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全面キャッシュレスの最大の課題は何か?
〜 シンプルに考えよう 〜:〜:〜:〜:〜
テクノロジーや政治や専門知識を省いて誰にでも分かりやすく!
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埼玉県の行政におけるキャッシュレスへの取り組み。考え方自体は間違っていないけど、日本の金融業界のポリシー的な課題が大きい。
近年加速するキャッシュレスへの動きはマイナ保険証の時と一緒で、新たなサービスを導入する側はテクノロジーに対するリテラシーも、現実社会の理解もないのだろうなぁと思うのです。
医療や行政サービスは必要に迫られて利用するモノであって、これらの全面キャッシュレス化は無理があります。
◆技術は確立済みだが・・・
技術という観点からはUI(ユーザーインターフェース)はだいぶ最適化していて、テクノロジーを理解しない高齢者にも優しいものになりつつあるのですが、実はもっと大きな問題は金融機関のポリシーにあります。
キャッシュレス決済にはプリペイドやデビットカード、クレジットカードなどのサービスがあり、公的機関としては普及率や長く使われていると言う点でクレジットカード導入がメインの決済手段であるような気もしますが、現状のポリシーだとクレジットカードを持てないヒトが相当数いるのです。
日本の金融の資格審査は過去の履歴が長く参照されるので、一度問題があると仮に高額の貯蓄があってもカードを持てないケースはままあります。また収入が多くても職業差別は多いのも現実です。
クレジットカードの先進国アメリカだと、そもそもチャージカードとして始まっているので口座に金額があれば発行可能。そして最初は短い有効期限から始めて、返済に問題がなければ有効期限が伸びるのです。例えば学生向けに1ヶ月有効なクレジットカードとかあるので地道に返済履歴を作り、未来に向けて信用を積み上げていきます。
◆必要に迫られる利用者像
行政サービスと言うのは、一般の消費者向けの使いたいから使うサービスではなく、どちらかと言えば必要に迫られて利用するサービスです。
そして行政が多く接するである層には高齢者だけでなく生活保護受給者も多いのです。当然、生活保護受給者はクレジットカードを持てません。
あくまでも手段である決済手段のキャッシュレス化なのですが、いつの間にか、この手段であるキャッシュレス化そのものが目的になってしまうと言う本末転倒が起きています。
必要に迫られて(=困って)サービスを利用するのに、一番困っていそうな人たちに対応していないのが日本の金融サービスの現実です。
◆利用現場の実際
以前関わっていた医療機関のお仕事でも生活保護受給者の受診については、すべてにおいてアナログな作業になっています。身元の確認、自治体の生活課担当者との連絡、医療証の発行などなど、大半を紙で行っています。マイナ保険証が導入になっても、受診に必要な医療証(医療機関受診のためのクーポン)のデジタル対応は遅れていて、結局は口頭で役所への連絡依頼をした上で、病院からも役所へ電話連絡をする流れになっています。
実際の利用現場を考えればもちろんのこと、どのような利用シーンにおいても全面キャッシュレスというのは、かなりハードルが高いことは間違いありません。将来的にはキャッシュが廃止される時代がくることはあるでしょうが、その前に誰でも利用できる決済手段の普及が最重要な課題となります。そしてその決済手段はクレジットカードが最右翼であることは間違いなく、国内でも米国のような柔軟なクレジットカードの発行が求められるようになるのではないでしょうか?