「その2」心マトリクス 導入期の落とし穴
はじめに
今回は、導入期を終えた後の「落とし穴」と「落とし穴を回避する僕の実践」をお伝えできればと思います。
導入期の落とし穴
導入期は“良さ”の定義のために使う(=落とし穴に注意)
教師が新たな実践を取り入れるとき、「これができるようになったら、良いクラスになる。子供が成長する。」といった思いではないでしょうか。これは、心マトリクスも同じで、教師側は「心マトリクスはよいもの・すばらしいもの」といった思いを持ち「これがうまく作用すれば、学級が安定する…。」「心の調整を取り入れて自由進度学習を成功させよう」などの目的をもって取り入れると思います。
しかし、これらは“教師の願い”であり“子どもの願い・やりたいこと”ではありません。ここに落とし穴があります。いかに商品がよいものであり、営業側が良いものだと感じていても、買い手にそれが伝わらなければ、購入にまでは進めませんよね。
ここでは、導入を行ったあとの流れを簡単にお伝えします。あくまで一例です。
初期は子どもの“良さ”を心マトリクスに落とし込む
まずは“接地面積・単純接触効果”を意識します。「心マトっていいな」「良さって月と太陽に分かれるのか」ぐらいで良いと思います。
子どもの良さを“月(自分軸)・太陽(他人軸)”でフィードバックし、具体の言葉・行動として心マトリクスに書き込むことで、「心マトを使えば、気持ちいいな。自分もみんなも助かるな。」という感覚をもってもらいたいと思っています。
北風・たまご・雷・花畑・亀は、子どもの自己認知を待つ
良さの解像度を上げていく中で、停滞?悪さ?(あまり好きではない言葉ですが)を認知する子どもが出てきます。まずは、現在地をキャッチできたことを存分に認めます。その上で「ここからどうしたい?」や「そこにいるんやな、なんでなん?」と、問うことが多いです。
これら一連の流れを全体に広げ、自分の心を認める、感情を発散することで、良さに向かおうとする強さを共有していきたいと思っています。低学年では、停滞したときには“お茶を飲む・トイレに行く・場所を変える・学ぶ内容を変える”といった手段を取る子が多かったです。
現在地を知ることで、良さに向かえることを共有する
最初は振り返りに「お茶を飲んじゃったからマイナス」「集中力がなくて、トイレに行ったからダメだった」とありました。いつしか「お茶を飲んで気分転換!(プラス)」「疲れたから漢字プリントしてから、算数に戻った!(プラス)」「トイレを我慢していたら、焦るからトイレに行った(プラス)」と、自ら調整する姿を見ることができました。このように“停滞”をコントロールする事こそが“良さ”に繋がると、子どもたちと共有していくことが大切だと思います。
これらの循環に気づき、自分の現在地(心)を捉えることができた時、正しい一歩を踏み出せます。その動きを教師が見取り、さらに全体に広げていくことで、自己理解・自己調整ができる学級に育っていくのではないかと思っています。
最後に
心マトリクスというのは、教師目線でいえば「教師としての在り方」を再認識させてくれるものだと思っています。何をされたら嬉しいか、何をされたら嫌か、子ども同士だけでなく、子どもと大人の関係にも、それは当たり前にあります。この感覚を、常に思い返すことができる実践こそ、心マトリクスです。
読んでいただき、ありがとうございました。