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その21 探しもの

 ずっと探していた絵本『楽園のむこうがわ』(作:ノリタケ・ユキコ/文:椎名かおる)をようやく買うことができて、とても嬉しい。時々買っている雑誌『MOE』の新刊紹介のコーナーに載っていて、凄くほしいなと思ったのにメモするのを忘れた。後日買おうとしたときにはタイトルも作者も出版社も分からずお手上げだった。無い知恵を振り絞って検索したり、家じゅうのMOEをひっくり返したりしてみたけれど分からず、半ばあきらめていたある日、大きな書店に行った。広々した空間にたくさんの絵本が並んでいて、探しもののことを思い出した。とりあえず書棚の前を何周もしてみたけれど、立てかけられてでもいない限り分かるわけがない。
 なぜかこの日、今までまったく思いつかなかった方法を突然閃いた。MOE編集部に直接聞いてみよう。がらがらの店内のベンチに座って、駄目元で白泉社に電話をかけた。すぐに編集部の方が電話口に出た。
 「いつかMOEに掲載されていた絵本を探していて……確か左右それぞれ違う男の子が家を建てていくようなお話で、すごく綺麗な絵で、作者がフランス在住の日本人の方だったような……」的な朧げな説明をしたところ、相手の方は「ああ、きっと『楽園のむこうがわ』です。確認してきますね」とぱっと分かってくださり、作者名等々親切に教えてくださった……。さすがプロとひれ伏しました。早速検索機に打ち込むと、さっきからうろうろしていた「大人のための絵本コーナー」(こどものため、おとなのためという括りは好きじゃないけど)にあった。何度も前を通り過ぎていたのに気づけなかったのでした。本を探すのは難しいけど、見つけられた時の嬉しさはひとしおで、絵本を抱きしめてレジに向かった。
 肝心の『楽園のむこうがわ』はアクリル絵の具で描かれた絵がとにかく素晴らしくて。こういう絵の中に住みたいといつも思う。

 ネットや新聞などで見て面白そう、と思っていた本を早々に親が買ったり図書館で借りたりしていて実家にいったらびっくり、というのも最近しばしばある。『ダーウィン事変』(うめざわしゅん)も『かくして彼女は宴で語る 明治耽美派推理帖』(宮内悠介)も両親がいつのまにか手に入れていて少し読ませてもらった。

 『群像』6月号から始まった連載「事務に狂う人々」(阿部公彦)はTwitterで知ったのだけど、とても面白かった。無駄で地味と思われがちな事務仕事がフランス革命では多くの命を救ったことや、漱石にまつわる諸々など。文中で紹介されていた『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』(デヴィッド・グレーバー)読んでみたい。わたしもクソどうでもいいような事務仕事をしているけど、結構好きです。

 最近やっと雀魂で欲しかったキャラクターを手に入れ安心してアンインストール(n回目)したので、色々読みたい。とりあえずは頓挫している『スノウ・クラッシュ』(ニール・スティーヴンスン/今読んでも何ら古びることなく躓かず読めるのが本当に凄い)と読み始めたばかりの『書架の探偵』(ジーン・ウルフ/まだ十数ページだけど面白い。この書架見てみたい)を読もうと思います。
 先日これもTwitterで知った、以前遠野市立博物館で開催された佐々木喜善と宮沢賢治展の図録も注文済みなので楽しみ。色々な方面から読みたいもの、聴きたいもの、観たいものを探すのはとても楽しい。


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