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もう日本のドラマ制作には期待できないのか?
いよいよイカゲームのシーズン2が配信開始。シーズンが進むと劣化するドラマコンテンツも多いけど、あのクオリティは健在。
さて年末年始は動画三昧ということで、あらためてコンテンツビジネスを考えます。
◆海外配信プラットフォーム強し
ここ数年続いてるトレンドですが、やはりNetflixとアマプラが強い。
元々は米国ドラマ好きということもあり、今でも米国のテレビドラマシリーズを見てます。ですが、近年はホントに韓国ドラマが凄くて、もう日本のドラマ制作は敵わないなと。
初めて見た韓国ドラマはイ・ビョンホンの出てたアイリスだけど、当時はカット割りとかシーンのトランジションの粗さ(急に昼から夜になったり)が気になったりしたけど、最近の韓国ドラマは日本を超えているかもしれません。
いまやNetflixが各国の制作会社に直接投資してて、日本国内主要局の合計を遥かに超える金額。Netflixオリジナルの韓国ドラマを見ると、お金掛かってるように思います。
◆日本コンテンツの魅力を奪っているのは?
元々日本の映画制作って黒澤明や小津安二郎を始めとしてグローバルでも高い評価をされてて、決して映像コンテンツ制作力が低いわけではないのだけど、残念ながらテレビ番組を中心に劣化が進んでる気がします。
・放送クール
日本の地上波テレビ局の慣行として、ドラマとかは3ヶ月1クールの構成になる訳だけど、この慣行が足かせになってる事は否めない。オーディエンスもそれに慣れてるので小説とかがドラマ化されても過大な期待はしていないのかも。
特に近年ではリスクを避けるために漫画とか小説でヒットの実績のあるものをベースに制作する事が多いので、それを3ヶ月に押し込むために大事な要素を失うこともある。
最近韓国ドラマを見ていると、1シーズン16話くらいの構成で、さらに1話1時間を超えているので、コンテンツボリュームで差をつけられてしまう。
典型的な例は梨泰院クラス。よせばいいのにテレ朝はリメイク版を制作してオリジナルは70分16話のストーリーだったモノを日本では六本木クラスとして約50分13話に納めたので、品質低下は必然。あのストーリーにトニーは絶対必要なのに。
過去にも24 JapanとかSuits/スーツとかの米国ドラマをリメイクして、スカスカのコンテンツを制作した失敗が活かされていない感があります。
・消えた暴力とエロス
PTA的なクレーマーや、コンプラなんだかんだで暴力やエロスは地上波から消えました。
元々テレビなんてものは見たい人が自身の選択で見るもので、気に入らないなら見なければ良い。
オーディエンスはテレビに非日常を期待していて、それ無しでは普段の生活シーンと変わらない。色々規制のうるさい米国ですら普通にドラマでセックスがテーマになっています。制作に自由がないと魅力は激減。
・覚悟が足りない
圧倒的に制作費が足りないのは確かですが、やり切ろうという覚悟が足りないのも事実。幽遊白書(後述)とかは分かり易い例で、もっと長い構成にすることは可能だった筈だけど、無難に短くしてしまったせいで、続編を作りたくても作れない結果に。幽遊白書は未来を絶たれてしまった。長編アニメを映画化して失敗する例の典型です。
◆オンデマンドで復活してる国産コンテンツ
最近Netflixで配信された日本コンテンツには、地上波にはない素晴らしいものもあれば、オンデマンド配信なのに、なぜか地上波的な制約に縛られたコンテンツもあるような気もします。
今後も色々予定されているけど、やはりポイントは長さ(尺)ではないかと。
長めの映画なのか?短いドラマなのかで成否が決まるような気がします。
個人的な感覚ですが、仮に5〜6話で終わってしまっても、それが長い映画と評価されれば充実していて、短いドラマとなれば物足りない。
長編作品を元にするのであれば、物語の本質を最後までやり切る覚悟があるかどうか?それこそが原作に対するリスペクトだと思う。
米国のように、一つの作品に7年10年関わる役者を育てられるか?が大事。
◆国産コンテンツレビュー
あまり恋愛モノとか見ないので偏ってますがNetflixオリジナルのレビューです。
地面師たち:
これは長い映画として成功している。地上波から消えた暴力、実際に見聞きしてきた地上げがテーマというのが分かり易い。
トヨエツ扮するハリソン山中が、北村一輝を踏み殺すシーンとかは、地上波ではあり得ないくらいぶっ飛んでる。
極悪女王:
これは良かった。個人的には主演女優が好きではないけれど、脚本、演技ともに良かったし、最後は涙しました。
これまた地上波であり得ない凶器攻撃からの流血シーンが満載。実際にあった女子プロレスの歴史が、当時のファンの心を揺さぶったのは間違いないです。
サンクチュアリ-聖域-:
秀逸な作品。角界の内実を暴露するコンテンツ。演者達の身体作りから、ガチなぶつかり合いまでディテールに富んだ創り。日本の文化である相撲業界の闇と政治を詳らかにして海外でも評価を受けるのは納得です。
業界の裏事情として、語られる可愛がりや付け人による下の世話まで、よく相撲協会がOKを出したなと。役者陣についても、有名どころに固執せずに構成されているのが好感度高いと思います。
幽⭐︎遊⭐︎白書:
映像的には高い評価を受けた作品ですが、あまりにも短いドラマ。おそらくオリジナルの漫画ファンには物足りなさを感じさせたのではないか?
冒頭の主役が交通事故に遭うシーン、おそらく監督は、これが撮りたかったのだろうなと思わせるディテールに富んだもので、全体を通してアクションの評価は高い。でも、これは本当の幽遊白書ではないという感あり。
もっと長い構成にすることは可能だった筈だけど、覚悟を決めれず結局無難に短くしてしまった。まだシリーズモノにしておけば、後が続いたものを、今回の構成では完全に退路が絶たれてしまって作品は終わり。せっかく海外でも高い評価を受けたけど後がない。
いち原作ファンからすると、あまり原作にリスペクトがない作品。
忍びの家 House of Ninjas:
実際に存在したかどうか分からないけど、日本のキラーコンテンツである忍者が現代の日本で国の機関として活動する話。これも長い映画として秀作で続編が期待できる作品。
この手の歴史/童話絡みファンタジーは米国が得意でGRIMM/グリムやキャプテンアメリカなど多くの作品があります。
全裸監督:
AV界の奇才村西とおる監督の半生をテーマにしたドラマ。いまや地上波から消えたエロス満載。
頭のネジがブッ飛んだ監督と女優、時代考証から役者の選定までディテールを捉えた作品です。
渋谷や歌舞伎町の撮影セットは実際の街並みが詳細に再現されていて、当時を知る人には刺さります。
山田孝之が素晴らしい俳優であるのは周知の事実だけれども、黒木香を演じた森田望智のぶっ飛んだ演技は、本物と見間違う程。
さあ年末年始は何をみようか?