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【SS】薄きれず
俺には何も将来に対して希望がない。
何かが変わって、誰かが助けてくれないことが悪いと思う。
とりたてて趣味もない。ペットも居ない。
そんな我が家に妖怪が現れた。
そいつの名前は「薄きれず」。
そのまんまである。
見た目は髪切りのようだが、両手は日本刀になっている。
突然現れた薄きれずの食事にはほとほと困った。
薄い食べ物を突き刺すことも、斬ることもできないため、
特別にブロック肉や丸一尾の魚を別で料理することになったのだ。
流石にパンケーキは食べられるだろうと思ったが、どうやらこれもまだ薄すぎて切ることができないらしい。
毎日二人で暮らすうちに、なんとなくどれくらいの薄さまでなら切れないのかという基準がわかってきた。
もうこれで死ぬことができる。
刺す、切る、ということができれば、僕を殺すことなんてたやすいはずだ。
その夜、僕は真っ黒な薄きれずに、僕を刺し殺すように頼んだ。
「うん」と声を出さずに頷いた薄きれずは僕のお腹めがけてその刃を突き刺した。
やっと死ねる。
わけのわからない方法だけど、これも一つの自殺だろうか。
「刺さらない…」
え。
「お前、中身が薄っぺらすぎて、刃が通らないんだ…」
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