投資信託の騰落率(リターン)と標準偏差(リスク)の関係を正しく理解する
投資信託を始めると専門用語が沢山あるのでなかなか理解できません。特に気になる項目は
①トータルリターン
騰落率と同じですが、評価期間が少しズレることがあるので若干、数値が異なることがあります。
②リスク
騰落率がどのくらい変動するかを表す標準偏差の数値。統計学を理解している人は標準偏差と言われた方が理解しやすいですが、一般的には無理なのでリスクと表現されているようです。
③運用管理コスト
以下のリンクで説明してあります。
今回は「騰落率」「標準偏差」の二つの意味をエクセルを用いて理解していこうと思います。
標準偏差と言う言葉が出てくるのは、騰落率のばらつきは「正規分布」に準ずるということを前提にしていることを意味します。
正規分布とは
規格化された正規分布曲線は下図のようになっています。センターを中心地として左右対称にばらつき、ランダムなばらつきはこんな感じで発生しますよと言う曲線です。
確率密度関数とは、ピーク値「0」を中心に、例えば「-1」の位置にばらついて発生する確率は約0.24になると言うことを表しています。
累積分布関数とは左端から右方向に確率密度関数の面積を計算している関数です。なので右端に来ると1になります。
エクセルの正規分布関数
エクセルの関数を使って表すと
NORM.DIST(x,平均,標準偏差,関数形式)
正規分布の説明では、xは-1、平均は0、規格化された標準偏差は1を設定することになので1として
確率密度関数=NORM.DIST(-1,0,1,FALSE)=0.24
以下の設定でグラフを書かせています。
確率密度関数=NORM.DIST(x,0,1,FALSE)
累積密度関数=NORM.DIST(x,0,1,TRUE)
エクセルの標準偏差と分散
正規分布の確率密度関数のピークが現れるところが「平均」です。上記の正規分布曲線では平均が丁度「0」になっています。
平均をXave、各データをXi、データ個数をnとすると分散は
「Σ {(Xi-Xave)(Xi-Xave)} /n」で計算されます。
標準偏差「σ」は分散の平方根で表されます。エクセルの関数では
分散 =VAR.P(X1,X2,….Xn)
標準偏差=STDEV.P(X1,X2,….Xn)
標準偏差「σ」の意味すること
規格化した正規分布では標準偏差1とすると横軸の目盛りが標準偏差の値と同じになります。つまり、1→σ、2→2σ、・・・、n→nσ
確率密度関数は全データを表しています。そのうちセンターを中心に「±σ」の範囲に含まれるデータは
NORM.DIST(1,0,1,TRUE) - NORM.DIST(-1,0,1,TRUE) = 0.682689492
言い換えると標準偏差内には約68%のデータが存在することを意味します。範囲を倍の2σまで広げると
NORM.DIST(2,0,1,TRUE) - NORM.DIST(-2,0,1,TRUE) = 0.954499736
全データの約95%が±2σの範囲に存在すると言うことになります。
投資信託の正規分布
ここまでは正規分布の意味を説明したので少し理解しずらい説明になりましたが、ここからは実際の数値を使って簡単にイメージできるようにしてみましょう。
前に説明した通り投資信託では「平均」がトータルリターンが、「標準偏差」がリスクに相当します。
eMAXIS Slim全世界のデータ
トータルリターン(1年) +36.73%
リスク(標準偏差、1年) 11.8
このデータを使って何がわかる見てみましょう。
24.93 = 36.73-11.8
48.53 = 36.73+11.8
この結果から過去1年のデータからトータルリターンが24.93%~48.53%内になる確率は68%と、かなりの高確率が統計的には期待できる予想を立てることができます。
曲線のX軸を見るとピークが36.73%辺りに来ています。しかしピーク値が規格化した正規分布関数より少し低くなっています。
この曲線も以下のように標準偏差値で規格化して計算すると
平均=36.73/11=3.1127
標準偏差=11.8/11.8=1
ピーク位置が左に3.1127になってピーク値は0.39894228となり一致します。
標準偏差の実用的確率の意味
実際に投資家が気にするのは低い方の利益率だけなので標準偏差の下側だけ、つまり、24.93%以上になる確率が期待値になります。
1 - NORM.DIST(-1,0,1,TRUE) = 0.841345
68%ではなくて84%が標準偏差から求められる確率になります。凄い確率になりました!
元本保証の確率
投資家としてもう一つ気になるのは最悪、元本割れしないかと言うことですが、トータルリターンが標準偏差より小さい場合はマイナスになり元本割れしてしまいます。
今回の投資信託の例で計算してみましょう。
1 - NORM.DIST(0,36.73,11.8,TRUE)=0.999073115
99.9%の確率でマイナスにはならないことがわかります。
今回の結果からデータ上はこの投資信託を購入すれば統計処理的な観点からは安全な投資信託になると言うことがわかります。
しかし、株価はランダムウォーク的な動きをするため、統計処理的には安全でも100%安全ではないと思いますので実際の購入判断は自己責任でお願いします。