が再演されることを願ってやみません。

いつの間にか、楽団のHPがリニューアルされていました。
https://yamahaband-ob.jimdofree.com/
来年は、OB会創立20周年記念演奏会が開催されるようです。こちらも楽しみですね。

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