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成熟嚢胞性奇形腫 体験記

はじめに

私は2021年夏、卵巣に腫瘍があることがひょんなことから発覚し、手術をしました。
現在はほとんど後遺症もなく、元気に過ごしています。
実際に手術や入院をしてみて、これは私が特別だから腫瘍ができてしまったのではなく、誰にでも起こり得ることだということがわかりました。
このコラムを通じて、少しでもみなさんが病院へ足を運びやすくなればいいなと思っています。

発覚までの過程

軽い気持ちで訪れた婦人科

2021年、私は精神的な不調から長い間休職していました。
初夏、調子が良くなってきて、そろそろ職場に戻れるかもしれない、そう思いました。
そこで、時間がある今のうちに、今までちょっと気になっていたけど病院で診てもらうほどではなかった不調を解消しようと思いました。
思春期の頃から生理痛がひどく、一度婦人科を受診したいと思っていたため、軽い気持ちで婦人科を訪ねました。

下から機械を挿れて、先生がモニターを眺めること数十秒。
「ねえ、これちょっと見てくれない?」と他の先生を呼んでくる先生。
ざわざわし始める診察室。
すごく長い時間に感じました。
そして着替えた後に伝えられたのが、「左の卵巣に6センチほどの腫瘍がある」という現実でした。
そして同時に、7センチから即手術だということも伝えられました。
すぐに大きな病院へ行き、精密検査をしてもらうよう伝えられ、紹介状を書いてもらいました。

すごく不安でした。

精密検査

生理周期の関係で、2~3週間後に大きな病院を訪ねました。
同じようにエコーでも診てもらい、MRIなどの検査も行った結果、
左が10センチ、右が13センチ腫れていることがわかりました。
即手術です。
同時にその腫瘍が、「成熟嚢胞性奇形腫」と呼ばれる種類であることも伝えられました。

成熟嚢胞性奇形腫とは

すごく簡単に言うと、漫画『ブラックジャック』のピノコを想像してもらうといいかと思います。
ピノコの心臓や脳などの臓器がないバージョンです。
卵子がなんらかのきっかけで精子と結びつくことなく細胞分裂を始め、皮膚や脂肪、歯、髪の毛、骨などを作ってしまい、それが卵巣にくっつく形で腫瘍になるものでした。
卵巣は通常2つあるので、片側だけにできる人もいるそうですが、私は両側にできていました。
はっきりとした原因は今の医学ではわかっていませんが、生殖器系の異常は大体がストレスによるものだと言われました。
イメージとしては双子の子宮外妊娠です。

卵巣の腫瘍は約90%が良性と言われています。
私も検査の時点では良性の可能性の方が高いと言われました。
ただ、卵巣の腫瘍で一つ気をつけなければならないのは、良性でも悪性でもない「境界悪性」というものが存在するということでしょう。
それに関しては、腫瘍を取り出してみて検査しないとわからないとのことでした。
良性だからと放っておいても、捻転を起こしたり、最悪腹膜炎を起こしたりして、いいことはありません。
でも手術にはもちろんリスクがあります。
なので2~3センチほどのサイズであれば、経過観察となることが多いようです。
私はどちらにしろ大きくなりすぎていたので、最短の日時で手術してもらうことになりました。

入院・手術

準備したもの

私にとってはじめての入院・手術となった今回。
どんなものを用意していったらいいのかわからず、同じ病気だった人の経験談などをネットで漁っていろいろ調べました。
私が入院の際に持ち込んだものは以下です。

・下着(ショーツは臍上まですっぽり隠れる
    マタニティ用を持参)
・暇つぶし用の小説
・クッション
・Blu-rayプレイヤー
・お菓子(グミ)
・洗面道具
・ケーブルが長めのスマホ充電器

手術の説明の際、「5mm〜1cmの傷を4箇所開けて手術する」と言われていたため、普通のショーツでは傷跡にあたってしまう可能性があるなと思いました。
そこで、マタニティ用のショーツを履くことにしました。
これを機に腹巻きが手放せなくなってしまったのですが、この腹巻についてもいつかコラムが書けたらいいなと思っています。
また、時期が夏だったこともあり、パジャマやタオルはレンタルを利用しました。
暇つぶし用の道具は沢山持っていきましたが、それよりも傷跡が痛すぎてほとんど活用できませんでした。

入院1日目

抗原検査をして昼過ぎに入院しました。
普通に夜もご飯を食べましたが、夜は下剤で腸を空っぽにするよう努めました。
私は事前に自分でやっていたのでなかったのですが、人によっては看護師さんから下の毛の剃毛やお臍の掃除をしてもらうようです。

入院2日目

いよいよ手術の日がやってきました。
朝ご飯はもちろん食べることができず、水も少量しか飲めませんでした。
そして手術室に入る10分前、事件が起きます。
主治医の先生が私の病室にやってきて、こう伝えたのです。
傷の箇所数と大きさを変えます」。
10分前です。
もう緊張しすぎて何も頭に入ってきませんでした。

術後に落ち着いて母から聞いた話だと、こうでした。
事前に撮っていたMRIの画像診断で、5mm〜1cmの傷では取り出せない骨が存在していることが発覚したそうです。
そこで、5mm〜1cmの傷を1箇所と、3cm〜5cmの傷を1箇所の計2箇所を切ることになりました。

私はその説明もろくに聞かないまま、手術室に入り、ベッドに縛り付けられ、全身麻酔で深い眠りに入りました。

9:30頃に手術が始まり、手術が終わって麻酔が切れるまで、昼前までにはもう病室に戻っていました。
ここからが地獄でした。
傷が痛いの痛いの。
どんな体勢をしても痛いのです。
もちろん点滴で痛み止めは入れてもらっています。
でも全然効きません。
入院して5日目には退院と言われていましたが、とてもとてもそんな未来を描けるような状態ではありませんでした。

腕には点滴、下にはお小水用の管、脚にはむくみを取るための機械。
生かされている感じがすごかったです。
その日はもちろんご飯が食べられるわけもなく、痛みに耐えて一睡もできぬまま夜を明かしました。

入院3日目

さあ、まだ痛みとの戦いです。
今まではただただお腹の傷周りが痛かったのですが、なぜか肩がすごく凝るようになってきます。
両手を上に上げると楽になるので、しばらくバンザイの体勢をとって過ごしていました。
昼頃にはお小水の管も取れて、点滴も抜けて、歩けるようになりました。
でも何か支えがないと不安で、点滴のラックを杖代わりに歩く練習をしました。
亀より遅かったと思います。
夜から流動食を食べられるようになりましたが、あまりにも味がしなさすぎてストレスでした。

入院4日目

人間の体って不思議なものです。
昨日はあんなに痛かったのに、もう支えなしでも歩けるようになっていました。
ご飯も、夕飯から通常食に戻りました。
美味しくて涙が出そうでした。
美味しいご飯を毎日食べられることの幸せを感じた瞬間でした。
また、この日からシャワー浴のみOKの許可がおりました。
久しぶりのシャワーも気持ちいいのなんの。
明日退院するという事実がやっと現実的に見えてきた日でした。

入院5日目・退院日

日常生活にさして支障がない程度には歩けるようになり、早く退院して美味しいご飯が食べたいなぁとばかり思っていました。
が、大好きな辛いものは控えるようにと、退院説明で言われてしまいました。
また、入浴も次回の診察日(約1ヶ月後)まではシャワー浴のみと制限されました。
冷え性がひどい体質なので、手術が夏でよかった〜と思いました。
あとはなるべく重いものを持たないように、性的接触は控えるようになどということを言われました。

術後の経過

生理も1ヶ月ごとに順調に来ており、病院で診てもらった感じも特に問題ないとのことで、普通に生活しています。
3ヶ月に一回ほど再診してもらっている状態です。
重いものを持たない生活が続いたせいか、下っ腹がめっちゃ出るようになってしまったので、筋トレをする毎日です。

おわりに

発覚から現在までをサラッと書いてみましたがいかがでしたでしょうか。
何かご質問などあったらお気軽にお寄せください。
私も自分が病気になる前は、腫瘍なんてもっと歳をとってから心配するものだと思っていました。
意外と近くに存在しています。
少しでも多くの世代の女性はもちろん、女性のパートナーがいる男性にも広まっていくと嬉しいです。

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