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マイナ保険証のなにが問題なのか?

難しいことを誰にでもわかるように簡素化するシリーズ。テクニカルな背景や難しい専門知識は省いて、なにが不便なのかを考える。

色々語られているマイナ保険証の話なのですが、簡単に言えば

  • パスワードか顔認証での運用が難しい

  • 最新情報へのアップデートが遅い

  • 個人情報の紐づけが怪しい

あたりではないでしょうか?

1.パスワードと顔認証
 カードに紐づけられる個人情報を守るためにパスワードや顔認証でセキュリティを確保しているマイナンバーカードですが、病院に行くのが日々の生活に取り入れられている高齢者、救急車で搬送される重症(?)患者。どちらも共通しているのは、パスワードや顔認証を使いこなせるか疑問。
 実際に医療機関でも、救急に駆け込んでくる患者や救急車で搬送されてくる患者は、パスワードを覚えていないかそもそもパスワードを入力できる状態ではない人も多い。パスワードが分からない時のための顔認証も、救急車で搬送されストレッチャーにのせられている患者には使用不可です。
 その結果として医療機関では保険証の内容が確認できるまで支払いを保留にしたりしており、これは院内事務の負荷増大や患者が再度病院に支払いに来る手間を発生させています。

2.最新情報へのアップデートが遅い
 政府系の広報CMで語られるメリットの一つが”毎回問診表を記入しなくでも大丈夫”というのがありますが、これは全くのウソです。医療の現場で医師が必要とする情報は”今”の患者の状態であって、昨日でも一昨日でもないのです。
 だから2日連日の救急搬送であっても毎回問診表を記入させているのです。これは同日2回目の救急搬送でも同じです。
 現時点での状況からは、患者の情報(既往症、処方薬等)がマイナ保険証に反映されるには数ヶ月かかるでしょうし、仮にアップデートが早くなっても実際の診療に十分な情報はマイナ保険証には存在しないのです。

3.個人情報の紐づけ
 早くから指摘されている別人の情報がマイナンバーカードに紐づけられてしまう問題。総務省と厚生労働省といった複数の官僚組織が関わっており、各省庁間の調整が上手くいかないのは当たり前。今後はマイナ運転免許証関連で公安委員会も絡んで来るわけで、様々な情報を一括管理するための巨大インフラを作ろうとしている訳です。ここに税務情報とか戸籍情報なんかが加わって来るとさらなる混乱が発生するのは至極当然でしょう。

 あらゆる情報を一括で管理すること自体は悪いことではなく、アメリカのようにソーシャルセキュリティーナンバー(社会保障番号)で税務から初回保証、銀行口座の開設等まで効率的に運用している事例もあります。
 ただし日本の場合では、それぞれが排他的な複数の官僚組織が個別のシステムを提供している訳で、これを1本化するのは現実的ではないかもしれません。5年かかって実現できるのであれば取り組む意味があるかもしれませんが、10年かけて議論をするのであれば諦めるのも経済効率を考えれば正しいです。だって、保険証も免許証も現在の仕組みで困っていることは特にないのですから。


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