パープルの色設定について-インカレロング、スプリント2024の例-
はじめに
O-MAPの色設定は以前はISOMで基本的に混色にすること(OCADでは下絵を特色モード+コースをドラフトモード)と決まっていました。それが、ISOM2017-2からは色設定に関するドキュメントが別冊になり、混色が非推奨となりました。
参考:色設定ドキュメント和訳版(IOFの最新版に訳が追い付いていないです。最新版はこちらから)
コース設定のパープルの扱いも、以前は全て透過させるのが基本だったのですが、今では記号によって扱いが変わりました。
今回は先日私が関わらせてもらったインカレスプリント・ロング2024の場合を例に、どのようにパープルの色設定を行ったのかを紹介しようと思います。
分類
まず、設定の仕方に分類と名前があったほうが何かと都合がいいので、それを定義します。
細かい設定はいろいろできますが大きく分けて3つの設定に分けます。
lower purple
地図記号のうち、点特の緑と黒の下にパープルを入れる設定。透過ではありませんが、道や重要な特徴物を潰さないので、透過に近い効果を得ることができます。ISOMでは、△、〇、レッグ線、立入禁止の境界、横断点などがこの設定と決められています。
lower purpleが入る色順序の位置はISOMとISSprOMで違っていて、ISOMでは茶色や青(線、点)よりも下に来ますが、ISSprOMではそれらよりも上に来ます。これは地形や水系を重視するかどうかの違いでしょう。
OCADでこの設定をコース記号に対して行うためには、コースデータと下絵地図をマージする必要があり、実務上面倒くさいです。よって、あまりこの設定は使われていません。WOCなどでもめったに見かけません。唯一使われていた例がWOC2022でした。(地図にcondesのロゴが載っていた。使ったことないけど、condesuはこういう設定が簡単出来る?)
一応、もしOCADでこの設定をする場合の手順としてはコース設定→エクスポート→コース地図のエクスポートでコース毎のファイルをエクスポートする。次に下絵地図を開いて、コースデータをインポートして、色設定をいい感じにする。これをコース毎にやる。コントロール位置が変更になったらやり直し…面倒くさいし凡ミスの元ですよね…
upper purple
地図の全ての記号の上にパープルを重ねる設定。ISOMではコントロール番号、誘導区間、立入禁止区域などがこの設定と決められています。
OCADでは、ドラフトモードにするとすべての記号が透過してしまうが、トリッキーな設定を行うことで特定の記号だけを不透過にすることが可能になる。
参考:https://note.com/tonnkkn/n/nefd94fd97c1e
透過パープル
パープルを半透明にして下絵と重ねる方法。かつては全てのパープルを半透明にすることになっていましたが、現在ではISOMではこの設定を使用せず、代わりに先述のlower purpleを使うことになりました。ただし実運用上、uneder purpleを使うより透過させる方が簡単なので、WOCなども含めて透過の設定は今でも普通に使われています。
OCADではコースデータをドラフトモードにすると透過するほか、PDF化する際にはノーマルモードかつブレンドモードで透過設定にすることで、透過させることができます。
インカレスプリントの例
電気柵の横断禁止処理
広場を囲う電気柵は本大会では通行禁止としました。柵自体は通行可能柵の表記ですが、パープルの記号(708)で通行禁止表記にしています。
この記号の色設定は、不透過のlower purpleとしました。透過にすると、オープンのオレンジと混ざって見にくい感じがしたので。また、東の池の部分の立入禁止ハッチも同様に、透過設定にすると青に沈んで見にくくなってしまいまうため、同じく不透過のlower purpleとしています。
この場合、708の記号はコース設定ファイルで入れるとlower purpleにできないので、下絵地図の方に入れました。コントロール円などの記号を下絵にマージするのは面倒ですが、立入禁止関係の記号は最初から下絵に入れておいてもそこまで手間ではないと思います。
ちなみにめっちゃ細かいところですが、立入禁止記号の境界の記号に埋もれてる独立樹の色がパープルと混ざっているのは、独立樹の緑を透過設定にしているからです。(この設定は好みだと思う)
その他のコース記号は、オーソドックスにレッグ線と〇は透過、数字は白抜きです。
ロングの場合
ロングでは長大な獣害防止柵があり、その中の一部の出入り口のみを解放しました。どの渡河点を通るかがルートチョイスの重要な材料になるため、渡河点を見やすくする必要がありました。
ISOM的には渡河点はlower purpleなのですが、透過あるいはlowerで表記すると、柵やコンタに埋もれて見えにくくなってしまいます。そのため、ロングではupperで表記することにしました。
代償として、渡河点付近の下絵地図が見えなくなってしまうのですが、大抵の渡河点は道が続いていて、その直近で細かいナビゲーションをする要素はなかったので、この設定でも副作用は少なかったのではないかと思います。
まとめ
色設定については、テレイン/コースによって最適解が異なる場合が多いです。一応、ISOMで混色しないとか、どれがupperでどれがlowerでとか決まりがありますけど、あくまで標準的にはこうだよっていう目安に過ぎないものだと考えています。
大会ごとに特殊記号を乱発して局所最適を目指すようなことをすると、競技者にかえって負荷をかけることになりかねませんが、色の設定を微調整するようなことはむしろ余裕があれば積極的にやってよいと思います。実際、WOC/JWOCなどの地図を観察しても、規定通り完全準拠している例は少数派で、いまでも下絵の混色をしている例が見られます。形式的にルールを守っているからいい地図、いい大会、というわけではないんですよね。
例えばコントロール番号の白抜きも、今ではISOM側でも認められていますが、以前は(厳密にいうと)逸脱でした。それでもやっぱり白抜きの方が見やすいよねってことで、先に実践されて、後からルールが追いついたわけです。
まぁこの辺どこまで、ってところもありますが、ある程度ルールを逸脱して見やすい地図を目指す創意工夫というのは、むしろO-MAPの発展に寄与するのではないでしょうか。