田んぼに水を流すように、豊かさの原点に資本を流す。
39歳になりました。
最近、パンサー尾形さんに似ていると言われることが多く、その度に「サンキュー」と返しすぎているので、39という数字に既に愛着が湧いている今日この頃です。
振り返ると30代は予想とだいぶ違いました。大きく体調を壊して動けない時もあれば、毎年新しいチャレンジの機会を頂いてヒリヒリすることも多くありました。
20代最後はomusubiを始めた年でした。
「30代は好きなことを仕事にして今より楽をできそう」
と思っていた自分にドロップキックをかまそうと思っています。(そもそもドロップキックができないけど)
この10年はありがたみとドキドキが混在し、とにかくサバイブしたというのが正直な感想です。純粋に楽しかったかというと嘘になりそうですが、その分、充実感を感じることはたくさんありました。
30代最後の年を迎えるにあたり、自分がこの先10年くらいかけてやっていくことがなんとなく見えてきた感じがするので文章にしてみました。
田んぼで一番大事なのは水を入れること
苗を見ていると、小さくてひょろひょろ〜としているものと、芯がしっかりしててよく育ちそうなものがあります。田植えをする時は、なるべく丈夫そうな苗から植えていきますが、どんなに強い苗でも水が全く入らないと枯れてしまいます。一方で、水がちゃんと入り、陽が当たれば、ひょろひょろしていた苗でもちゃんと育ちます。
そう、田んぼで一番大事なのは水なのです。
ありがたいことに、僕たちの田んぼには水路が引かれています。ゴミを取ったり周りの草を刈って水が流れやすくなるようメンテナンスをすると、秋には当初の苗の良し悪しは気にならず、全ての稲に穂が実ってくれます。
人間ができることは苗が育ちやすい環境づくりしかないなとつくづく感じます。
豊かさをつくる人に、資本という水を流す
アーティスト、社会起業家、クリエイター、個人店の店主さん、大工さん、一次産業に従事されているみなさんなど。
自分でリスクを取り、経済価値+αを生み出している人は、水が少ない田んぼでも育つ、めちゃくちゃ強い苗のように見えます。
アートやクリエイティビティが新しい発想を生み、個性的なお店の集積が日常の豊かさを生み、その環境をものづくりする人が整え、全てのベースを農林水産業のみなさんが支えている。暮らしの構造について僕はこう考えています。
だけど今のお金の流れを見ていると、上流のお仕事ばかりにお金が流れ、ベースをつくる仕事に近い人ほど十分に受け取れていないように感じています。
それは貯水湖にどんどん水が溜まり、田んぼに水が来ていない不自然な状態に近いです。だから必要なところに資本が流れるように変えたいと思っています。
資本の再分配をするために不動産を使う
資本家とアイデアマンをコーディネートし「場」の仲介をする。それにより豊かさがリアルに表出される環境をつくる。アイデアを実現できる余白として空き家を活用する。これが、田んぼを耕すように、まちを耕すのが僕らの不動産業のやり方です。
次のチャレンジは、この方法を不動産業の「普通」にすることです。
え、それなら自分が超資本家になって場を提供すればいいじゃんという発想もあると思いますが、残念ながらその体力は今の僕らにはありません。(頑張れ自分たちですが)
そして仮に超資本家になっても構造が変わらない限り、それは局所的な投資効果になってしまいます。だからこそ構造をなんとか変えられないかと考えています。
はい、そうです。偉そうですし、めちゃくちゃ難しそうです。ドラクエだったら全員レベル99にしないとラスボスを倒せない難易度かもしれません。一見すると無理ゲーなチャレンジかもしれませんが、構造が変わる兆しもあります。
僕らも関わっているBONUS TRACKの生みの親、小田急電鉄さんがパイオニアとなり支援型のまちづくり開発という概念が生まれました。(小田急さんの凄さは別途熱弁したい。)
これを機にデベロッパー各社がスモールだけど個性的な事業者や、社会を変えていく起業家を支援するプロジェクトを推進しています。
国や行政もまちづくり(エリアマネジメント)を民間に委託できる制度をつくり、公共空間の使い方や、支援体制を新しくつくろうとしています。
で、これは地味にとってもすごいことです。不動産という場をつかった未来への投資と、バックアップ体制が徐々に整っているではないですか!
白状すると20代の自分は大きいものをナナメに見ていました。今は大きな組織の中で奮闘し、構造を変えるべく切り込んでいる特攻隊長がいることも分かってきました。彼らにはリスペクトしかありません。
だからこそ一緒に構造を変えていけるチャンスがあると信じています。
40代は好きで始めたことが、使命感に変わるお年頃
構造を変えるために、直近3年は3つのことにチャレンジしていきます。
支援型開発の施設を増やし、まちづくり開発のスタンダードにしていくこと
運営の担い手である企業(資本家とアイデアマンをコーディネートする企業)に体力をつけるよう大企業とソーシャルベンチャーが共創するかたちをつくること
担い手となる企業を増やすことと、エリアマネジメントが日常に反映されるレベルでの事例をつくること
いくつかは準備中ですので、うまくかたちになったらお知らせさせてください。
とにかくまずは自分たちでやってみる。試行錯誤した内容を同じような境遇の方たちにシェアしていく。コーディネート側、支える側の担い手が増えることが次のステップ。これを40代前半にかけてやっていきます。
、、、、、、なんか大人になった感じがする笑
omusubi不動産は僕が好き勝手に始めた超自分本位なプロジェクトです。
小さな範囲で自分たちが愉しくできたらいいなと考えていました。もしかしたらもっと小さなままやっていた方が楽だったかもしれません。でもそれはomusubiの私物化だったなと思います。
この9年で関わってくれるお客さんも増え、松戸以外の地域からも声をかけて頂ける機会が増えました。何より一緒にチャレンジしてくれるスタッフが加わりました。omusubiはすっかりみんなのものになっています。
わがままに始めたことだったけど、いつの間にか生まれてきた使命感。このジレンマを乗りこなす人間力が次のステージで必要になりそうです。ぐ。
「田んぼに水を流すように、豊かさの原点に資本を流す。」
これはみんなのためのようで、自分たちのためでもあります。続けるために。
水路の工事と同じで切り替えるまではパワーがいりますが、すでにちょろちょろ水の流れは変わっているので、もう少し切り込めれば後は流れが後押ししてくれるはず。そう信じて、環境づくりを進めていく所存です。
僕らのことを信じたり、頼ったり、チャンスをくださるみなさんには本当に感謝しかないです。見守って頂けると幸いです。
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