騙されてはいけない投資信託の本当の運用コスト
今までは「交付目論見書」の運用管理費等で年間の投資信託の維持コストを比較していましたが、2024年4月から信託報酬以外に発生する監査費用なども含めた総経費率を目論見書(以前は運用報告書のみ)にも記述するようにルールが変わりました。
信託報酬の比較
現状、投資信託の運用コストは比較サイトなどでは目論見書に書かれている実質信託報酬等で比較しています。例えば
投資信託のコスト計算は複雑でよくわからないので、私も信託報酬ベースのコストで今までは比較していました。
総経費率の比較
運用報告書をちゃんと見ていないのがいけなかったのですが、今年から総経費率も目論見書に明記されるようになりました。そこでより実質的な運用コストに近づく総経費率で比較してみようと思ったら日経経済新聞が以下のように比較してくれていました。
今までは断トツで「eMAXIS Slim全世界株式」が運用コストが一番安いと思っていたのですが、こうやって総経費率で比べると一番ではなくなってきます。元々、運用コスト的には0.1%以下の話なので誤差の範囲と言えなくもありませんが・・・
1万口あたりの費用明細の比較
ただ、もっと詳しく調べてみると運用報告書にはもう一つの経費表現として「1万口あたりの費用明細」の合計としてのコストも書かれています。
つまりコスト関連として
①信託報酬
②総経費率
③1万口あたりの費用明細
の3種類があり、勝手にイメージとしては「①<②<③」と思っていました。実際に類似内容(前米株式系)のファンドで調査してみましたが、結果は「①<③<②」になりました。
信託投資では信託報酬が断トツに低い「eMAXIS Slim全世界株式」でも調べてみると意外にも③のコストが一番高くなってきました。ファンドの計算方式で②と③は逆転することもあるようなので一番良い方法は①②③の中で一番高い「%」がその投資信託の実質的な運用コストだと考える方法が妥当だと言えそうです。
信託報酬が当てにならないことが良くわかります。ファンドの言い訳としては信託報酬以外は変動するので目論見書には積極的には記述していないのでしょうが、購入者が一番気にする予想運用コスト、或いは、過去の実績に基づくコストを積極的に説明しないファンドの姿勢は好感が持てません。
利回りが良い時は問題ないレベルでしょうが、長期の投資では利回りが悪化してくるときにはこの運用コストが効きてくるかも。
ETFと投資信託のコスト比較
人気のある「バンガードS&P 500 ETF(VOO)」と「eMAXIS Slim米国株式(S&P500) 」で運用コストを比較してみましょう。ETFの経費率は「0.03%」とかなり低いです。
今回はNISA対応で、S&P500の配当金利回りは1.39%で計算します。
バンガードS&P 500 ETF(VOO)
経費率 0.03%
配当金課税(米国) 1.39%*10%=0.139%
実際のコスト 0.03%+1.39%=0.169%
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
総経費率 0.11%
配当金課税(米国) 1.39%*10%=0.139%
実際のコスト 0.11%+0.139%=0.249%
次にNISA対応していない場合で計算してみましょう。投資信託は再投資は米国内で行われるので日本国内での税金はかかりませんが、ETFだと累計課税率が適応されて10%→約28%(米国と日本の2重課税)になります。
バンガードS&P 500 ETF(VOO)
経費率 0.03%
配当金課税(米国+日本)
1.39%*28%=0.3892%
実際のコスト 0.03%+1.39%=0.4192%
ETFの方が実際のコストが多くなってしまいました。勿論、国内だけの金融商品なら、こんなことは起こりません。
米国での課税について
簡単に計算するには米国課税10%、日本課税20%、累計課税率28%を使うことで計算できますが、もっと正確に計算する場合は以下の数値を使います。例えば、累計課税率は以下の式になります。
(100%-10%)*0.20315+10%=28.2835% → 28%
米国系の金融商品で利益を確保する場合は「特定口座」は最悪だと言うことがわかります。