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ベーシックインカム
朝から、そこまで意欲はなくても頭をよぎったので書くことにします。今回は「ベーシックインカム」を話題にします。
この話が一般に馴染みがあるかは分かりかねますが、まずは定義として「収入や資産等の条件によらず、行政が一定額の現金を支給する」という制度のことです。この目的には様々なものが考えられますが、私的にはこれは「社会保障制度改革の一環」と言うのが最もわかりやすいかと思います。
例えば、我が国ではいわゆる正社員として一定期間勤務した場合、その給与から毎月一定額の「雇用保険料」が差し引かれます。これは我が国の場合は事業主も折半していますが、この積み立てにより条件を満たせば失業中に雇用保険を受け取ることが可能となります。健康保険や年金もほぼ同様で、給与から差し引かれ、また条件により事業主が一部負担した上で積み立てられ、それが病気の時や老後に何らかの形で支給されるというものになります。
ベーシックインカム、というと所得保障の意味合いが強いと意識されますが、確かにそうした面はあるものの、これも、それを支給することで各種の社会保険・社会保障の仕組みを簡素化し、受け取ったインカムで受給者本人が民間の保険・年金などを組み合わせて自分で社会保障を構築する、という前提の制度といって過言ではありません。具体的に言えば、ベーシックインカムを導入する代わりに、雇用保険は廃止する、という話になるものと言えます。
但し、これも少し考えれば分かる通り、その実現には巨大な財源が必要となり、その財源の徴収により結局は受給者が何らかの形で負担する金額が増える、ということになりやすいものと言えます。また、特に雇用保険の場合は現行ではその支給条件や受給資格にはわりと厳格なものが定められているため、単に就労を忌避する形で雇用保険を受給するのは難しいようになっています。一方、ベーシックインカムの場合はそうした諸条件が前提として存在しないため、誰でも受給することが出来、結果として労働者の勤労意欲を低下させることには繋がりやすいものかも知れません。
現行の公的年金には、国民年金、厚生年金、共済年金があり、労働者の就労形態によって加入先が異なるという話になります。これも、我が国の場合はここでは到底書けないような複雑怪奇な事情が多数絡んでいて、その関係上運用や制度維持のためのコストは相応に大規模なものになっている可能性はあると言えます。このため、こうしたものを簡略化する目的でベーシックインカム化し、受給にまつわる諸条件を緩和すれば、それに応じてこれらの旧来の社会保障の維持・運営コストの削減にはなり得ると言えます。但し、それももしかすると「机上の空論」に過ぎない可能性もあり、公的年金を廃止したことにより、例えば各受給者の個人年金運用に関わるリテラシーの向上が求められるといったことが容易に考えられ、そうした教育等の表面化しないコストは寧ろ増える可能性も考えられます。
似たような話に、社会保障のバウチャー化といった話題もかつてはあったと思います。これも、それこそ似たような話で社会保障へ参加するためのクーポンのようなものを配布して、受け取った市民が自分で制度設計するという話だったと思います。近年はそうした議論を個人的には目にする機会が減った気がしますが、結局はそれに伴う財源と、そうした制度設計を市民自身が行う必要上、求められるリテラシーが必要になる、という同じような話の気が個人的にいたします。
そろそろまとめますが、知る限りベーシックインカムを恒常的に導入している国は少なくとも主要国ではなく、未だその実績や結果が把握されているものではないので、こうした急進的な改革が何を成すかには慎重な判断が求められると思います。現行の雇用保険や複雑怪奇な年金制度、健康保険の仕組みなどに問題がないとは全く思いませんが、それらを緩やかに改革していくことと比べて、どちらが選択肢として適切かは十分な考慮が必要と思います。以上です。