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持続可能な観光への挑戦ー「世界の持続可能な観光地100選」選出を受けて【求人情報有】

こんにちは。「観光マネジメントボード遠野」の事務局長の多田陽香(タダハルカ)です。遠野出身で、都内IT企業でエンジニアを経験し、6年ほど前に遠野にUターンしました。
遠野では起業型地域おこし協力隊のコーディネーターを務めた後、ときどき観光ガイドもしつつ、事務局を置くDMO法人・株式会社遠野ふるさと商社にて、遠野の観光のマーケティング・プロモーションを担当しています。

Uターンしてから郷土芸能大好きに。ふるさと村で駒木しし踊りさんと

実は先日、心待ちにしていたニュースが世の中に発表されました。
岩手県遠野市が「世界の持続可能な観光地TOP100選」に選出された、というものです。

「岩手・遠野など東北3地域、世界の持続可能な観光地100選」|日本経済新聞(2024年10月16日)

「世界の持続可能な観光地TOP100選」とは、国際認証の公式認証機関であるオランダの非営利団体グリーン・デスティネーションズが、持続可能な観光の国際基準を取り入れ、より良い地域づくりに努力している地域を毎年選出しているものです。
2024年版の発表では、日本から遠野市を含め5の地域が選出されました。

何が評価されたの?

世界各地で行われている持続可能な観光地のための取り組み事例の中から、特に優れた事例を「グッド・プラクティス・ストーリー」として選出するこの表彰制度。
遠野市は、遠野市独自の地域遺産認定制度である「遠野遺産」の取り組みが「文化と伝統」部門で評価され、今回の入選に至りました。


遠野遺産認定された場所には共通の看板が立つ(遠野遺産第125号 柏木平の砥森神社)

遠野市では、小さな石碑や巨木、集落で守り管理している神社や郷土芸能など、169件が現在までに「遠野遺産」として認定されています。
実はこの地域遺産を守る取り組み、国内でも遠野市がいち早くスタートしており、国指定、県指定などにならない地域の遺産を保護、活用するために、2007年からスタートした独自制度なのです。

住民にとって次世代に残したい「たからもの」を、自治会などが主体となって申請し、それを行政がバックアップする、その長年の取り組みが評価されたものと思います。

早速、観光情報サイトでは遠野遺産をめぐるモデルコース第1弾を公開して情報発信しています。

11/1に新しくなった遠野市観光情報サイト「遠野時間」

なぜ入選を目指したのか?

 遠野市は令和5年3月に策定した遠野市観光推進基本計画で、持続可能な観光まちづくり=サステナブルツーリズムを推進することを定めています。よく勘違いされることがありますが、サステナブルツーリズムとは、例えばごみ拾いをツアー化する、みたいな一つの旅行形態(いわゆるアプリケーション)ではありません。すべての観光地が目指すべき仕組みや体制、基盤(OS)そのものです。

サステナブルツーリズムへの世界的な流れは、利益だけを追い求めた結果、地域の文化がゆがんだり、環境破壊に至ったりといった世界の観光先進地の反省からきています。
そのため、観光による経済効果を最大化しつつ、地域に受け継がれる文化や豊かな自然環境を損なわないよう対策を取り、将来に渡って継続できるような観光を実現していこうという考えです。

持続可能な観光は4つの柱からなります(経済、文化、環境、全体のマネジメント)

現在遠野がどれくらい持続可能な観光地に近づけているか、国際基準に照らし合わせてチェックをしてみると、実はできていることも多い、ということがわかりました。そのなかでも際立ったのが住民主導で地域の文化遺産・自然遺産を守る「遠野遺産」の仕組みでした。

こういった優良な取り組みをグローバルレベルで第三者機関に評価してもらうことで、取り組みの継続意欲や誇りの醸成につなげたく、今回エントリーをしました。エントリーにあたっては、遠野は初のエントリーということで15のサステナビリティチェックを実施し、それを通過してから、ストーリー提出、という流れでした。(もちろんすべて英語で提出が必要だったので大変でした・・。)

真の持続可能な観光地をめざして

今回の入選は、当然ながらエントリーしたことがすごいのではなく、地域の長年の努力が素晴らしいのです。「遠野遺産」は遺産を守ろうと結束し、活動しつづける地域の方々がいて成り立っているものです。
遠野には幸い、美しい里山の景観や、郷土芸能活動に、ビールの里のプロジェクトなど、新旧あわせたくさんの持続可能性を感じる取り組みがあります。こういった今ある素晴らしいものにしっかり光を当てていくことを今後もしていきたいと思っています。

それと同時に、将来にわたる好循環の仕組みを作っていくこともDMOが率いていく役割と考えています。

雲海スポットとして認知度が高まってきた高清水展望台は、雲海が発生する秋の早朝に来訪者が集中。来訪者の安全確保とオーバーツーリズム対策が必要です。

標高797m。雲海が見られるスポットして認知が急上昇した高清水展望台。

また、県下でも低い水準にとどまっている遠野の観光消費額。旅行者からは、とてもいい場所だけどお金を落とすところが少ない、という声も聞かれます。宿泊率4%という低さも要因の一つです。

現在も同時並行で様々な協議をしていますが、行政、交通、宿泊、観光事業者を巻き込み実現していくには非常に時間がかかります。
そのため、将来を見据えながら取るべき行動を見極め関係者に働きかけていく、そんな動きがDMOには必要と感じています。

すぐに成果が目に見えてわかるものではないので辛抱強く取り組んでいく必要がありますが、今遠野市には観光マネジメントボード遠野のメンバーをはじめ本当に頼もしいプレーヤーが揃っていると思います。

時代の転換期といわれる今、遠野が真の持続可能な観光まちづくりを実現するため、今が勝負どころです。一緒にOSを構築していく仲間を募集中ですので、ご興味を持った方はぜひこちらから詳細をご確認ください。

遠野市の持続可能な観光に向けた動きについてやまとごごろに取材いただいたこちらの記事もご参考ください。

今後も、観光マネジメントボード遠野の定例会の様子など、このnoteで発信していきますので、ぜひチェックいただければと思います。

文・多田陽香

参考)遠野版DMOについて