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ソロサウナtuneのビジネスモデルの考察

ソロサウナtuneに行ってきた感想回。

僕は将来、サウナを経営したいと考えているので、色んなビジネスモデルのサウナに触れていくことは重要だと考えている。

ただ単に「サウナに多く行く」だけではダメ。「いかに意識して見てきたか」の量が大事であり、意識が介在されてないと、単に思い出としてしか残らない。

意識が介在していないと「◯◯のサウナに行ってきた」というファクト以外、蓄積していかない。

それはそれで話のネタとして使えるので素敵だし、サウナを楽しむという目的だけならば最高だ。

ただ、僕はサウナを経営したいと思っているので、それだけでは不十分。だからサウナに行くたびにそこでの気づきを言語化してアウトプットしている。

体験を思い出にしかしてない人と、経験に変える人の違いは脳で編集して引き出しにしまっておくか否か。このNoteも体験を引き出しにしまう作業の一環。

色んなビジネスモデルに触れておきたいのは、100の選択肢から絞られた1と10の選択肢から絞られた1はその精度が異なると考えているから。

もちろんサウナだけでなく、他の分野のビジネスモデルも転用可能と考えている。

「ハンマーを持った人には全てが釘に見える」ので、仕事柄、僕の場合はUXやUIやマーケティング観点となってくる。

これが医者が見れば別の視点や解釈となるし、銀行員が見ても別の視点や解釈となるのであくまで参考の1つとして書いてみる。

前置きが長くなったが、そんなこんなでソロサウナtuneに行ってきた。目的は"ととのう"ことではなく、1人の貸切サウナが「どんなシステムで回っているのか」を自分の目で見ておきたかった。

休日料金は60分4,300円。決して安くはない。だけどインプットのためにコストを支払うのは勉強代。

銀行口座にお金を眠らせていても、日本円に投資しているのと同じでお金の価値は目減りしていく。サウナに行くのはお金を情報に変換しておく貯情活動の一環でもある。

まずはソロサウナtuneの予約システムについて。完全予約制なので事前に予約が必要。

予約をする上では個人情報を入力して会員登録をする必要がある。この個人情報の取得はマーケティング観点では極めて大事なこと。

これからの時代は顧客をファン化していかないと苦しい戦いになる。人口減少かつ人口ピラミッドの比率から、リード候補が減少していき、多くの人に買ってもらうのが難しくなっていくからだ。これは確定している未来。

顧客をファン化するためには、顧客を知っていなければならない。どれくらいの年齢で、どこから来ているのかなどデモグラ情報を得ることでペルソナの精度が高まる。

また、アンケートやプロモーションなどのメール配信(仕掛け)もできるので日常のコミュニケーションを持つことができるのは大きい。もちろんオプトアウトされてしまうとコミュニケーションは取れないので、頻度は塩梅が大事な前提で。

僕もサウナを経営するとすれば、個人情報は取得してデータベース化しておく。最初のフォーム入力は最低限で良い。EFOの考え方で、段階的に少しずつ取得情報を増やしていく。

最近ではメールというよりもLINEの友達登録が主流チャネルになってきており、そこがタッチポイントとなるケースが増えてきている。僕自身もメールはほぼ開封しないが、LINEであれば未読を減らしたいので、とりあえず見てみる。

メールはtoBで、LINEはtoCに有効なので、サウナであればLINEを選びたい。

今後もサウナ文脈ではLINEを活用したリピート(ポイント)施策、ファン化(日常のコミュニケーション、プロモーション)施策はどんどん行われていくだろう。

ここにコミュニティという概念が加わり、会員登録者のみにクローズドで公開される情報も出てくる。会員特典を個人情報の取得促進として使う。

ソロサウナtuneの予約ルールとして「前日の昼の12時までであれば無料キャンセル可能。変更の場合、14日以内であれば1回のみ変更可能」と書いてある。

これも機会損失をできるだけ減らそうとする絶妙なルール設定。事前精算も便利な仕組み。別の見方だと便利が故にコミュニケーションの機会をなくしてしまっているため、機能で売っていくしかない。


神楽坂駅から徒歩5分ほど。駅近でアクセスはしやすい。カフェと併設されており、入り口から左奥にサウナの暖簾が。スタッフの方に予約名を伝えると、アルコールチェック後にサウナ室に案内された。

「え?アルコールチェック?」と思ったが、これは安全対策でめちゃくちゃ重要。酔っ払ってサウナ室に入って寝てしまっても誰も気づいてくれない。施設側としてはインシデントは絶対にあってはならず、その対策は確かに必要だなと納得。

サウナ室に入ると既に良い環境が出来上がっている。開閉されていないのでしっかり熱くなっている。横になれるように木製の枕もある。普通の施設では横になれないのでこれはこれで特別感がある。

もちろんセルフロウリュもできる。アロマはおそらくバーチのオイルで上野の北欧と同じ香り。サウナ室は清潔感があり、クオリティ自体は高い。素晴らしいUIだ。

水風呂はなく、水シャワー。サウナ室を出てすぐ横にある。天井にもノズルがあり、幅広なので身体に一気に当てることができる。ただ普段から水風呂に慣れていると正直やはり物足りない。まぁこれは織り込み済み。

内気浴はサウナ室の目の前のととのい椅子で。エアコンの風があるが、ここは至って普通であった。扇風機を設置して風が直接当たるようにしてくれたら良いのになぁと感じた。またはエアコンの位置を変更して風の流れを設計する。外気浴の条件は木陰×風なのだ。

良いなと思った点を挙げていく。

まず利用中にスマホの充電ができること。iPhone用の充電コードが設置されているので、サウナ中にスマホをフル充電にしておけるのは凄くありがたい。このサービスはどの施設にも取り入れてもらえると嬉しい。

ロッカーにスマホの充電器があり、サウナ後にスマホがフル充電されてたらUXの底上げになる。

また、iPadが設置されており、ここからApple Musicで自分で選曲できる。または自分のスマホをBluetoothに繋げることもできる。

これはパーソナライズの一環であり、自分の世界に浸れる設計。サウナ室内でも流れるので、これは新鮮な感じ。オフラインのサウナというチャネルでもパーソナライズを意識しているのは凄く参考になった。

デフォルトで鳥のさえずりが流れており、なぜかこれは消せないとのこと。なので鳥と音楽が融合する形で聞くことになる。

サウナハットと化粧水、乳液がアメニティであるので手ぶらで行けるのはありがたい。なかなかサウナハットの貸し出しはないので、意識高いなぁと感じた。

飲料水は部屋にはなく、サウナエリアの入り口に給水機があるので、水筒を持っていくと便利。


空間のトンマナが揃っているので、デザイン面は洗練されている印象を受けた。時計一つとってもトンマナを合わせていることが感じられた。シャワーから出た際のマットも珪藻土マットを使っており、ここもトンマナが合っている。また、ヴィヒタがあるとやはり雰囲気が出るので良い。

利用後は予想通りアンケートのメールが送られてきた。利用段階で個人情報を取得しておけると、このように利用者とのコミュニケーションのタッチポイントが作れるので、施設側としてはPDCAのCheckのデータが取りやすい。また施策(仕掛け)にも繋げやすい。

次に改善した方がいいなと思った点を挙げていく。

サウナと併設されているカフェがコンセプトとして連動しておらず、各エリアの個別最適だと感じた。もともとカフェの中にサウナを後から併設した形だとは思うものの、フロア全体での全体最適にはなっていなかった。

サウナがメインではなく、あくまで別のキャッシュポイントとしてサウナが作られたとは思う。だが、サウナ→カフェに上手く送客できればカフェも大きなキャッシュポイントにできるのではないか。

カフェからしてみるとサウナーという属性にもリーチできるし、サウナで美味しく感じられる状態になっているので、顧客満足度を高められるアドバンテージがあるのにもったいない。ここは機会損失だと思う。

貸切なのでもちろん時間厳守。入るタイミングでタイマーが渡される。やはり60分だと時間が足りず、かつ常に時間を気にしておく必要があるので、落ち着くのは難しい。

せめて前後5分の準備時間を考慮して、70分を1枠として60分丸々サウナを楽しめる設計にしてもらいたいと思った。

あとはサウナ室内に団扇を置いておいてもらえると、セルフロウリュ時に自分で仰げてロウリュ効果が高まると感じた。

もし僕が次利用するなら自分のキャンプ用の内輪を持ち込む。貸切×セルフロウリュの場合は団扇はUXを高めるために必須。

また前述のように利用後アンケートメールが送られてくる。個人情報を取得しておく利点だ。所要時間が5分とのことだが特にインセンティブはなく、回答はしていない。

ここら辺はアンケート回答者へのインセンティブ設計は必要だろう。でないと回答率は数%にも満たないレベルと思われる。

例えば利用後1週間は30日先までの予約を優先的に取れるというリピート施策がメールに記載されていたが、回答率を上げるにはこれらをアンケート回答者に適用するなどの工夫が必要だと思う。

目新しくないが、LINEのポイントカードなどと組み合わせても良いかも。もちろんアンケートをとって改善していこうとする姿勢自体は凄く素敵。

このようにソロサウナtuneは普段利用するサウナとは異なるコンセプトなので、そのギャップによる気づきが多く得られた。

ソロサウナの難しさって、1日の利用者数の上限が低いので利用金額が上がる、水風呂が提供できない、都度掃除の工数が発生するというディスアドバンテージも多い点。

価格は1人で60分4,000円、80分5,000円、100分6,000円で休日だと+300円。グループ利用は3名で12,000円、休日だと+300円。

グループ利用ならまだアリかもしれないが、僕の場合、この価格帯では普段使いの選択肢にはならない。もしリピートするとしても最適80分は必要。

ただ引き出しとして、ソロサウナという選択肢も体験した上で持っておくこと自体に意味があると思う。ソロサウナを知った上での意思決定と知らないでの意思決定では精度が異なる。

空港に同じスタイルのサウナが設置されるような話を聞いたこともあるが、時差ボケ解消訴求することでこの価格帯でもニーズはあると思う。

その場合は60分でも良いと思うし、高照度の擬似太陽の照明を設置すると便益が利用者にも理解してもらいやすく集客もできるのではないか。「時差ボケ解消のためのサウナ」は誰にでも分かりやすい。

結論、ソロサウナtuneは「無」に価値を感じるお金に余裕のある層をターゲットとしている施設だなと分かった。テレビがないことが価値になっており、それを価値として感じる層がターゲット。

だから地元のおじちゃんおばちゃんは利用しない。ある意味、オシャレによる排他性でターゲットを絞り込んでいる。おそらく20後半-40代のお金に余裕のある女性が多く利用しているのではないかと思う。

Apple Musicの再生履歴を見ると若い層も結構使っているのではないかと予想されるが、価格帯から30-40代がメインなのかな。

このように1つの施設を訪問するだけでもかなりの気づきが得られるので、金額気にせずこれからも色んな施設を回っていきたい。

▼ソロサウナtuneからの学び
1.予約時に個人情報を取得して顧客情報をDB化
2.音楽によるパーソナライゼーション
3.スマホ充電サービス
4.カフェ併設によるキャッシュポイント設計
5.トンマナ、世界観の設計
6.時間を気にしてると、ととのえない
7.ソロサウナにロウリュ団扇は必須
8.利用後のアンケートのインセンティブ設計
9.「無」に価値を感じる層向けの価格設定
10.水風呂はやっぱり欲しい
11.サウナエリアの個別最適からフロアの全体最適
12.内気浴は風流設計

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