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松尾千鶴の「本音」の話

松尾千鶴は『アイドルマスターシンデレラガールズ』(以下デレマス)に登場するアイドルの一人である。

勉強熱心で真面目な性格だが、内心ではアイドルのような可愛い存在に憧れている。隠している本音をうっかり漏らしてしまうことが多く、そのたびに「……ハッ」と我に返っては慌てたり照れたりする。自己肯定感が低く、なかなか自分の本心に素直になれずにいたが、アイドルの仕事や様々な出会いを通して少しずつ変わっていく。

この記事は私の思う松尾千鶴の魅力についての解説、いわゆるダイマである。だが、デレマスには松尾千鶴も含めて実に190人以上のアイドルが登場するのだ。その中で他の誰でもなく、松尾千鶴という一人に興味を持ってもらうためには、どうすればいいだろう。ありふれた売り文句ではない、190人の中で彼女だけが持つ、彼女の本質的な魅力を、あなたに伝えなければならない。

では、松尾千鶴の唯一無二の魅力とは何か。

「かわいいアイドル」は大勢いる。「太眉アイドル」も神谷奈緒を始め結構いる。他の誰とも被らない一言で彼女を表すとすれば、私はこう言うだろう……

松尾千鶴は「本音のアイドル」であると。

ガラスの靴は12時に消えた

松尾千鶴がデレマス随一の「本音ダダ漏れアイドル」であることは論を俟たない。初登場時のアイドルコメントからして、こんな調子である。

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「私がアイドル? 冗談はやめてください。芸能界なんて、向いてないです。……あ、アイドル? 私が? アイドル? うそうそスカウト? 私でも可愛くなれる!? ハッ……いい大人がからかうの、やめてもらえますか?」

プロデューサーからのスカウトに対して拒絶する姿勢を示しながらも、内心ではアイドルに興味津々であることを全く隠せていない。素直でない性格のアイドルなら他にもいるが、「心の中の思いや考えがそっくりそのまま口に出る」というのは松尾千鶴にしかない個性的な特徴だ。

このアイドルコメントだけでもある程度読み取れるが、基本的に松尾千鶴の「本音」とはすなわち「可愛くなりたい」という願望である。そして(初期の)松尾千鶴はこの願望を頑なに隠そうとする。

なぜ松尾千鶴は、可愛いものへの憧れを隠そうとするのか。その理由は彼女の幼少期の経験にある。その詳細はモバマスのシンデレラヒストリーで語られている。

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12際の頃、夏祭りに着ていく浴衣を買いに来ていた松尾千鶴は、偶然クラスメイトの男子と鉢合わせ、浴衣を着ることを揶揄われる。この出来事以降、松尾千鶴は「かわいくなりたい」という憧れを心の奥に封印してしまう。

12歳という年齢には、もしかすると意味があるのではないかと私は妄想している。12といえばシンデレラの魔法が解ける時刻だ。松尾千鶴が浴衣というドレスを諦めたその瞬間が、つまり彼女にとっての12時だったのだ。

12時過ぎの魔法の呪文

時は流れて、3年後。15歳の松尾千鶴はプロデューサーと出会う。松尾千鶴がスカウトを受けた時の様子は、デレステのメモリアルコミュ第1話で描かれている。

放課後、遊びの誘いを「予習があるから」と断ってしまった松尾千鶴。「行きたくなかったわけじゃないけど」と本音を独りごちる彼女に「本音は?」と声をかける者がある。そう、プロデューサーである。

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突然のスカウトに、松尾千鶴は訝しげな態度を見せる。「本当に私をアイドルにしたいんですか」と問う彼女に、プロデューサーは「君の本音を聞かせて」と返す。熱心な説得に押された松尾千鶴は、最終的にはスカウトに応じ、アイドルの世界へ身を投じる。

考えてみれば少し妙な口説き文句である。初対面の松尾千鶴が会話の節々で漏らす本音はプロデューサーにも聞こえていたはずだ。彼女の本音が聞こえていながら、それでもプロデューサーは敢えて「君の本音を聞かせて」と告げたのだ。

プロデューサーは松尾千鶴の本音を聞きたいと言った。しかしその本音とは、閉ざされた心から漏れ出た本音ではない。彼女がもう一度自身の中の憧れに向き合い、彼女自身の意志で唱える「本音」こそ、彼女がもう一度ガラスの靴を履くための呪文なのだから。

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そんなプロデューサーの請願に対応するように、初めてのステージ衣装を身にまとった松尾千鶴は「聞き逃さないで、私の本音」と請願する。こうして「本音」は、アイドルとプロデューサーの間を結ぶ一種の「約束」となる。

あなたが松尾千鶴のプロデュースを始めたなら、折に触れてこの約束を思い出すことになるだろう。

例えば、満員の観客を前にした晴れ舞台の上で。

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例えば、瀟洒な雑貨店のショーウィンドウ越しに。

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例えば、第1回ボイスアイドルオーディションの投票演出で。

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更にプロデュースを続けていけば、彼女が意を決して自ら口にした、本当の意味での「本音」を聞くこともできるだろう。それがどんなものなのかは、今ここには書かない。是非あなた自身で見つけてほしい。

そして、もし彼女のことを気に入ってくれたのなら、これからも応援を続けてほしい。

彼女が1人のアイドルとして、1人の少女として成長した先、きらめくライブステージの上から発される、彼女の本音を「聴く」ために。彼女と交わした約束を果たすために。

まあ、つまり、あれだ。

第2回ボイスアイドルオーディション、松尾千鶴に投票よろしくお願いします。

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