生成AIとの正しい接し方
〜:簡単に言うと〜:〜:〜:〜:〜:〜
難しいことを誰にでもわかるように簡素化するシリーズ。テクニカルな背景や難しい専門知識は省いて、なにが不便なのかを考える。
〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜:〜
古今東西、学生による生成AIを利用したチートが氾濫していて、教える側も悩みが多い。そして学校側も様々な対策を考えているようです。
単純に考えれば、持ち帰りの課題でなくクラスルーム内での試験とすれば解決するのですが、学生にリサーチ能力とクリエイティビティを学ばせるために持ち帰り課題は必要という考え方もあり、教える側も悩ましい問題ということですね。
一見効率的なアプローチですが、課題というのは自ら問いていくこと目的であって、それらを生成AIに頼っていくことは効率化ではなくて、単なる怠けです。生成AIの進化が今後どのような影響を与えるのか?どのように接していくのが良いのかを考えたいと思います。
◆作文してもらうのではなく、作文させる
お茶の水女子大学のアプローチが興味深く、これはいわゆるプロンプトエンジニアリングの授業に近いものです。
簡単に言えば、作文してもらうのではなく、作文させるということで、最近私が関わっている生成AIのプロンプトと回答の品質向上プロジェクトと同等の内容。より良い回答を導き出すための質問(プロンプト)作成、そして回答の品質向上など、単に生成AIを使って作文をしてもらうのではなく、生成AIが最適な答えを出すためのライティングの訓練になっています。
プロンプトエンジニアリング自体は新しい学問分野ですが、実は米国の高等教育の基礎アプローチとして古くから実施されています。
◆米国の教育現場では?
私自身、外国人留学生として滞在した北米では、特にライティング関連の授業で苦労をしましたが、これらも現代のプロンプトエンジニアリングの基本となっている考え方だと思われます。
今でも忘れられないのが、自身が大学時代に受けたアジア史の授業。歴史の授業でありながら、これこそがロジックとクリエイティブなライティングを要求されています。
細かな内容は憶えていませんが・・・
スメスハースト教授からの課題:
時は1945年8月、私日本占領連合軍スメスハースト大佐は、アメリカ陸軍元帥兼日本占領連合軍総司令官ダグラス・マッカーサーの命をうけ、東京丸の内のGHQ/米太平洋陸軍総司令部に招聘された。
そこで私に与えられたミッションは、日本の戦後復興における戦略立案であり、条件として民主化を推進するのか?天皇制を残すか廃止するか?など、あらゆる可能性を検討して復興シナリオを立案してほしい。
しかし、私スメスハースト大佐は太平洋戦争の歴戦の雄として最前線を渡り歩き、決して日本の文化的背景に明るい訳では無い。
そこで君たちの出番である。君たちは大日本帝國攻略のために戦時中はワシントンDCの戦略本部で敵性国家攻略のための戦略構築に精通している。今回日本攻略のエキスパートである君たちに、戦略立案をお任せしたい。
提出期限は◯月◯日。1800時までに参謀本部の私のデスクに届けてほしい〜〜〜〜
正直、この課題には正解はありません。史実に基づいて考察し、仮説を立てて論理的な回答を作ることのみが求められます。天皇制を残すべきか、それとも廃止するべきか?その結果に対しての日本国民は?資本主義経済を導入するも共産主義を導入するも自由で、仮に実際の史実と整合しなくても妄想であっても、歴史的考察を下にロジカルな説明ができれば正解なのです。
この課題が渡されたとき、クラスの大半は頭を抱え込んでいたことを憶えています。
この出題形式は、生成AIにおけるプロンプトの構造と同じで、条件と制約を与えることで理想的な答えを導き出すことを目的としています。歴史の試験でありながら、ロジックとクリエイティビティを鍛えるための試験なのです。昔からこんなトレーニングをアメリカの大学生は受けてきているのです。
◆デジタルライティングツールの功罪
最近はグラマリー(Grammarly)など英語の作文ツールが利用可能であり、広告でも大学生がグラマリーを大学の課題に利用するケースが紹介されています。私自身もたまにグラマリーを利用することがありますが、かなりの精度で誤りを指摘することが可能になっています。しかし本来これらのツールは自ら書いた文章の質を向上させることが目的であって、課題として提供される間違い探しの問題文を解決するためのツールではありません。
ある程度の英語レベルを持つ人が使う分には問題ありませんが、全くも未習熟者が頼ってしまうと避けるべきでしょう。なぜなら、人対人でのコミュニケーションで、リアルタイムにどんな場所でも利用可能なインフラは現時点では存在しないからです。