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くるるが鳴るとき

クルルルルル…いつのまにかおばあちゃんの家の庭に迷い込んだ仔猫は、ミルクをもらって安心したのか、小さなからだいっぱいに喉を鳴らした。だから、
ついた名前は「くるる」。おばあちゃんは、くるちゃんと呼んで可愛がった。膝に乗せあごを撫でてやると、猫が鳴る。クルルル…。

幼い私はふざけて聞く。「ねぇくるちゃん、何が来るの?」するとおばあちゃんは「この子はあったかい気持ちを連れて来るんだよ」と。たしかに、あのクルルル…を聴いていると胸の辺りがじんわりあたたかくなる。それはとても不思議で、まるで魔法みたいだった。

ああ、あの時わたしは、ただ在る命からもたらされる幸せを聴いていたのだ。ずっと昔の、あたたかな記憶。

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