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「その1」心マトリクスの導入

はじめに


 今回は、心マトリクスの導入方法についての、お話をさせていただきます。小学校6学年、それぞれの発達段階に合った導入方法を提案していますので、よければ読んでみてください。

心マトリクス

そもそも心マトリクスって…?

 心マトリクスとは「“良さ”の分解と再構築」であると、提唱者の葛原先生は定義しています。月軸(努力)と太陽軸(優しさ)で自分の現在地を認識し、自らを良い方向へ導くための、実践です。

心マトリクスでできること

 心マトリクスが子どもたちの中に浸透してくると以下のような姿が見られました。
①自分を意識的にコントロールすること
②自分の行動を自分軸・他人軸で判断すること
③良さだけでなく悪さすら必要なものと捉えること(=人間なのだから仕方ない)
④共通言語によるお互いの理解の深まり
良さ・悪さを定義し、解像度を上げていくことで、これらが小学1年生にして見られます。この感覚を子どもたちと共有することができると、生徒指導・生活指導すらもぐっと楽になりました。(3学期の姿)
 ただし、注意したいことは4月の段階では「“教師側が”良いと認識している」ということです。今回は、そんな心マトリクスの“導入と発達段階”、“大切にしたいこと”について、伝えられたらと思います。

導入方法と発達段階

 導入の仕方は、そーちろさん(X:sochiro88)が、ドラえもんのキャラクターを用いたスライドを作ってくれていますので、そちらを参考にされるとよいと思います。
 僕が伝えたいことは、心マトリクスを子どもたちの心に浸透させていくための、発達段階の考慮についてです。ここでは、低・中・高の3つに分けて、お話します。

心マトリクスの導入「前提として」

 導入では、完成した心マトリクスを提示するのではなく「心ってこう動くよね」のように、8つの項目(星・太陽・花・亀・たまご・北風・雷・月)を1つずつ丁寧に提示していくことがよいかと考えています。子どもたちと8つの項目の接地面積を広くして「わかるわかる」「あるある」を引き出せたら、概ね良いスタートかと思います。
 僕は、子どもとその事象との心の距離のことを接地面積と読んでいます。どれだけいい取り組みも、この接地面積が狭ければ、その良さを受け止めることが難しく、生きた実践になりにくいと考えています。ですので、「単純接触効果」ではないですが、使っているうちに浸透していくイメージをもっておきたいです。
 また、あくまでどの段階も、自分の実践による感覚でしかなく、クラスの実態や個人の様子、教師の振る舞いで良くも悪くも適した導入は変わります。なので、子どもの実態をよく見て“子どもたちに何を伝えたいか、何をめざしてほしいのか、めざすことで何が良いのか”をはっきりさせ、導入していただけたらと思います。(キーワード:接地面積)

心マトリクスの導入「低学年」

 低学年は、先生との結びつきが濃い時期(縦のつながり)なため、教師が心マトリクスを使う姿を見せることが良いのではないかと考えます。
例えば「先生は、今〇〇にいるんだよね。」「先生ってさ、よく太陽にいるの」「朝は、亀が多くなりがち…」といった感じです。この時期の子どもたちは、先生が「〇〇行ったよ(旅行先)」というと、「僕もさ!私もさ!」と、伝えたくなる時期ですよね。その姿をうまく活用するということです。きっと、「僕は月!」「私は花かなぁ」と、自分のことを伝えようとする児童がいるはずです。そのタイミングで「自分のことを言えるっていいね。」「君のことがわかると、先生嬉しいなぁ。」のように、フィードバックします。きっと、自分のことを心マトリクスを通して、話せる児童が増えるはずです。自分のことを話せる児童が3・4割を超えたあたりで、「グループでの心マト対話」を取り入れるのも、次の一手としてありかと考えています。
 このように低学年では、教師というフィルターを通すことで、子どもと心マトリクスの接地面積を広げることが大切です。

心マトリクスの導入「中学年」

 中学年は、友だちとの結びつきを求めるようになる時期(横のつながり)であり、人物の相関図についてイメージできる時期なため、お話のキャラクターを用いて心マトリクスを解釈するのが良いのではないかと考えています。
 
 例えば、そーちろさんの実践のように「ドラえもんのキャラクターならどうかな?」や「ワンピースのキャラクターは?」のように、そのキャラクターの人物像(行動や周囲に与える影響)と心マトリクスをつなげて浸透させていくことです。全体での指導はもちろん、個別の指導では“その子の好きなキャラクター”で話せることが大きな強みだと思います。人物が他の人物との関係性により、現在地(心)が動くことの共有ができたら、“家族と自分・友だちと自分・教科と自分”のように、自分を構成する環境と自分の現在地(心)について考えていく素地ができたと考えます。そうなれば、“自分についての考察”がより深くなっていくのではないでしょうか。
 このように中学年では、キャラクターというフィルターを通し、自分と自分を構成する環境を知ることで、子どもと心マトリクスの接地面積を広げることが大切です。 

心マトリクスの導入「高学年」

 高学年は、自分はもちろん、他者への認識が深くなっていく時期(思春期の入り口)であり、自己の認識を怖がり、自分を見つめることへの拒否反応が強い傾向にあると考えています。ですので、③のキャラクターで心マトを解釈する活動よりも身近な人物で解釈することが良いのではないかと考えています。
 例えば、「おうちの人って心マトでいうと、どこのへん?」と、子どもたちに投げかけます。親、兄弟、友だち、先生…と解釈を進めていくうちに「自分は…」と考え始める子を探します。その児童を取り上げ“自分見つめ”を広げると、接地面積も広くなるように思えます。高学年は、映画版のびた・ジャイアンのように“さまざまな自分”についての経験があります。“親といるときの自分・友だちといるときの自分・一人の時の自分”と、他者との関わりの中で、自分が揺れ動き続けていることを認識できるはずです。また、他者だけでなく、物事・調子・時間など、さまざまなものに触れながら“自分”が日々揺れていくことにも気づいていく力がある時期だと思います。
 このように高学年では、さまざまな他者というフィルターを通すことで、子どもたちと心マトとの接地面積を広げることが大切です。

最後に

 今回は、心マトリクスの導入に焦点を当てて、紹介しました。どの実践にも通ずることですが、導入がうまくいったら、その後は放っておいても…とはなりませんよね。心マトリクスは、使えるようになればなるほど、うまみが出てくる実践です。
 次回は、導入期の教師のマインド(在り方・捉え方)について、紹介しようと思います。読んでくださり、ありがとうございました。


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