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レーダーの話
おはようございます。別に日課にしているわけではありませんが、割といつもより少し遅い時間に目覚め、先程からたっぷりコーヒーを飲んでると退屈しのぎに一つ書く気になったので今朝も書きます。今回は「レーダー」の話。
ここでいうレーダーとは、電波を発信することによって遠方の対象物を検出する装置のことと定義しておきます。原理や歴史的経緯などを振り返りながら知見や知識などをいくつか書きます。
簡単に原理を説明すると、これは言うまでもなくアンテナから電波を飛ばして、その電波が遠方の対象物に当たったときの反射による電波の変化を装置で捉えるものと言うことが出来ます。目的は様々で、もちろん艦船や航空機に搭載されるような軍事目的もあれば、気象観測用のレーダーなども今日でも利用されているかと思います。
軽く歴史を振り返ると、考案から研究が始まったのは主に欧州で、少し調べると19世紀の後半くらいにドイツで発案され、その後イギリスでも積極的に研究がなされたようです。有名なのが、イギリスの「王立レーダー研究所」で、ここが主に20世紀前半を通してレーダーの研究のみならず各種のエレクトロニクスの研究を行い、今日の産業にも多くの影響を与えたかと思います。
実用的なレーダーには「指向性アンテナ」というものが必要だったと言え、実は、この指向性アンテナには日本人発明者が深く関わっています。いわゆる「八木・宇田アンテナ」というもので、この発明により一つの方向に強い指向性の電波を送ることが可能になったかと思います。後に、テレビアンテナにも採用される近現代の重要な発明品の一つと言えます。
時は第二次世界大戦、フランスを制圧したドイツは、ダンケルクに追い詰めながら逃がしてしまったイギリスを攻略するために英本土航空戦を仕掛けます。この戦いが「バトルブリテン」と呼ばれるもので、航空機同士の戦いになりましたが、数の上で劣勢だったイギリス軍がドイツの排除に成功した原因の一つが本土全域に張り巡らしたレーダー網で、この管制の下で行った迎撃が有効に機能した結果と言えるかと思います。また、同じ頃の太平洋では、ハワイに迫る日本海軍の大航空機隊を、米軍はレーダーで捕捉していましたが、自軍の訓練によるものと誤認した結果日本軍の侵入と攻撃を許してしまった、というエピソードもあります。
当時から、既に軍事においては地上設置のみならず艦船にも多数搭載されるようになり、後期の米軍艦船には当時としては高性能なレーダーが多数装備され、太平洋戦争後半においては日本軍の攻撃の成功率は極めて低いものとなりました。また、夜間爆撃の迎撃などに利用される中型航空機などにも、当時からレーダーが装備されるケースが多数ありました。日本軍も、大戦後半にはようやく実用的なレーダーを地上や艦船で運用できるようになったと思います。
あと、軍事以外で有名なのが、日本において台風を観測するために、気象衛星がなかった頃は高所からの観測が必要で、富士山の山頂に大型レーダーを設置して長年運用していたと思います。
レーダーは、電波により遠方の対象物を検出しますが、当然地球は丸いので水平線や地平線の向こうには電波が届かない場合があり、このため基本レーダーは高所に設置するのがセオリーとなっています。なお、こうしたことから、軍事においては「早期警戒機」という種類の航空機が用いられる場合があり、常時飛行して空中から遠方を監視する、というオペレーションも存在します。我が国も、数機程度の早期警戒機を自衛隊が運用しています。
なお、今日では、軍事に限れば航空機の飛行速度が極めて高速になったため、旧来からのレーダーの原理である、回転する電波発信装置から指向性の電波を飛ばして検出する方法では対応が間に合わない場合があり、特にミサイルを想定する場合は重要な問題となるため、常時全方向に電波を送る形式のレーダーを搭載する艦船などがあります。艦船の場合は、これをいわゆる「イージス艦」といい、イージスとは、ギリシャ神話からくるイージスの盾に由来し、本来の任務は空母の護衛であったかと思います。
その他、太平洋戦争後半に作戦に投入された、砲弾に搭載される「近接信管」なども広義にはレーダーの一種と言えます。また、今日の航空機に搭載されるレーダーなども高性能なものが多く、航空自衛隊が装備する支援戦闘機「F-2」なども、航空機搭載用としては極めて高性能な「フェーズドアレイレーダー」を搭載しており、これが調べるとレーダーだけで7億8千万円もするそうです。
色々、軍事を中心にレーダーについて見てみましたが、もちろん、魚群探知機と言ったもののようにこうした装置は民間でも多数活用されており、現代はレーダーや電波の恩恵を受けている社会と言えるかも知れません。そして、それを実用化する原理を発明したのが、実は日本人だった、というのはなかなか面白いことかと思います。今朝は、以上です。