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アメリカでドンキーとマリルイのRTAを走ってきました【AGDQ2024参加レポート】

本記事は、2024年1月14日~21日にアメリカ合衆国ペンシルバニア州ピッツバーグで開催されたチャリティスピードランイベント「Awesome Games Done Quick 2024(以下、AGDQ2024)」に『スーパードンキーコング(以下、ドンキー)』および『マリオ&ルイージRPG(以下、マリルイ)』走者として参加したレポートです。

参加レポートはWebメディア「Game*Spark」上でも別途公開しております。ここでは、以下の記事には書ききれなかった準備期間の事情や、8泊10日の渡米期間に私が経験したことについて、今後開催されるGDQに応募したい、または参加する予定がある走者の参考になる部分があればという願望も込めて書き残します。余すところなく書いたのでかなりの長文(約15,000字)になってしまいましたが、予めご了承ください。


当選に至るまで

2023年8月末、AGDQ2024の詳細が発表されました。今回はオンライン・オフライン混合のハイブリッド開催とのことでしたが、オフライン応募を重点的に採用する方針に関するインタビュー記事を見て、オフライン一本で応募することを決めました。

過去のハイブリッド開催時(SGDQ2022、SGDQ2023)には「オンオフ両方参加可能だがオンライン希望」の旨を添えて応募していました(実際SGDQ2022にはオンラインで参加しました)が、今回オンライン応募の採用率はかなり低くなることが予想されたためです。社会情勢の変化により、かねてからの夢だった現地参加への障壁がなくなりつつあったことも理由の一つです。

応募期間は9月1日~10日。直近で走り始めたカテゴリや新技の影響で更新余地の増えたカテゴリを中心に記録更新に取り組み、上限にあたる5作品で応募しました。応募作品の中には、今回で8回連続の落選となったものもあります。イベント応募時はいつも「応募〆切までベストを尽くしたうえで、通ったらラッキー」の精神です。なお応募はGDQ公式サイトの専用ページ上から行います(要アカウント登録)。

当落発表は10月14日。通るとしたら『ドンキー』かなと予想していたので、『マリルイ』とのW当選は嬉しいサプライズでした。とはいえ、複数作品を同じイベント内で走った経験は(リレー等を除いて)これまで無かったので、初めての海外イベント現地参加で2作品とも良い走りを披露できるのか、不安をかかえながらの準備期間がスタートしました。

ちなみにAGDQ2024では、直近で発売されたゲーム(2023年8月1日~)のための二次応募期間が設けられており、『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』などの作品が採用されていました。二次応募枠の採用発表は12月5日と本番まで余裕が無いため、この枠で日本から参加したい場合、準備はより大変になるでしょう。

準備期間のこと

渡航準備編

採用が決まるとメールでイベント用のDiscordサーバーに招待されるので、忘れずに参加。まずは運営チームからの参加者向け情報にじっくり目を通しました。重要な連絡は基本的にDiscord上で行われます。

続いて、渡航に向けて必要なものを洗い出しました。この時点で3か月後に迫った本番に向けて、最優先で対応したのが

  • パスポートの取得とESTA(電子渡航認証システム)への申請

  • GDQ参加者登録

  • 飛行機とホテルの予約

の3つです。1点目は、人によってはビザの申請が必要になるかもしれません。その場合、当選後の動き出しでは間に合わない可能性もあるでしょう。2点目は、パスポートに加えてワクチンの接種証明の提出を求められました。スマホアプリから英語版の接種証明書を発行し、所定のフォームから提出。承認には3週間ほどかかりました。参加料は85ドルですが、走者は負担なしで登録できました。

現地参加者が受付でもらえるネームパス

飛行機については、スケジュールの発表を待ってから旅程を組んで予約しました。私の走者出番は1日目と4日目。時差ボケを考慮して、現地入りを本番2日前に設定しました。帰りの日は悩みましたが、翌週には仕事に復帰できるよう、イベント6日目に日本へ帰ることに。デルタ航空のメインキャビンで乗り継ぎ1回ずつの往復予約を取りましたが、総額は約19万円でした。

エコノミークラス相当ですが十分美味しい機内食

ホテルについては、会場となるWyndham Grand Pittsburgh Downtownを、GDQ公式サイトから団体割引価格で予約しました。1泊1部屋あたりの料金は約2万5千円。節約のために他の参加者と相部屋することも考えましたが、ウイルスによる感染症等のリスクを鑑みて1人で泊まることに。実際には、走者仲間で予定を合わせて2人組を作ったり、家族で来たりするなどして複数人で宿泊している参加者が多かった印象です。

部屋にはキングベッドが1つ。相部屋勢はダブルベッド×2の部屋に泊まっていました

会場のホテルでは6泊分の予約を取れましたが、現地入り初日まで含めた通し予約は取れなかったため、初日のみピッツバーグ空港近くのホテル(1万5千円程度)を予約することにしました。

以上の他に、出国までに順次用意したものとしては

  • スマホの海外ローミングの利用予約(1日約500円)

  • TSAロック付きスーツケース

  • 変圧器(SFCの電源アダプター用)

  • 日本食(アルファ化米とフリーズドライ味噌汁)

  • 防寒着(ニット帽、ダウンジャケット、タイツ)

  • 薬(風邪薬、痛み止め、整腸剤)

があります。ダウンジャケットについては、UNIQLO羽田空港第3ターミナル店(免税店)でシームレスダウンパーカを購入。マイナス10度を下回るピッツバーグの厳しい寒さの中でも快適に過ごせました。

ホテルの自室からの朝の景色

解説準備編

スピードランに関する準備としては、まず解説者の調整を行いました。解説者の人数についてのAGDQ2024の決まりは以下の通りです。

  • 走者と解説者の合計は4人まで

    • ただし3人以上のレースについては、2人までの解説者のみマイク使用可(走者はミュート)

  • オンライン解説者については、必要性が高いと認められた場合のみ1人まで参加可能

    • 理由を添えて運営にメールを送ると、個別に可否が判断される

    • オンライン解説者に関する〆切は11月15日(事前の技術チェックが必要なため)

解説依頼にあたっては、『ドンキー』『マリルイ』それぞれの作品のトップクラスのベテラン走者であるV0oidMurmilioにDMを送りました。彼らは解説も理論的で聞きやすいうえ、長らく個人的な交流もあって信頼できたので、当選したら是非解説をお願いしたいと考えていました。V0oidは当初の旅程を変更してまで現地解説を快諾してくれました。Murmilioはスケジュール的に現地には行けないがオンライン解説ならOKとのことだったので、上のフローに沿って運営の承認を得ました。

ステージ上のソファーが解説者席

GDQでは、複数の解説者がソファーに座って和気あいあいと進行するケースが多く見られます。今回は2人目以降の解説者をそれぞれの作品のDiscordサーバー上で募集しました。その結果、『ドンキー』ではGlan、『マリルイ』ではMr_Shastaも解説に加わってくれることになりました。解説者との事前の細かいやり取りは特になし。記録狙いのルートとの差分を伝えた程度でした。プレイ中は基本的に喋らないつもりだったため、トーク内容は完全にお任せしていました。

英語以外の複数言語によるリストリーム解説者に向けては、専用の情報提供フォームを通じて「DKC Speedruns」や「Superstar Saga Any% Speedrun Route」といった英語リソースへのリンクを提供。一発勝負向けにルートを変えるポイントについては、文章による補足も併記しました。

特にJapanese Restreamに関しては、国内のRTAイベントで解説していただいたことがあるとうふさんとasutoroさんに今回の日本語解説をそれぞれ依頼し、個別に情報提供しました。メジャータイトルは現地のゴールデンタイムに割り当てられる都合で、どうしても日本の深夜から早朝に配置されがち(今回は『ドンキー』が午前3時台、『マリルイ』が午前6時台)なのですが、引き受けていただき大変助かりました。

また、出演予定時間のホスト(司会進行役)であるAttyJoeからは、走者としての基本的な情報や寄付コメントの読み上げ方針などに関する13の質問リストがDMで届きました。ここで回答した内容は、出番前に会場を盛り上げるための口上にも活用されていたようで、その用意周到さにとても感心しました。

走者準備編

解説者が決まれば、次はプレイ内容に関する準備です。『ドンキー』では、カテゴリのアップグレードに関するインセンティブを提出しました。GDQにおけるインセンティブとは、寄付の動機付けとなるような追加要素のことです。今回提出したのは「Reverse Boss Order(以下、RBO)」。一定の寄付額が集まった場合、元々採用されたカテゴリである「101%」に対して「RBO(ボス逆順)」という縛りを追加してクリアするというものでした。

インセンティブの提出は本番直前まで受け付けられており、順次ゲーム選考チームが採用可否を判断します(応募時点でインセンティブを付けることも可能ですが、当落そのものには影響しません)。インセンティブの選考結果が最初に出たのは12月8日のこと。私の提出分は当初「?」(追加情報が必要)というステータスだったので、メールで情報を追加したところ、すぐに採用に変わりました。

ここで送った追加情報は以下のようなものです。

  • 12月3日にイベントで初通しを行った際の動画リンク

    • 他のカテゴリーでは登場しないグリッチ使用シーンのタイムスタンプ

  • 多くの準備が必要となるため、当落が早めに分かると嬉しいこと

    • ルートを独自に一から組む必要があったこと

「101% RBO」は走者があまりいない非公式のカテゴリですが、「101%」以上に見た目のインパクトが大きい内容を含むため、インセンティブに適していると考えていました。当時調べた範囲では参考動画も見当たらなかったので、11月はルート構築と練習に多くの時間を費やし、提出に漕ぎつけました。どちらのカテゴリも万全の状態で披露できるように調整しなければならないため大変でしたが、GDQのチャリティ活動に少しでも貢献できればという思いで準備にあたりました。

8,000ドルの目標額が達成された寄付ページ。目標額は当日の公開まで走者にも知らされません

『マリルイ』の方は、2022年夏の「RTA in Japan」に向けて取り組んで以来、1年以上のブランクがありました。その間に登場したSwitch Onlineバージョンはフレームレートの関係でわずかに速くなるうえ、万一進行不能になった場合に巻き戻し機能が保険として働くため、元々のプレイ環境であるゲームボーイプレーヤーから乗り換えることに。

プレイ環境の移行にあたって苦労したのは、コントローラーの変更への対応です。『マリルイ』のRTAでは、約1秒間にAボタンを連打した回数だけヒットする必殺技を使って終盤のボスを低レベルで撃破します。そのため高速なAボタン連打を安定させることが重要なのですが、Switchのコントローラーでは以前使っていた連打方法(爪こすり連打)が上手くいかなかったため、別の連打方法(両手連打)を練習して取り入れました。

本番1か月前に参加したイベントの時点では腕がこわばって上手く連打できませんでしたが、この数日後に筋肉の使い方の感覚をスッと掴むと、従来よりも早い連打速度(秒間20回)まで出せるようになり、一安心しました。

渡米期間のこと

『ドンキー』編

日本を出国したのはイベント2日前のこと。羽田空港では両替と保安検査を済ませた後、ゲン担ぎに六厘舎のラーメンを食べました。自販機で買ったコーラが噴き出して、買ったばかりのコートが30分でコーラまみれになってしまうハプニングもありましたが、何とか初めての国際線に搭乗しました。

機内では、YouTube PremiumやAmazon Primeで事前にダウンロードしておいたRTA動画や映画を鑑賞しつつ、Switchで『マリルイ』のバックアップデータも作成……する予定だったのですが、ビールやワインを片手に座席で遊べる『2048』に夢中になっていると自然と眠気が。当初のプランとはかけ離れた過ごし方となりましたが、経由地のアトランタまでの12時間はあっという間でした。

入国審査では、滞在の目的をスムーズに説明できるよう準備していましたが、観光と答えただけで通ることができ、ほぼフリーパスでした。ピッツバーグまでの乗り継ぎ便までは3時間あったので、アメリカ最初の食事はマクドナルドへ。Lサイズのダイエットコークが巨大すぎて、ストローが底につかないほどだったのが印象的です。

無事乗り継ぎに成功し、ピッツバーグ空港に到着したのが20時。ホテルに到着の連絡を入れて、迎えに来た無料のシャトルバスに搭乗しました。無料と言えどチップ文化があるので、ドライバーには礼金を渡すのが暗黙の了解ですが、降りる際にうっかりチップを渡し忘れそうになりました。チップを払う習慣には最終日まで馴染みませんでした。

ホテル到着後はチェックインを済ませて22時頃に就寝。自分で口コミを調べて予約した宿だったのでクオリティに不安がありましたが、ちゃんとお湯が出る綺麗な部屋で安心しました(伏線)。

翌朝は無料の朝食会場でワッフルを焼き、ブラックベリーヨーグルトと一緒に食べました。食事自体は美味しいのですが、朝食コーナーのどこを見ても野菜のやの字も無く、到着から半日にして早くも限界が。持参した味噌汁と白米で何とか生き返りました。時差ボケからか軽い頭痛があったので、ロキソニンも服用。

空港から会場への移動は、GDQ推奨のバスが便利でした。会場のあるダウンタウン周辺まで30kmほどの道のりを、2.75ドルで移動できます(タクシーだと50ドル前後)。チケットはTransitというアプリを経由してオンラインで購入。乗車時にQRコードを提示するのですが、肝心のコード読取機が故障中だったため、代わりに運転手にコードを見せることで乗せてもらいました。

目的地までは40分ほどあったので、ご飯の計画を練りました。V0oid個人のDiscordサーバーにGDQ参加者が集まるチャンネルがあったので、そこでおすすめを聞いたところ、Primanti Bros.のサンドイッチが有名とのこと。パストラミビーフサンドイッチにはポテトも一緒にサンドされており、豪快ながら美味でした。同サーバーの参加者たちとは、翌日以降多くの時間を一緒に過ごすこととなります。

昼食後は会場のホテルにチェックイン。どでかいキングベッドで横になって休憩しましたが上手く寝付けず、17時頃ホテル2階のGDQ会場へ。受付では入場証を兼ねたネームパスを受け取ると、スタッフが会場内の各部屋を案内してくれました。

下の画像1枚目はメインとなる配信部屋、2枚目はゲームしながら交流できるカジュアル部屋です。スケールが非常に大きく、ブラウン管だけでも30台設置されていました。また、ホテル内の全てのトイレがオールジェンダートイレとして運用されていました。

早速練習部屋で『ドンキー』をプレイしようとしたところ、映像が上手く出力されないトラブルが発生。すぐに配信部屋にいたスタッフを呼んで対応してもらいました。この日は長旅の疲れと時差ボケの影響か頭が重く、ゲームスピードがいつもより速く感じられるボロボロの状態でした。

練習後は雪の降る中セブンイレブンまで夕食の買い出しに。部屋に戻ってTwitchで雑談配信をしながらターキーサンドを食べました。配信していると、V0oidから会場に到着したとの連絡が。カジュアル部屋で合流して挨拶のハグを交わし、出番が終わったら飲みに行く約束をしました。RTAを始めた頃からの憧れの海外走者に対面できた感激は、これだけでも現地に来る価値があったと確信できるものでした。

帰室後はゆっくり湯舟に浸かり、23時にはベッドに入りましたが興奮で寝付けず。結局眠れたのは0時から4時半の間だけで、日本の友人と通話しながら朝を待ちました。

出番当日の朝食は、早くも二度目の味噌汁と白米。電気ポット等は無いので、コーヒーメーカーでお湯を沸かしました(豆をセットせずに電源を入れればOK)。室内のコーヒーメーカーは無料で利用できるうえ、豆はベッドメイクの度に補充してもらえるので重宝します。朝の通し練習の後の軽食タイムにも部屋からコーヒーを持参しました。

11時に配信部屋へ移動。Japanese Restream出演オファーを前日にいただいていたので、開幕待ちの時間帯にスマホから音声出演しました。会場内の様子を実況したほか、日本に無いJuneberryのレッドブルの味のレポートも。日本の視聴者からの応援チャットに勇気づけられました。

11時半の開幕を見届けた後は練習部屋で最終調整を済ませて、本番45分前に待機エリアへ移動しました。午前の飛行機でカナダから来たGlanともこのタイミングで合流。V0oidと3人で最後の打合せを行いました。

「RBO」のインセンティブは、公開から1時間ほどで8,000ドルの目標寄付額を達成。披露するカテゴリがここでようやく決まって腹をくくりました。寄付コメントの対応方針についてもスタッフを交えて再確認。ハッシュタグにDKCを入れると寄付コメントが優先的に読み上げられる旨を、コミュニティのDiscordサーバー内でV0oidに共有してもらいました。

前のランが終わりに近づくとステージ上へ移動。今回のGDQは2レーン体制でした。ステージ上に左右2セットの走者・解説者席が用意されており、ランが進行している間に次の走者がセットアップを済ませる仕組みです。2023年10月にラスベガスで開催された「Games Done Quick Express 2023」で導入した結果が良好だったため、今回も継続採用になったとのこと。

ステージの上は日本のどのRTAイベントよりも(物理的に)眩しく、ライトが強く当たりました。また、持参したスーパーファミコン+変圧器ではなく、運営側が用意したSNESを使うことに。現物を初めて触るので戸惑いましたが、リセットボタンの使い方などを軽く確認して映像と音声のチェックへ。

映像の方は暗めのコースをプレイしてみて明るさを確認しましたが問題なし。音声の方も、ヘッドセットからの音量バランスがデフォルトで問題ないように感じたため特に調整しませんでしたが、音を頼りに狙う1F技の際に解説音声が被ってやりにくくなってしまい、これは失敗でした。

いよいよタイマースタートの時間を迎えると、出だしから盛大な拍手や歓声の連続。客席の高いテンションにつられて自然と調子が上がり、文句なしの好スタートを切れました。迎えた序盤の見せ場「トリックトラックリフト2」では、1F技の比較的新しいリカバリーにイベント初成功。思わず大きな声とガッツポーズが出てしまいました。

その後は中盤にリズムを崩す時間帯もありましたが、上手く気持ちを切り替えると終盤の難しいワープにもミスなく成功。ラスボス戦では客席からのBGMに合わせた手拍子に乗りながら、53分台での完走となりました。走る前は睡眠不足が最大の懸念事項でしたが、ギリギリ時差ボケを克服して良いコンディションで走り切れたと思います。

出番を終えて後ろを振り返ると、たくさんの拍手やサムズアップのジェスチャーが目に入りました。自室に戻る途中の廊下では、すれ違う人たちから次々と労いの言葉が。エレベーター内では2年前に『ドンキー2』を解説してもらったSpikevegetaからもお褒めの言葉をもらい、多くの温かさに触れて部屋で一人泣いてしまいました。

お昼はGlanの部屋に集まってDunkin' Donutsのカラフルなドーナツを食べながら部屋のテレビでGDQを鑑賞。普段あまり甘いものは食べませんが、疲れた身体に沁みる美味しさでした。その後は1階のボードゲーム部屋に移動し、MTG対戦会をしばし見学。18時にロビーで合流する約束をして、仮眠を取りに一旦自室へ戻りました。出番中のチャットやXの反応を見返していると結局眠れませんでしたが……。

YouTubeのアーカイブは走り終えて3時間ほどで公開。サムネイルの写真は練習中の様子を撮影してもらったものが使用されています。後にイベント全体のアルバムも閉会から4日という短期間で公開され、ここでもスタッフの仕事の速さを感じました。

夜ご飯は7人でThe Yardへ向かい、V0oidおすすめのStella Artoisで乾杯。好きなビールの話題で盛り上がりました。店内ではアメフトの試合が放映中。ピッツバーグにもNFLのチームがありますが、ワイルドカードの進行次第ではGDQ期間中に近くで試合が開催される可能性もあったようです。

この日の食事で一番美味しかったのは、ポテトにプルドポークとチーズ、グレービーソースがたっぷり乗ったプーティン(上の画像2枚目)でした。プーティン発祥の地であるケベックに住むV0oid曰く、本場とは全く別物だが味はとても良いとのことでした。

『マリルイ』編

GDQ2日目。『マリルイ』の出番は4日目なので、中2日の貴重な調整期間です。この日は朝まで寝付けず、起床したのは15時。前日に飲んだレッドブルが美味しかったため、日本で手に入らないフレーバーを買いに外出しました。値段は1本で約4ドルとお高めです。日本のレッドブルと比べると微炭酸で、カフェイン量は変わらないもののタウリンが添加されています。

街角のスタバで軽食を済ませてリカーショップへ。マルガリータのカクテル缶を入手しました。見た目と関係なくきっちり年齢確認されるので、パスポートの提示を忘れずに。街中ではスケートリンクが開放されており、雪の中楽しそうに滑る人達の姿もありました。

ホテルでは年末の「RTA in Japan」に続いて『Ultimate Doom』を走ったZELLLOOOと待合せをして挨拶。日本から音声スタッフとしてオンラインでやり取りした際は、来年会えるのが楽しみだね、という話をしていたのでした。ちなみにこの時着ているThe Yeteeの走者Tシャツは、事前に専用のフォームに回答するとブースで受け取れるものです。

ディナーはV0oidたち一行と12人でCity Worksのクラフトビールを楽しみました。この日に到着した走者とはここで初対面。Ryan_Fordとは日本の走者やスマブラプレイヤーの話題で、lolFortifyとは大谷やサンフランシスコ・ジャイアンツの話題で盛り上がりました。福岡に留学経験のあるSilviteとはまさかの博多弁トークも。会計は個別にカードで行いますが、レシートには任意額のチップを記入する欄があります。会計の15%、20%、25%にあたる金額が目安として載っていたので、20%を上乗せして支払いました。

『マリルイ』の調整は、酔いが醒めた頃に深夜の練習部屋で行いました。細かいところを巻き戻し確認しつつ、バックアップデータを作成。

翌日は12時に起床して、マルちゃんのカップ焼きそばを電子レンジで調理。割り箸は無いので木製マドラーで代用しました。旨味が薄く、日本人の口には合いそうにない味でした。

この日は観覧したい作品があったので、部屋のテレビでイベントの進行状況を確認。GDQの配信は各部屋だけでなく、ホテル内のジムのテレビでも流れていました。

お目当ての『Gyromite』の時間が近づいた頃、配信部屋へ移動。柴犬のPeanut Butter (PB) 君がGDQ初の犬走者としてプレイするスピードランで、スケジュール発表時から非常に楽しみにしていた作品です。指示通りにボタンを押してギミックを攻略するPB君の頑張りを会場全体で見守りました。完走時にはスタンディングオベーションに参加しました。

観覧後は『マリルイ』を練習部屋で1本走り、カジュアル部屋に移動して挨拶に来てくれる人をX上で募集しながらの練習タイム。最初に来たのは『ペーパーマリオRPG』走者のYoshi_Zillaと解説者のSway。翌日のランが上手くいくことをお互いに祈りました。

また、練習を見に来てくれたGDQ視聴者のカップルからも応援の言葉をもらいました。おすすめの観光スポットを聞くとPittsburgh Zoo & AquariumThe Andy Warhol Museumの名前が挙がり、翌々日の観光プランを練り直しました。

夜はアメリカのラーメンを試しにYuzu Kitchenへ向かいましたが、あろうことか中華麺が売り切れ。うどんかライスヌードルから選ぶように言われたので、何故か味噌汁ビーフンを食べることに。昼のカップ焼きそばと同じく薄味でしたが、追加でもらった醤油を足すと丁度よくなりました。

また、この日はカジュアル部屋のタイムアタックコーナーに『ドンキー』がありました。この一角では、日替わりで色んなゲームの1面のタイムアタックに挑めます(持ち時間10分)。お昼に出した記録をV0oidが塗り替える様子を後ろで眺めました。

『マリルイ』の出番当日は8時に起床。朝食を買いに1階のショップへ行くと、トラブルでお昼過ぎにオープン予定とのこと。代わりにスタバのコーヒーが無料で提供されていました。

仕方なく部屋でご飯と味噌汁を食べ、正午まで二度寝。寝るつもりは無かったのですが、枕無しで横になった途端、この日までの寝付きの悪さが嘘のように快眠できました。睡眠不足が続いたのは時差ボケ関係なく、単に枕の高さが合っていなかっただけだったのかもしれません。

最後の通し練習を終える頃にようやくショップが開いたので、ピザで腹ごしらえ。食後はMr_Shastaと合流すると、隣に見覚えのある同伴者が。名前を確認すると、SGDQ2015『マリルイ』走者のaltabiscuitでした。コーチに入っても良いかと聞かれたので、もちろんOKと即答。AGDQ2018『マリルイ』走者のMurmilioと合わせて、歴代のGDQ走者が揃い踏みする形となりました。

Murmilioはオンライン参加のため、音量調整はオンライン/オフライン混合となり複雑化。『ドンキー』の時と比べてかなり時間がかかりました。セットアップ中にはaltabiscuitから、過去のGDQではラスボスが1発で突破されたことがないので期待しているよ、と有難いプレッシャー激励の言葉もありました。

迎えた本番では、開始直後に技術トラブルのため一時中断。何の中断なのかは聞かされませんでしたが、後で確認したところ、後ろのソファーから見ていた走者のHyruleHeroが、ゲーム画面のアスペクト比が正しくないことに気づき、スタッフに伝えてくれたそうです。

ランの内容は、序盤に最高の運を引いて良い流れに乗ると、グリッチ区間に入るまでの50分を大きなミスなく進行。終盤は不運なエンカウントもありましたが何とか全滅を回避すると、ボス戦では好調な連打が初めての2ターン撃破を呼び込み、解説陣と一緒に驚きのリアクションが出ました。

本来は3ターン撃破を想定していたキャサリン戦

問題のラスボス戦では、GDQの魔物が牙を剝きました。立て続けにコマンドのミスが出てしまい、何とかリカバリーを試みるも、ラスボスの行動は最も回避の難しい攻撃。ここで年末に考案した保険用の戦法が活き、従来であれば即死するところをマリオがHP1でギリギリ耐えると、2度目の同じ攻撃は全回避に成功。回復アイテムを使い切りながらも何とかラスボス1発突破を決めて、1時間20分台での完走となりました。

走り終えてから見聞きした感想は、ラスボス戦関連のものがほとんどでした。解説陣も無言で見守るしかないほど息が詰まる展開で、タイム的には痛いロスでしたが、結果的として大きな見せ場を演出できたのは怪我の功名です。

夜は再びThe Yardへ。2つの出番を終えた開放感からか、この日のハンバーガーとポテトチップスは前回以上に美味しく感じました。会場に戻ると、ちょうど見たかった『スーパーマリオ64』Drum%の時間。コントローラーの代わりにドラムを叩いてマリオを操作するというカテゴリの特殊性を感じさせない、鮮やかな走りでした。走者のCZRとは帰りのエレベーター内で偶然一緒になり、握手を交わしました。

観光編

イベント5日目はお楽しみの観光デー。同行者が午後に到着する予定だったため、それまでは会場内の色んな部屋を回りました。午前中はアーケード部屋へ。リズムゲームやピンボールの筐体が並んでいましたが、個人的に断然気になったのはアーケード版の初代『ドンキーコング』。ステージをクリアする度に縦に積みあがっていくドンキーがシュールでした。

お昼は二度目のYuzu Kitchenで牛ステーキの炒飯を注文。濃い目の味付けで美味しいですが、米の量が1.5合分くらいあり相当なボリューム。店員さんに容器を頼んで、余った食事を持ち帰る人も多く見られました。

帰りはお土産店(love, Pittsburgh)に立ち寄って、自宅用のビアマグを購入。ホテルに戻ると『スーパーマリオサンシャイン』が進行中だったので観覧に加わり、シャインをゲットする度に会場と一つになって手拍子を送りました。

15時過ぎ、観光の約束をしていた『マリルイ』シリーズ走者のSnoionが車で到着。当初行く予定だった動物園は閉園時間が近かったので諦めて、代わりにPittsburgh Botanic Gardenへ。真冬なので植物の鑑賞は楽しめませんでしたが、野生の鹿の足跡が残る雪の上を歩くのはワクワクしました。

植物園の後はショッピングモール内のBubble Fishに立ち寄り、苺のバブルティー(タピオカ入りのお茶)で小休憩。店内で無料で飲めるオレンジと胡瓜の浮かぶデトックスウォーターは、口に含むと草原の味が広がりました

休憩後はレトロゲームショップ巡り。1店舗目ではNESコントローラーを10ドルで、2店舗目では『ドンキー2』のポスターを8ドルで(掘り出し物!)入手しました。元々買いたかったSNESやGBAのゲームソフトは、想像の2倍以上の値段だったので購入を断念。

夜ご飯はカジュアルなステーキチェーンのLongHorn Steakhouseへ。一番大きい22オンス(約624グラム)の、漫画のようなステーキを食べました。会場付近のステーキハウスはドレスコードがあるような高級店が多く入れなかったので、車で連れて来てくれて感謝です。実はSnoionとは年末の「RTA in Japan」が初対面。来日中だった彼に飯田橋で焼き鳥を奢ったのですが、今回はそのお返しにとご馳走してくれました。

ピッツバーグ最後の夜は、滞在中特にお世話になったV0oid達一行と別れのパーティ。ホテルの部屋で99 Bananasのショットやブランデーを楽しみ、一人ずつ2ショット写真を撮りました。日本に来る際は東京を案内する約束を交わして、24時過ぎに自室へ戻りました。

出発の朝は7時にチェックアウト。普段使いの眼鏡をいつの間にか無くしていたことに気づきましたが見つからず、ILeftMyStuff.comで落とし物として申請しました。部屋で見つかったとの連絡が帰国後に入りましたが、返送費用は総額200ドルほど。元の価格より高かったため、泣く泣く処分してもらいました。空港では自販機のパスタサラダで野菜不足を解消。

この日は悪天候で、11時発予定だったデトロイト行きの便がなかなか飛ばず、1時間遅れでの離陸。乗り継ぎに十分な時間を確保していなかったため、振替便を選択することに。羽田への良さげなルートは24時間後しかなく、デトロイトで追加の1泊が決定しました。乗り継ぎには最低でも2時間確保しましょう……。

デトロイト空港では手荷物を一旦返却してもらい(2時間かかりました)、ホテルを適当なサイトから予約しました。初日に泊まったのと同じ系列のホテルなので安心できるかと思いきや、ホテルに電話を入れると予約名を確認できないとのこと。慌てて予約したこともあり、フィッシング詐欺の可能性が頭をよぎりました。部屋の空きはあるとのことだったので、ひとまずシャトルでホテルに向かうことに。受付で予約情報を見せると、サイト上の操作を経て予約が確認されて一安心。トラブルを乗り越えて食べたCheckersのハンバーガーとポテトは、生を実感する味でした。

しかしトラブルの本番はここからです。疲れからコーラを倒して全部床に飲ませると、スーツケース内ではお土産のカクテル缶が破裂しており内部がびしょびしょに。ホテル自体も信じられないほど最悪で、廊下の自販機は全部売り切れ、建物の半分は工事中で立ち入り禁止。部屋の電気はほぼつかず、シャワーもドライヤーも当然のように動きません。

翌朝、無料と謳われていた朝食はどこにもなく、代わりに廊下で人が寝ていました。旅にトラブルはつきものと言うものの少々度が過ぎる気もしますが、忘れられない思い出が増えたのでOKです。

悪夢のようなホテルから脱出した後は、空港でカリフォルニアロールを食べました。日本の回転寿司2皿分くらいの量で、値段は14ドル。味の方はさておき、わさびと生姜の発色が鮮やかで綺麗でした。

旅の終わりに、アメリカでも注文が難しいと言われているらしいサブウェイのサンドイッチにも挑戦しました。野菜の種類が豊富で、ほうれん草や紫玉ねぎ、ズッキーニといった日本では乗らない野菜も。6インチ(日本で言うレギュラー)サイズですが、ずっしり重くて大満足でした。

羽田行きの便に搭乗したのは正午のこと。AGDQ2024に現地参加したもう一人の日本人走者であるkaznさんの『マリオカート64』の出走を離陸前にギリギリ見届けられました。kaznさんとはデトロイトでニアミスだったようで、結局渡米期間を通じて日本人とは会えずじまいでした。

空の上では、行きの機内で観られなかった動画を鑑賞。翌月リメイクが発売されることとなる『マリオvs.ドンキーコング』のランを観て、RTAの予習しながら日本に帰りました。

帰国した夜はJapanese Restreamのチャンネルをお借りして『ドンキー』『マリルイ』それぞれの振り返り配信を行いました。

本番を終えて

帰国後は昼と夜に4時間半ずつ寝るという謎の生活リズムに陥ってしまい、元の生活を取り戻すのに苦労しましたが、8泊10日の旅を通して一生の思い出を得ることができました。好きなゲームで海外イベントに参加することが、こんなに感情を揺さぶる経験になるとは思っていなかったので、現地参加して本当に良かったと思います。

言語面、経済面の参加ハードルは高いですが、特に海外のスピードランイベントの雰囲気を体感してみたい方や、GDQ参加者の中に会ってみたい走者がいる方には、ぜひ現地参加をおすすめしたいです。

必要な英語力については、普通のアメリカ旅行+海外のオンラインRTAイベント参加を両方こなせるレベルであれば概ね問題ないかと思います。経済面については、最低でも40万円以上の出費を覚悟した方が良いでしょう(2024年時点でのお話。私の場合は総額50万円ほどでした)。

もしこの記事を読んで、日本からのGDQ参加に関する質問や相談事がもしありましたら、可能な限りお答えするので、お気軽にご連絡ください(Twitch配信のチャットやSNSのDM等、どんな方法でも構いません)。

以上、長文になりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。最後に、イベント参加にあたりお世話になった関係者の皆様、期間中現地や配信で応援してくださった皆様に心より感謝します。

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