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久しぶりのTAP

 玉川大学TAPセンターの川本先生に、僕の学校で授業をしてもらった。前任校では毎年のようにお願いしていたが、今の学校に移ってからは初めてのことだ。今回のテーマは、「TAPを通じて子どもたちが自分自身のリーダーシップについて考える」というもの。川本先生のP.理論と山登りリーダーシップを掛け合わせた考え方は、子どもたちに人との関わりを考えさせる上で、非常に分かりやすい。以前からこの考え方を取り入れてみたかったのだが、自分だけでその授業をやるにはなかなかイメージが掴めず、少しハードルが高いと感じていた。そこで今回は、直接川本先生に授業をお願いすることにした。

 久しぶりに自分のクラスを見てもらえるということで、正直なところ、嬉しさよりも緊張感が勝っていた。川本先生ほど、学級の状況を瞬時に見抜き、適切にアセスメントできる人はなかなかいない。自分の学級経営に対してフィードバックをもらえる貴重な機会だと考えていたからだ。

 プログラムはテンポよく進んだ。まず、川本先生と学生スタッフの自己紹介からスタート。川本先生は子どもたちの心をあっという間に掴み、その技術に感心させられた。僕が学生の頃から上手いと思っていたけど、さらに磨きがかかっていたようだ。特に笑ったのは、川本先生が「Kazooの笛」を実際に持ってきて吹いてくれたことだ。昔は話だけで聞いていたけど、今回実際にけたたましい笛の音を聞くことができて、まるで10年越しの伏線回収のような気分になった。

 次に、「Cゾーン、Sゾーン、Pゾーン」の話が始まった。この話の進め方がとても参考になった。先生は具体的な例を挙げながら、子どもたちに自分の中で考えさせていた。単に話を聞かせるだけではなく、挙手させることで、子どもたちが「自分にとってこれはCゾーンかな?Sゾーンかな?」と考える時間を与えていた。さらにテンポがよかったことで、子どもたちは飽きることなく話に集中していた。

 次に、グループに分かれて自己紹介と他者紹介を行った。「自分はどんな人間か?」という視点での自己紹介に加え、「周りから見た自分はどうか?」という他者からのフィードバックも交えることで、子どもたちはお互いの印象を知ることができた。このような活動は初めてだったが、意外にもお互いのことをポジティブに紹介し合っていて、良い雰囲気だった。ここまでで約30分、大きなアクティビティはしていないが、川本先生や学生スタッフたちのおかげで、子どもたちは楽しそうに過ごしていた。

 そして、メインのアクティビティへ移った。今回行ったのは「ビート」と「フープ」というシンプルなTAPの活動だ。しかし、その中で自分のリーダーシップについて考えさせる内容が巧みに組み込まれていた。最初は4人グループでビートを数分間行い、すぐにその活動を振り返る。振り返りでは「今の活動で自分はグループの役に立っていたと思うか?」と子どもたちに問いかけ、挙手をさせる。続いて、PM理論を使い、パフォーマンス機能が強いか、メンテナンス機能が強いか、具体的なビートの姿を元に説明した。子どもたちは、自分がグループにどう役立っているのかを意識し始めたようだった。

次は8人グループでのビート。人数が増えることで、グループ内での役割や関わり方がさらに複雑になったが、
「123トントン!」
と大きな声を出しながら活動に取り組み、失敗しても楽しそうに笑う子どもたちの姿を見て、僕も少しほっとした。

次に、リーダーとリーダーシップの話に移った。「リーダーは個人のこと、リーダーシップは能力のこと」
と話しながら、単に前に立って引っ張るだけがリーダーではないことを強調。山登りリーダーシップでは、グループを前、中、後、全体という4つの役割に分け、その役割にPM理論を掛け合わせた8つのタイプを用いて、自分のリーダーシップを考えさせる内容だった。子どもたちは自分がどのリーダーシップタイプに属しているかを、周りの友達と相談しながら考えていった。これにより、子どもたちは自分と他人から見た自分とのズレや一致点を感じ取り、リーダーシップについて深く考えることができていた。

 その後、フープのアクティビティへ移行。最初は3回のチャレンジで3つの異なる方法を試した同じ活動でも設定を変えることで目標や狙いが変わることを再認識させられた。続いて、子どもたちは自分たちで最適な作戦を考え、目標タイムを設定。タイムを設定するときに、学生スタッフの1人が素早く思考ツールを使って論点を整理していたのには驚かされた。

 最後には、3つのグループ合同でのフープに挑戦。クラス全体で話し合いを行いながら進めるのだが、人数が増えると話し合いの難易度も一気に上がる。最初のチャレンジが終わった時、川本先生から
「今の話し合いはうまくいってた?もっと良くするにはどうすればいい?」
と問いかけられたことで、子どもたちは次のチャレンジに向けて話し合い方を改善し、見事に目標タイムを切ることができた。子どもたちは大満足の様子だった。

 放課後にはプログラムの振り返りを行った。川本先生は3つのクラスの状況を見事に語りながら、子どもたち一人ひとりに対して仮説を立て、アプローチし、その反応を確認することで見取りの解像度を高めていた。このやり方は非常に効果的で、アセスメントの方法として僕も真似してみたいと思った。今まで無意識にやっていたことかもしれないが、今後はもっと意識的に取り入れていこうと感じた。

 学生たちへのフィードバックもさせてもらったが、正直驚かされたのは、彼らのファシリテーション技術が非常に高かったこと。あれでまだ3年生だというのだから、ますます驚かされる。各グループに入っている学生たちを見て、自分の学生時代を思い出し、少し懐かしさも感じた。

 自分のクラスへのフィードバックは、「Cゾーンがしっかり形成されていて、自由なクラス」と評価された。自分自身、こういうクラスを目指していたので、それを外部から見てもそう感じてもらえたことは素直に嬉しかった。

 久しぶりのTAPは、僕にとっても子どもたちにとっても大きな収穫があった。今年度は10月と2月にも行う予定なので、今回の学びを日常の中で活かし、子どもたちの成長に繋げていきたい。

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