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38年前のヨーロッパ1ケ月の貧乏旅行記(1)

大学卒業前に、はじめて1ケ月間、貧乏ひとり旅をした。
懐かしい・・。グーグルマップも、インターネットもない時代。
「地球の歩き方」というガイドブックを手に。

バイトで貯めた少ない予算。自分にとってははじめての海外。
両親からは絶対にいくなと・・・。

実家の、当時の手記が出てきた。
手記を捨てる前に、22歳の自分がどんなのだったか
思い出してみる。どんな思いでひとり旅に?
(こんなの書いても、だれも読まないかも(笑)まあいっか!)

「出発 1983年2月17日(木)19:30 英国航空 → アンカレッジ経由
   ロンドン ホテルKENNEDY HOTEL
   
帰国 同年 3月17日(水)パリ発11:30 → ロンドン乗り換え →
   東京着14:45 成田18:00 → 名古屋18:55」

決まっているのは、初日のロンドンまでの航空チケット・ホテルと、
そして、30日後に集合するパリのホテルと航空チケット。


ロンドンからパリまでの間(約1ケ月)は、完全なフリー。
宿泊するホテルは、現地で決める。予算はたった20万円


2月16日(水)<前日>京都から実家に帰る近鉄特急の中で
あわただしい出発準備だった。
14日までバイトの毎日が終わった後、今日まで準備をしてきた。
いつも試験を受ける前日のように、直前までゴタゴタ。
彼女に京都駅まで見送う。おかげで出発の準備ができた。
感謝している。ありがとう。

しかし、最後の別れになるかも。なんとなく。
ヨーロッパで死ぬような気がする。靴ひもが昨日きれた。

ユーレイルパス(欧州の鉄道乗り放題のパス)が前日に揃ったが、
航空券はまだ手にしていない。
これは、「行くな」という知らせだろうか。

今日の特急券の座席は、4号車29番。
”死に行く”
まだ死にたくない。
両親に迷惑しかかけていない。
まだ恩返しをしていない。”俺は絶対に生きて日本の土を踏むのだ”

この手帳は、旅行中に観たこと考えたことを正直に書き綴ろうとおもう。
どんなことも、
「今の22歳の俺が精いっぱい考えたことだから」
しかし、お金が少ないのは不安だ。とても不安だ。

2月17日(木)<出発 1日目>
あわただしい。四日市の西武航空営業所まで行き本日のチケットをもらう。
フィルム(写真)を止めるゴムバンドを作り収納。
名古屋駅で大学の後輩と会って、最後のラーメン。
名鉄バスで名古屋(小牧)空港へ。

搭乗手続き開始。初めての手続き。とても緊張する。
ハサミ、カメラ、電卓 全てX線チェックでひっかかる。

名古屋発 全日空376便(16:00発)
こんな機体がよく空中に舞い上がるものだ。最初のフライトだ。
機体の加速中は、身体がずっしりと背もたれシートに押し付けられる。
どんどんと速度が増加する。すると、一気に機首を持ち上げたかと思うと
急速に高度を上げていく。外は雨だ。

途中、気流が悪く、まるで新幹線+ジェットコースターの揺れを体験した。
成田は雪だそうだ。全然、分からない。

全く理解できない外国語のアナウンスを聞いて食べる機内食。
これから不安が高まる。緊張。

成田空港着。不二家にてスパゲティを食べる。自宅のおやじに電話。
成田空港 BA006便 
搭乗手続き開始。少し遅れて離陸(19:30)Seat No59C
 アンカレッジ着予定アナウンス(現地時間17日 AM9:00)
機内食2回目、美味しくない。消灯(24:00)

この便の乗客は、ほとんど消灯して眠りにつこうとしている中で
ひとりペンを走らせている。日本を離れて海外に向かっている気が全くしない。

飛行機はたいへん良い乗り物ではあるが、人間の移動速度の限界を超えているように思う。アンカレッジに到着すると、前日の朝にあるとは、どうしても考えられない。
むかしに比べて外国旅行は楽になったが、感慨深さが減った気がする。
俺も今はまるで新幹線の中にいるような快適さでヨーロッパに向かっている。おやすみ。

 2時間ほど眠ったであろうか。少し暑くて眠れなかった。
日付変更線を通過すると、前日にもどった。1日得した気分。

日本時間AM3:30.日本ではまだ夜中であるのに、北極圏では太陽が水平線から出そうとしている。日本出発から6時間。

窓から見える太陽は水平線から低くよこたわり、
山々の雪面を照らしている。天気は快晴。日本晴れというところかな。
眼下には北極海の海水が太陽の光をいっぱい受けて輝いている。
北極海の氷と雪には感動。自然の偉大さ。
そして人間の無力さ、ちっぽけなこと。

この雪原、氷原のなかに投げ出されたら、だれも生きていけない。
しかし、まるで写真か、映画でも観ている気がする。
初めてみる風景なのに、実は以前にどこかでみているような。

アンカレッジはアラスカだ。これが見たかったアラスカの雪原だ。
よく見ておけ! また今後見ることができたら、良いな。

外気温は-15℃。全然実感がない。機内にいると、まったく日本と変化がない。

アンカレッジ着(4:15 現地17日 9:15)見物1時間、CoCaCora($1.75)、土産(17.25)

アンカレッジ発(5:25) 
Take Off  機体の窓から外をながめると、ツンドラの林がひろがり、その枝に雪が巻き付いている。エンジン音が上昇すると、同時に、例の加速感が蘇ってくる。
天気が良く、快適な日。どんどんと速度を増して、林が流れるようになり、自動車やビルが小さくなり、街全体が縮尺地図のようになってしまうのに、数分もかからない。

次に、北極の雪と氷、海の世界に入っていく。雲ひとつない。
天気 晴れ。2万9千フィート。アンカレッジ、グリーンランド、アイルランド、ロンドンへ。

6:15 機内食(2回目)
  パン、サラダ、チーズ、ソーセージ、鶏肉のまずいやつ、コーヒー
7:20 映画「キャノンボール」睡眠2時間
 機内で観る映画は、案外たのしかった。日本語の字幕がでるあたり、日本人の進出が良く分かる。
こんな昼も夜も分からない狭い空間に、閉じ込められてじっと座っていると
ストレスがたまってくる。早くロンドンの地を踏みしめてみたい。しかし、英語が通じるかとうか・・。
12:30 機内食(3回目)ベーコン・卵焼き・ソーセージ・パン・オレンジジュース・コーヒー
 機内食3回食べた。総評してみると、美味しくない=くちに会わない。味付けがSalt Pepper だけなので慣れない。まあ、その内に慣れると思う。
 スコットランド上空3000フィート


38年経って60歳になった今、22歳の自分にむかって、なんて声を掛けるかな・・・。

はじめての海外ひとり旅は不安だったよな。しかも、1ケ月も。
でも、決断したお前は、なかなかの奴だ。不安だったけど、行動したことに価値があるよ。自信になったろ?

そして、こんなにノートにメモしていたなんて。俺もビックリしたよ(笑)
汚い字で書いてるから、分かりにくいんだ。もう少し、読みやすい字を書けよな・・。





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