店内作業

TPROOMの空間に込めた想い

ちょうど一年前の今頃。遠野醸造TAPROOMは工事の最終予算打ち合わせをしている頃でした。オープン日を5月3日に決めたのもちょうどこの頃です。

・オープンに間に合わせるためにはどうしたらよいか
・予算内に収めるためにはどうしたらよいか

そんなことを我々とともに動き、考えてくれたのがインテリアデザイナーの 増田さんでした。

私達が増田さんに設計を依頼した際、お願いしたポイントが3つあります。

・元々の建物の雰囲気を活かした造りにしたい
・自分たちでできることは、自分たちでやる
・ブルワリーを作る過程を地域の皆さんと有し、愛される場所に育てていきたい

そういった我々の抽象的なイメージを、具体的な空間として設計してくださいました。最初のパースが上がってきたとき、「イメージしていたのはこれだ!!」とものすごく興奮したのを覚えています。

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1.建物の雰囲気を活かした店舗づくり

元々この場所は地域に愛された酒屋さんでした。さらにオーナーのお祖父様は、近くにあった金千鳥酒造の杜氏の頭をされていました。長くお酒に関わるご商売をされていた場所で、私たちはビール造りをする。ある種運命的な出合いでした。酒屋さんの歴史を感じながら、新たなストーリーをこの場所から生み出したい。そんな想いで、酒屋さんの作りを活かした店舗づくりを進めていきました。

でこぼこの床は飲食店としてとても使いづらいです。でもこの表情は新品では絶対に出せません。不思議な安心感を与えてくれます。

客席の照明は、酒屋さんのものを再利用。昔はショーウインドウの照明として、今は客席の照明として、新たな歴史を見守ってくれています。

こちらはおそらく酒屋さんの電話台として使われていたもの。古びたバインダーには、"ビール2ケース"という文字が。当時の光景が目に浮かんできます。今は遠野醸造看板犬の犬小屋に笑。

2.自分たちでできることは自分たちでやる

ブルワリー造りはお金がかかります。もちろん私たちも潤沢な資金など、どこにもありませんでした。だったら自分たちでできることは、自分たちでやろう!ということで、みんなでDIYをしながら店舗づくりを進めていきました。

プレハブ冷蔵庫も自分たちで組み立てる。8時間かかったけど苦笑、とても楽しい経験をすることができました。

オープン直前。夜な夜なペンキを塗り続けたのも良い思い出です。この作業が最も大変でしたが、おかげで味のある?風合いに仕上がりました。

もちろん、私たちにできないことはプロにお願いしました。TAPROOMの象徴でもある、へリーンボーン組の木材は職人さんが一つ一つ手作業で組み立ててくれたもの。数ミリ単位で隙間を調整し、美しく仕上げるその仕事ぶりに、プロとしてのプライドを感じました。

3. ブルワリーを作る過程を地域の皆さんと有し、愛される場所に育てていきたい

最後に最も意識したことが、"ブルワリーを作る過程"を共有すること。より多くの人にブルワリー作りに関わってもらい、愛される場所に育ってほしいという想いで、ブルワリーの改装作業を基本オープンにしていました。

こちらは醸造所の床塗り。凍える寒さとシンナーの匂いに包まれる中みんなで一生懸命塗りました。

設備の搬入もみんなで力を合わせて。1つ200kg以上あるタンクを、大人6-7人で運びました。醸造タンクを運ぶ経験なんて、一生に一度あるかないかですよね笑。皆さんとても楽しそうでした。

TAPROOMのスツールは、ワークショップでDIY。木材の提供、加工は花巻の小友木材さんにお願いしました。

スツールの裏には製作者のサインが刻まれています。皆さんが作ったスツールは、今もTAPROOMで活躍しています。

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たくさんの想いが詰まった遠野醸造TAPROOMは、2018年5月3日無事オープンを迎えることができました。

お陰様でもうすぐオープンから1年を迎えます。嬉しいこと、辛いこと、思いもよらないハプニング、出会いと別れ。地域に根ざした"コミュニティーブルワリー"として、少しずつではありますが新たな歴史を刻みつつあります。そんなTAPROOMの空間は、我々にとってかけがえのない財産です。

ヘリンボーン組の壁材、酒屋さんの照明や床の活用、あえて残した凸凹な梁の木材、みんなで作ったスツール、夜な夜な塗った分厚い塗装。

一つ一つが完璧かと言われると決してそんなことはありません。しかし不揃いで未完成なパーツ同士が、それぞれを補完しあい、空間として絶妙なカッコ良さと心地よさを醸し出していると思っています。

酒屋さんの歴史を感じながら、今日も私たちは"1杯のビール"を注ぎます。丁寧に、誠実に、そして楽しみながら。

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◎この記事を書いた人◎
袴田大輔
株式会社遠野醸造 代表取締役
"クラフトビールをもっと身近に、もっと楽しく"
ホップの産地遠野で、新たなビール文化を醸成すべく奮闘中。遠野醸造では、ブルーパブ運営、人事、総務、会計、広報など幅広く担当。何でも屋です。
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