アダムアンドイブの集客について考察してみる
今回は西麻布にあるアダムアンドイブを訪問しての考察回。以前から気になっていたが土地柄あまり来る機会のないところ。思い切って訪問してみた。
タイトル通りだが「お客さんが答え合わせをしたくなる設計は集客力の構成要素なんだなぁ」と思った。そんな話を書いてみる。
本題に入る前に「お金を情報に変換しておく意識」を持つように心がけている。お金を銀行口座に置いておいても、生み出せる価値はほぼゼロ。
だったら余ってるお金を体験に使って情報に変換し、「貯情」しておくことの方が価値が大きいのではないかと考えている。
貯情のメリットは大きく2点あると考える。
1点目は自分を「アイデアが生まれやすい状態」にしておけるということ。
アイデアが生まれないのではなく、そもそも「なぜアイデアが生まれないのか?」と考えてみると、アイデアが生まれやすい状態・環境になっていないのではないかと思えて来た。人間、能力差なんて微差だ。
アイデアは過去のインプットの編集結果なので、質の高い情報がインプットされていれば、良いアイデアが生まれる確率を高めておける。食べたことないものは作れないのと同じ。
単にアイデアが生まれる素材が不足しているだけの可能性もある。なのでお金を情報に変換することでアイデアの素材を増やしておける。
2点目はコミュニケーションのネタとなり、人との繋がりが広がる確率を高められること。
誰かと話してても自分の体験に紐づいた人の話は体温と体重が乗っているので引き込まれる。裏を返せば、体験を紐づいていない情報をいくら雄弁に語っても、聞き手の感情は動かせない。
なのでお金を体験に使って、体験に紐づいた情報を貯めておくことで同じ価値観を持った人と出会えた打席でヒットを打てる確率を高めておける。奥行きのある話ができるし、やはりネットだと拾えない情報がたくさんある。共通言語も得られるので大きい。
貯情するためには、価格はある程度無視してサウナを利用する。やはり無料情報とそれ以外ではインプットの質が異なる。取得コストのかかる情報ほど希少性を持つので価値が高まる。
有料情報だと情報自体の質も高まるし「支出を回収したい」というモチベーションが生まれ、情報感度が高まる。その結果、それまでスルーしていたことをキャッチしやすくなるので気づきが質的にも量的にも増える。
そんなこんなで本題のアダムアンドイブに行ってきたという話。
アダムアンドイブは土地柄3,990円という価格設定。月火は1,000円安くなる。これはサウナでは高価格帯に位置する。
価格だけでなく、振れ幅を大きく持たないと基準が生まれない3,990円のサウナと450円のサウナにも行ってみること。1,000円のサウナしか行ったことない人よりも、振れ幅が大きくプロットしておくことで精度が高まっていくと考える。
さらに建物も外観がめちゃくちゃ怪しいので、心理的ハードルが高い。だが、なぜここに行ってみたくなったかを言語化してみる。
結論は「答え合わせしたくなる」設計がされていることにある。お客さんがコンテンツになっている施設である。
まずはアダムアンドイブの特徴的は前述の通りロケーションと価格帯。西麻布×高価格帯という掛け合わせにより、一般市民には敷居が高くなる。排他性が生まれる。最初から価格に魅力を感じる人を集客対象に含めていない。
となるとそこには、お金よりもプライベート空間に価値を感じる属性のお客さんが自然と集まる。選客されたお客さんが世界観を醸成し、それがブランドに昇華される。これが集客力に繋がっているのでなないか。
ということは選客することで世界観やブランドを醸成できるということ。◯◯なブランドを作りたい→◯◯な人を集める必要がある→◯◯の条件で選客しようという順番も可能だ。
最初からマスに届けようとするとブランド化されない。濃度が高まらないからだ。コミュニティもそうだけど、まずは狭くして濃度を高める。そうしないと箸にも棒にもかからないモノになる。マスに届けるのはブランドを醸成したあとだ。まずは選客が先。
選客はロケーション×価格帯の掛け合わせがメジャーであり、西麻布の3,990円のサウナと茅ヶ崎の780円のサウナでは集まる属性が異なるのは明白だ。
最初からマスを集客対象としてしまうと、良くも悪くも濃度が高まらない。実際、アダムアンドイブはスポーツ選手や芸能人などが利用しているという口コミ。
個別契約ロッカーもあり、そこには有名な方達の名前も見られた。これもある意味観光スポットのようなコンテンツになっている点も面白い。
彼らはお金は余裕のあるリソースなので、価格よりも閉じられた空間に価値を感じる。これらのお客さんを集客しているポイントで、お客さんもコンテンツの一部となっている。
またタトゥーがOKなので、他の施設に行けない"サウナーの受け皿"にもなっている。タトゥーの良し悪しは別にして、日本ではタトゥーにはまだまだ厳しい。
施設側からするとタトゥーOK→施設のイメージが悪くなる→一般のお客さんが離れる→トータルで集客力が落ちる→集客できなくなる、という負のスパイラルに入るのを嫌がり、選客している。
タトゥーをしている1人に大して2人以上のお客さんが離れていってしまう可能性の方が高いのでビジネス観点だと理にかなっていると言える。
アダムアンドイブがタトゥーOKルールを堂々と打ち出していることで、他の施設とは異なる属性のお客さんが集まるので施設の雰囲気が変わる。
このように、アダムアンドイブはどちらかというとサウナの機能で集客しているのではなく、一般のお客さんに対しては「どんな施設なのか、どのようなお客さんが来るのかを答え合わせする設計」で好奇心を刺激して集客していると見ている。
機能だけで言えば、他の施設の方が高い。だが機能ではない別の価値で集客している。
子供やファミリーと来るようなサウナではなく、おそらくリピート9割、新規1割(僕なようなサウナー)のような構成比率なのだろう。
僕のような一般人にしてみれば「どんなお客さんが来るのか」「外観は怪しい建物だがどんな世界が広がっているのか」の興味を刺激される。これが今回僕が訪れた動機だ。
一方でスポーツ選手や芸能人に対しては、高価格帯にすることで敷居を上げることでプライベート空間という価値を提供する。彼らにとってはお金よりも落ち着ける空間の価値が高いからなんら問題ない。
実際のサウナは高温サウナと薬草のミストサウナ。ミストサウナの方はしきじの薬草サウナのような香りですごく好き。
高温サウナはスタンダードなサウナ。壁の装飾が高級感を演出しており、価格への納得感はこういう積み重ねの先にある。テレビもないので静寂な空間が広がっていた。僕の中ではテレビが無いことが価値なので、ここは好きなポイント。
サウナの目の前には水風呂があり、外気浴スペース、吸水機までの導線設計はスコアが高い。水風呂もしっかり冷たい。16度くらいか。
ただ、外気浴スペースは3脚しかないので、ここは改善してもらいたいポイント。アカスリスペースが大きいのでココがキャッシュポイントなんだろう。
僕が訪問したのは祝日の午前9時。空いており、タイミング次第ではサウナが貸切になった。噂通りタトゥーの人やサウナ室内でドリンク飲みながら漫画読んでる人もいた。
サウナパンツ履いたまま水風呂や湯船に入る人もいてフリーダムを感じた。ほとんどのお客さんがサウナパンツを履いていたのだが、僕も隠した方が良かったのかなぁ。ここら辺は何回か通ってみないとその施設のカルチャーが分からない。
サウナをゆっくり堪能したいなら午前、(言い方が失礼だがお客さんをコンテンツとして楽しみたいなら午後という切り分けができるのかな。夜に来てみるとまた違った雰囲気が感じられそうな施設だ。
1Fは休憩室で参鶏湯が3,300円と結構良いお値段。今回は食べなかったがいつかの機会に。サウナーの受け皿であるアダムアンドイブは感じられた。
サウナは施設ごとに機能だけでなくビジネスモデルも変わるので、都度言語化していきたい。