マンガ読みの年中休業うつらうつら日記(2022年8月20日~8月26日)
マンガ友達のミセスAが遊びに来てくれました。限られた時間でたくさんマンガの話をして、とても楽しいひとときでした。東京都のコロナ新規罹患者数は減っていますが、まわりの話を聞いていると数字が必ずしも正しいとは思えません。ホントのホントはどうなってるのかなーと心配になりながら、できることはあまりないので普通に過ごしています。私の普通は「ほぼ外出しない」なので、今はこれでいいんだと思います。
22年8月20日
毎週くらぶのZOOM飲み会で会ってしゃべっている長老には、娘さんが2人いる。
たまたま2人とも今はダンナさんの仕事について行って海外に行っている。
昔はなかったけど、「配偶者海外勤務同行休暇」という制度が当たり前になってきているようだ。
下の娘さんが一時帰国しているそうで、ひと月ほど長老の家、娘さんにとっては実家に滞在するんだって。
「え、今、いるの?」とみんな色めき立った。
「風呂に入ってる」とすましていた長老だが、顔がゆるみっぱなし。
よっぽど嬉しいんだろう。
しばらくして「もうお風呂から上がった?」と聞いたら、わざわざPCとは別にスマホでZOOMに入って、エプロン姿で洗面所や台所をお掃除している娘さんを映してくれた。
主婦業を休んで実家に帰っているのに、しかもお風呂上りなのにひとり暮らしのお父さんの家を掃除してくれるなんて、できた娘さんだ。
うちの息子なんて泊まりに来たら散らかすことしかしないぞ。
長老んちの奥さんは十数年前に亡くなっているから、娘さんたちが家事をしておうちを支えて来てくれたんだなぁ。
「まあ、飲め飲め」と誘う長老の隣にちょこんと座り、娘さんは我々ともたくさんお話ししてくれた。
ここもうちのとは出来が違う。
こないだZOOMやってる時に泊まりに来たから「母さんたちのお友達に挨拶する?」と聞いたら首を横に振っていたもんな。
「芸人が顔出し嫌がっててどうする」とZOOMの向こうから遠慮なく言われて決意を固めたか、一緒に画面に入ってくれたが、なぜかそのとたんにノートPCのWi-Fi状態が悪くなり、落ちてしまった。
息子はなんか魔法を使ったんだろうか。
再起動せねばならずすぐには復帰できなかったので、息子の挨拶はうやむやになってしまった。
皆が口々に娘さんに聞く、
「お父さんはどんなお父さん?」
「どんなことをすると叱られますか?」
「同じことを何度も言いませんか?」などの質問に丁寧に答えてくれた。
明るくて可愛くて、そつがない。
長老がよく、
「オレがヤクザな商売してるから(と言ってもプログラムの会社社長だった)、自分らは固い仕事について固いダンナを見つけたいと常々言っていて、その通りになった」と言ってたんだが、親が固い仕事過ぎると息子が柔らかくなってしまうケースも考えると、子供たちは親を反面教師として見ているのだろうか。
亡くなったお母さんのことはまったくタブーではないらしく、ミステリが好きだと言う娘さんに宮部みゆきを勧めたら、
「あいつが好きで、たくさん持ってたぞ。本棚に入ってる」と長老が教えていた。
つらい時期を乗り越えて来て、絆の固い親子なんだろうな。
「お姉さんとは仲良しですか?」と聞いたら、
「とっても仲良しです。よく女子トークしてます」と楽しそうに語っていた。
それもまたうらやましい。
私は姉とそんな話をしたこともないし、そもそも話が合うと感じたことがないもんだから。
きょうだいと仲が良くて話が合うってのは、さぞかしいいものなんだろうね。
「一族みんなのんべえだ」と長老が言う通り、娘さんも強くて、父の勧めるグラスをぐいぐい空けていく。
長老はもう嬉しくて嬉しくて、「頬がゆるんでおります」と自分で言うほどで、普段の5倍ぐらい好々爺になっていた。
「ではそろそろ寝ます。皆さん、ありがとうございますー」と娘さんが去ってからも長老は酔って倒れるまでZOOMにつき合ってくれ、亡妻のことを思い出したか盛大にのろけていた。
仲のいい親子を見るとほっとするね。
世代のせいもあるかもしれないけど、我々は自分の親たちと話が合わないからなぁ。
ただ娘さんは「私はギャグマンガはあまり得意じゃなくて」と、長老の別荘の壁面を埋め尽くしているマンガを読んだことがないそうだ。
「すごいなーとは思いますけど」って。
あれだけあるマンガを読まないってのももったいない話だね。
うちはむしろ息子に教えられて最近のマンガを読んでいるし、息子も我々の買うマンガを楽しんでるよ。
1人また1人と落ちて行って、最後は長老が寝ちゃったからせいうちくんも寝るそうなんで、私も寝た。
今日は朝早起きする必要はないと言うものの、あいかわらず会議が入っている。
日頃が朝から晩まで会議なので、かなり人事不省になって寝ていたせいうちくんだった。
夕方からの会議が終わったタイミングで息子のコント配信を観る。
めずらしく時間通りに始まったので驚いた。
プロとして進歩してきたというか、最低ラインにようやく到達した感じだ。
彼らなりのスタイルも構築しつつあり、頼もしい。
インプロって本当に不思議で、たった今もらった「お題」が千変万化して思いもよらぬ方向に伸びていく。
これまでなら「ここでオチだな」と思ったところからさらに第二形態になった話が続いたりもする。
脚本がなくて「もらったお題でいきなりコント」ってのが配信だとやっぱりピンとこないね。
これはやはり舞台でやりたいだろうなぁ。
今日のマンガはおざわゆき「傘寿まり子」全16巻。
若い頃から細々と書き続け、傘寿を迎えた小説家まり子。
4世代が暮らす家族との軋轢もあり、ついにある日、家出をしてしまう。
若い頃想いを寄せていた男性と同棲生活を始めるも、彼は突然ボケて娘に連れ去られてしまう。
ネットカフェで暮らすうちにゲームの得意な老女友達ができたり、かつての人気女流作家のゴミ屋敷を片づける羽目になったりするうちに、文芸雑誌の紙面刷新のため「切られて」しまう。
そこで彼女が考えたのは「ネット上で雑誌を作る」ことだった。
仲間たちの協力でなんとか創刊にこぎつけ、やがてアパートで飼っていた猫との触れ合いを書いた作品が大きな賞の候補になり、彼女が受賞の有無を待つパーティー会場に選んだのは…
老人でも好きなことを続けていい、人の評価を気にせずに自由に生きていい、と訴えかけてくれるハートウォーミングな作品だった。
私は何歳までこの日記を続けられるだろう?
22年8月21日
会議の合間に買い物に行った時、せいうちくんが近くのケーキ屋さんに連れてってくれた。
自転車で走り回ってる時に発見したらしい。
種類こそ少ないがおいしそうなショートケーキなどが並んでいた。
せいうちくんは桃のショートケーキが好きなのになくなっていて、代わりにラズベリーになってて、少し悲しそうだった。
私はスポンジケーキよりチーズケーキやチョコレートケーキに目が行く。
いかにもねっとりとしたテリーヌショコラという商品は4センチ×8センチ×20センチぐらいの長方形1個で3千円近くする。
「6つに切ったらひとつが5百円以上!?」とさすがにあきらめて帰った。
今度息子が来る時にでも買っておいてやろうかな。
でも私のことだから、きっと「これ、ひと切れ5百円以上するんだよ!」と言ってしまうだろう。
そして息子のことだから、「たかがケーキにそんなに金かけてどうすんの?」と口には出さなくても表情で雄弁に語るだろう。
焼き菓子も豊富だが、大好きなフィナンシェは置いてない。
ドーナッツやマドレーヌはあった。
マドレーヌがプレーンだったら買うんだけどな、紅茶の茶葉が入ってるみたいだ。
好きか嫌いか、食べてみないとわからない。
いつか買って試してみよう。
誕生日なので、日付が変わると同時に「何か言うことない?」とせいうちくんに聞いたら、少し考えてからぱあっととても嬉しそうな顔になり、「お誕生日おめでとう!ひとつ年上のうさこだ!」と喜んでくれた。
誰よりも早い「たんおめ」をありがとう。催促されてからだったけどね。
今日のマンガは遠藤達哉の「SPY×FAMILY」既刊9巻。
任務として超重要人物が唯一現れる名門学校への潜入を命じられ、そのためには「1週間以内に結婚して子供をこさえ」なければならなくなったスパイ「黄昏(たそがれ)」。
孤児院でなんとか知力の高そうな女の子をゲットしたが、彼女は実は人の心が読める。
たどたどしい意識で必死に考え、引き取ってもらうために彼の頭の中を読んでクロスワードパズルを解いたのだった。
さらに入学には父母面接が必須と知った黄昏はたまたま知り合った女性に「面接時の妻のふり」を依頼するが、その女性はなぜか凄腕の殺し屋。
互いに利害の一致する3人はそれぞれ正体を隠したまま家族の役割を担い、秘密の実験によって異常に知能が高くなり予知能力を持つ犬まで飼うことに。
3人と1匹の少しずつズレた考えからくり広げられるコミカルな「FAMILY」の物語。
娘アーニャの可愛らしさに人気が集まりアニメにもなり「ちち、かっこいい!」などのアーニャbotも発生した人気マンガだ。
22年8月22日
63歳の誕生日。
FBやLINEで何人かのお友達がお祝いを言ってくれた。
中には昔不義理をしてしまって気まずかった人もいて、謝る機会が今後ありそうでよかった。
Messengerが開通し、「お久しぶりですね。お元気そうで何よりです」と言ってくれたのをきっかけに、まだ謝るところまでは行ってないけどかなり関係が修復できた気がする。
そのうちいい落語のチケットでも取って、お詫びをしようかな。
しかしせいうちくんを含めてプレゼントにクラブハリエのバームクーヘンをくれた人はいなかったので、最近彼が見つけて来て紹介してくれたケーキ屋さんに自分へのプレゼントを買いに行ってみた。
たいそう高価なテリーヌショコラなるものを売っているのだ。
こないだ見に行った時はさすがに買う気になれなかったが、誕生日だったらせいうちくんも許してくれるだろう。
幸いやや涼しかった。
それでも自転車でよいしょよいしょと漕いで行ったのに「今日から3日間お盆休み」と知った時は愕然として「orz」ってなったよ。
昨日のうちに買っておけばよかったのか!
後悔先に立たずで、仕方ないから1本213円もするクラウンメロンアイスバーを買いに行ったんだが、そちらももう商品入れ替えがあったようで置いてなかった。
やはりスーパーのアイスバーとしては高価過ぎたのか。
「せいうちさんにお祝いしてもらえてるんでしょうね」という大方の予想を裏切って、彼は仕事に追われて普段より寝るのが遅かったぐらいだ。
これが近いうちに終わらないと、私はどうかなってしまいそうだ。
唯一よかったのは、息子に「誕生日だけど父さんが忙しくてお祝いもしてくれない」とこぼしたら、「僕とカノジョからお花が届くよ!おめでとう!」と返事をくれたこと。
届くのは数日後になるようだが、若い2人がお花を送ってくれるなんて、とても嬉しい。
これまで息子から花をもらったのは大学生の時、「母の日」に突然カーネーションを1輪買ってきてくれたのだけだった。
ゆっくりだけど成長してるね。
カノジョから、開通したばかりのLINEを通して「誕生日おめでとうございます!」を言われた。
しかも出だしは「お母さん」。
私のこと、お母さんって言ってくれる人ができるんだ。
娘からはついに聞くことのなかった言葉を、もうじき娘になってくれるかもの人からかけてもらえた。
嬉しくて泣いちゃいそうだ。
せいうちくんは娘が生まれた時に「この子が『ぱぱ』って言うまでタバコをやめる」と宣言して永久禁煙になった。
「カノジョが『お父さん』って呼んでくれたらタバコでも吸ってみる?」と聞いたら、
「いや、それは違うから吸わない。でも、きっと嬉しいだろうねー」とぽーっとなってた。
未来のことを考えるのが楽しいのはお互い久しぶりだ。
夜中まで会議をしてせいうちくんがばったり寝ちゃってから、あんまりヒマだったからネット上活動中らしいGくんをMessengerで呼び出してZOOMに誘ってみた。
これが思いのほか長引いて、黒霧島のシークワーサー割り2杯とコーラ割りを2杯、そこで焼酎が尽きたので赤ワインを1杯飲みながらずっとしゃべってた。
もう終わろうね、と話してたら切れる寸前にGくんが「オマエは口が軽い!」と言ってぷつっと終わっちゃったので、あわてて「間際に怒らせるから入っちゃったじゃないか!」とメッセージ打って、ZOOM部屋で待ってたら戻ってきた。
「口が軽いってどういう意味?」
「言ったとおりの意味だ。オレは、オマエに言ってることはいろいろあるが、それを全部せいうちにしゃべってる、しかもオマエもせいうちもその時いなかったヤツの前でも言う。オーレはオーマエに言ってるのであって、せいうちからまで言われるこっちゃないぞ!」
「外に出したとたんに人の共有物じゃないの?」
「オマエは、日記に書いてることをオレが読んでFBに書いてもかまわんのか」
うーん、一瞬考えたが、義弟がGくんの友達になってて日記の存在を知ることになってもそれは恨むまい。
人に知られて困るようなことは考えてないつもりだ。
「だけど口が軽いと思われるのはイヤなのか。『怒って』戻ってきたんだろ?」と言われる方が困るかも。
「思わず怒ってるって書いちゃったけど、自分のありのままを言われても怒らない方がいいと思ってる。人からどう見えるかは正確に知っておきたい」
「だからって他のヤツらにまで押しつけるな。オマエにどう見えるか、みんなが知りたいわけじゃない。オマエは、『しつこい』んだよ!」
おおお、「口が軽く」て「しつこい」。
大変な言われようだが、確かに覚えのある性格だ。否定はすまい。
「これからもう、オマエには何も言わん!」
Gくん、それはつまらないよ。
まあ夜中に5時間も、しまいにせいうちくんが目覚まし時計で起きてくるまでおしゃべりにつきあってくれたんだから、文句は言うまい。
そして、これからGくん自身の秘密や他の面白い話が聞けなくなるのは少々ガマンしよう。
今日のマンガは星野之宣の「日本のいちばん長い日」上下巻。
原作は「昭和天皇物語」(能條純一作画)も書いている半藤一利。
なぜか昭和天皇ブームなのか?単に半藤氏が活躍してるだけ?
日本の右傾化の表れかもしれないし、近年皇室への崇敬が下がっていると誰かが判断したのかもしれない。
「ミッチーブーム」世代がだんだんいなくなり、今上天皇夫妻は目立たず皇嗣一家の評判はだだ下がりの現状をどうにかしたいのか?と勘繰りたくなる。
私自身、同い年の今上天皇をどう思っていいのかよくわからないよ。
ひとつ確かなこと。
星野之宣は「昭和天皇」を可能な限りインテリ美男に描いているぞ!
能條純一版昭和天皇よりカッコいい。
22年8月23日
せいうちくんの会議が遅くまで続いたので、寝る前もほとんど話す時間がなかった。
しかし、「これじゃもう、爆発しちゃうよ」と訴えたらちょっと真面目になって30分ほど話してくれた。
「仕事辞めようとか思わないの?」と聞くと、
「老後のお金が心配だからねぇ。それにいきなり辞めるわけにはいかないし」と煮え切らない。
「お金の心配って、いったいいくらあったら安心なの?我々程度の貯金で少しばかり増えたって不安はいくらでもついてくるよ。Gくんがよく言ってるように、『ある金で暮らす』しかないじゃん」
「そりゃそうだけど」
「あなたが思わぬ出世をしたから予想してたよりお金あるよ。本来、偉くなるはずなかったって言うなら、やっぱりその収入内で暮らさざるを得なかったわけでしょ?今、生活が贅沢になってるわけでもないのに収入が増えたんだから前よりずっと安心じゃない」
「でも急には辞められないよ」
「辞める気がないだけじゃないの?こないだZOOM飲み会で『辞めたいんだけど、辞めさせてもらえない』って言ってる人に、『辞める気がないんじゃないの?』って言ってたけど、あなたもおんなじに見えるなぁ。いやいや、サラリーマンってのも業の深い病だねぇ」
「うっ…そう言われると…辞めたあとの自分が想像つかないだけかも…」
なにしろせいうちくんより4歳年上で、しかもあまり健康体でもないのだ。
膝の軟骨はもうすり減り切っていて、これ以上傷んだら人工関節を考えようと言われている。
心臓も今は薬でブーストアップしてるけどいずれは薬を増やさないといけなくなるだろう。
そんな状態でせいうちくんがいわゆる定年である65歳まで勤め続けていたら、69歳になっちゃう。
2人でゆっくり楽しむはずの「黄金の10年」の終わり半分ぐらいはもう寝たきりでいたいと思ってるかもしれない。
ちょうど派手に遊ぼうと思ったとたんにコロナがやってきて、花火クルーズ、名古屋での同窓会、京都旅行、年越しクルーズなどを楽しんだと思ったらいきなりすべてがぶつっと切れた。
クルーズは行っておいてよかったと思ってるし、そのまま可能だったら元気なうちにあちこち行く気になっていた。
でももう気力が途切れちゃって、この先旅行をしている自分が想像できない。
新宿ぐらいまで出るのでもすごい決心がいる。
そのへんを縷々訴えたので、せいうちくんも少し考えると言ってくれた。
地位や名誉にこだわるタイプならこだわらせてあげるけど、本人がそういうものにはまったく興味がないって言ってるんだから、もう辞めたっていいじゃん。
どうせいつか必ず辞めるんだしさ。
会社員を7年やって辞めて、それきりほぼ働いてない私にはわからない境地なんだろうなぁ。
だけど、自分の生活も大事にしないと何のために生きてるかわかんないぞ。
せいうちくん自身もお父さんを見ていて「80歳過ぎたら必ずボケる」って思ってるんだから、それまでの時間が有限だってもっと考えた方がいいと思う。
6年ぐらい前にイタリアに行った時、リタイア組が大勢いて、皆「70歳過ぎたら旅行とか行く気力も体力もなくなっちゃうから、今のうち!」って言い合って毎年のように海外旅行をしてるっぽかった。
このままだと私の60代はどこにも行かずに終わってしまう。
それはちょっと寂しいね。
いつか必ず行こうと約束してた「世界一周クルーズ」は、いくら何でもお金がかかりすぎるのと上陸してオプショナルツアーに行かないとあんまり意味がないから、体力なくなってたら行けない。
3カ月はちょっと長すぎる気もする。
せいうちくんは40日のオセアニアクルーズの方に惹かれてるみたい。
それだったら費用は半分以下に抑えられるから、よけい老後の心配をしなくても大丈夫だよ。
自分自身いっときとても熱心に計画を立ててみてた「シベリア鉄道の先まで鉄道に乗ってウィーンまで行く」旅、ここ数年、もう無理だと思うようになった。
たったの6年ぐらい前までは気力があったけど、今はもう途中で降りて宿でお風呂に入ってると1日おきにしか列車が来ないので2泊せざるを得ないとか、食堂車は非常にお粗末だがお湯だけはふんだんに出るそうだからカップラーメンやサトウのごはん、レトルトのカレーを持っていけばいいかも、とか考えてたのももう無理。
旅はゆとりをもっておいしいものを食べてある程度快適に過ごしたい。
そもそも世界情勢は再びシベリア鉄道に安心して乗れるところまで戻るのだろうか?!
コロナが流行るとも思ってなかったし、ロシアが戦争始めるとも思ってなかった。
先のことはわからない。できる時にできることをしないと後悔しそう。
せいうちくん、私が明日コロナで倒れて重症化したと想像してみて、仕事を早く辞めておけばよかったって思わないかね?
今日のマンガはアニメ脚本家岡田麿里原作・作画絵本奈央の「荒ぶる季節の乙女どもよ」全8巻。
男女共学の高校に女子ばかりの文芸部がある。
部員は5人。エロい純文学小説を音読しては「エロス」から逃れられない自分たちについて思いを巡らせる日々。
部長は特に「純潔」「不純異性交遊禁止」と大書してしまうようなカタブツだ。
ある日、あまりに自分たちのまわりにある「SEX」という言葉が許せなくなり、しかし文芸活動を続ける中でその言葉を避けることは不可能なので、と部員全員で「SEXに代わる言葉」を考えることに。
「アンダー・ザ・B(Bの次)」「種まき」「さすまた」「性戦」「サクセス(成功=性交)」「サックス」「シックス」「ソックス」などの親父ギャグ的な呼称が並ぶ中、部長が提案したのは「性的愚者の怨嗟の罰」。
1人の部員が「長すぎるから、頭文字をとったらどうでしょう。SでEで最後は思い切って×(バツ)!」と提案して、結局「SEX」になるのにげんなりした彼女たちが考え出したのが「えすいばつ」。
えすいばつ。
これはエロい。えっちい。乙女的で官能的。
全編、そんな乙女どもの性を前提とせざるを得ない恋愛事情の集中豪雨だ。
あー、高校生は純真でエロい!
22年8月24日
心療内科の定期通院。
今回もせいうちくんの多忙に巻き込まれて何も考えられなかった。
「『なんでせいうちさんが忙しいとあなたまで忙しくなるの?』と友達に言われるほどです。思っていた以上にお互い依存し合っていて、単体でのそれぞれは存在していない気がします。今、頭の中がぎっちぎちにふさがっていて何も思いつかないので、何か質問してみてください」とドクターに頼んでみた。
「息子はどうしてんの?」と聞かれた。
「あ、そうです、息子です。誕生日にカノジョと一緒にお花を送ってくれたそうです。まだ届かないけど楽しみです!それに、私のお古を直したものですが、今週末にカノジョの誕生石の指輪がサイズ直しできてくるので、息子に取りに来るよう言ってあります。それを渡してカノジョにプロポーズするつもりみたいです。2人が好きな沖縄で式をするよう提案したら乗り気です。仕事も頑張ってパフォーマンスパブの運営をしたり劇団のADをやったりしながら自分たちのコントの配信をしてます」
「いい話じゃない!いい話だらけだよ。今どき、こんないい話はなかなか聞けないよ」
「そうですね。嬉しくなってきました!」
「ちょっとプライベートなことを聞くけどさ、息子は子供はどうするつもりなの?」
「欲しいって言ってますね。『お母さんたちが思っている以上に僕ら若い世代は世界に絶望してるんだよ』って言われたんで、『その絶望の中でどうして子供が欲しいって思えるの?』って聞いたら、『難しいだろうとは思うけど、やっぱり欲しいんだよね』だそうです」
「素晴らしい!あなたは自分がお母さんとうまくいかなかったから子供との関係がおかしくなるんじゃないかと心配してたけど、全然大丈夫じゃないの!息子は夢と希望をもって前向きに進んでいるよ。いいじゃない!サポートしながら見守ってあげなさいよ」
「はい、そうします!」
と、かなり元気が出た状態で診察室を出てきた。
コロナやせいうちくんの仕事で心がぎゅっと押し込められた状態だけど、けっこう希望があるもんだ。
先生、励ますのうまいな。さすがプロ。
その勢いのままブックオフに行って、ちょっとした狩りをする。
友人Kちゃん言うところの「断頭台に行くのを待つ棚」である図書館のラックみたいなやつがもういっぱいなので、来週はもう少し自炊をしよう。
最近スキャンを綺麗に取りたいあまりにページ送りの最中もずっと画面を見ていて、読み取りのガラス面に汚れがついてベタの部分に線が入ったりすると中断して、キムワイプにアルコールをスプレーしたもので熱心に拭いて、取り直したりしている。
せいうちくんが言うには、
「製鉄所でできあがった鉄の表面に傷がないかどうかチェックする仕事があるんだけど、それやってる人みたいだ。少しの傷も見逃さないように流れてくる鉄をずーっとにらんでいるのにそっくり」なんだって。
今週はついに雲田はるこの「昭和元禄落語心中」を全部買い直して、とりわけお気に入りの作品としていつもの1.5倍増しの美しい画質で完成させた。
ところがびっくり、2年前、まだ新しいスキャナを買っていない頃よりデータの量は少ないのだ。
平均350キロバイトぐらいで取れてたのが、280キロバイトほどになっている。
両方iPad proに入れて、見比べてみた。
線は新しい方が繊細に取れていると思うのだが、なぜバイト数に違いが出るのだろうか。
しばらく頭を悩ませていて、どうやら地の紙の色も情報に入っているのではないかと思い至った。
10巻そろいが安いものだったのか、古いセットはけっこう日焼けして地が黄味がかっている。
この色の情報が余分に入り、バイト数的には大きくなっているのかもしれない。
見た目が綺麗なバイト数的には小さい方を選び、残しておくことにした。
「宇宙兄弟」や「大奥」も110円のがたくさん拾えたので、取り直してまた読み返そう。
ベタがくっきり出てるスキャンを読むのは本当に楽しい。
今日のマンガは今は亡き上村一夫の「ゆーとぴあ」全9巻。
原作は梶原一騎の実弟としても名高い真樹日佐夫。それにしてもみんな死ぬねぇ。
銀座で男たちの憩いの場である小さなバー「ゆーとぴあ」を営む綾ママのもと、チイママの千賀子をはじめとして日米ハーフのスージーと郷里を振り切ってこの世界に飛び込んできた遥が働く。
銀座のバーってどんなところなのかもちろん全然知らないんだが、高いお金を払って露出が多いわけでもない女性となぜ酒を飲むのか。
昔ながらの銀座にはそういう魅力があったのか、いや、もしかして今でも銀座にはキャバクラでなくそういう店がたくさんあるのか。
人情に篤いママには昔からの馴染み客が大勢おり、中には大きな企業の社長クラスも。
人情の機微、男女の駆け引きを楽しみながら美味しく楽しくお酒が飲める模様。
原稿が終わる前に急逝してしまったので、最終巻の半ばあたりからは小説形式になっている。真樹日佐夫が書いたんだろうか。
ページが余ったのか、短編「寄生木」が掲載されている。
いわゆる「昭和の香り」がただよう名作を多数描いた上村一夫だが、どうしてもだんだん絵が浮世絵的に「斜め」になっていくなぁとあらためて思った。
22年8月25日
せいうちくん、なんと3週間ぶりの出社。
あまり遅くならずに帰る、って言っても帰ったらまた会議があるんだよね。
実際、会議しながら帰ってきた。
玄関入りながら大声で何か言ってる時はイヤホンつけて参加してるんだよ。
最初のうちは大声で「ただいまー!」って言ってるんだと思って、「おかえりー!」って出迎えちゃったけど、「いやいや」って顔して耳を指さすのは会議中ってこと。
間のいいことに20時からの大会議前に1時間半ほど空きがあったので、一緒にごはん食べられた。
息子たちの先日の配信コントがアーカイブになってるのを観ながら。
親は何回観ても面白いんだけど、やっぱりまだまだ冗長だったり磨き上げることはできそう、とか思う。
好きで好きでやってるのがあらためてうかがえて、そこは嬉しいね。
仕事にするのは大変だと思うけど、一歩一歩進んでいってもらいたい。
「売れたい」わけではないそうだけど、そう聞くとなおさら食べていくのは難しいだろうと思ったり、まあ何をやっても食べては行けるだろうし、と思ったり。
夜、息子たちからのお花が届いた。
ひまわりと南国の花っぽいピンクの不思議な花を合わせたアレンジメントで、とても夏らしい。
若くて懐に余裕のない2人に無理をさせてしまったなぁとは思うものの、嬉しくてたまらない。
お手紙がついていて、2人とも心のこもった文章を書いて誕生日を祝ってくれた。
特にカノジョの「お母さんに会うと必ず楽しくて、嬉しい気持ちになります。お母さんの笑顔が大好きです」というくだりでぽろぽろと泣いてしまった。
お母さん、と呼んでくれる人がいて、大好きだと言ってくれて、本当に本当に嬉しい。
彼らの幸せな未来を夢み、望んでいる。
結婚って、家族が増えて幸せな場合もあるんだなぁといまさら思うよ。
今日のマンガは青池保子の「ケルン市警オド」既刊6巻。
ややこしくて恐縮だが、「アルカサル-王城-」の主人公であるカスティリヤ国王ドン・ペドロが「修道士ファルコ」の第1巻に出てくる。
わけあってトンスラ(頭の上部を剃ること。ザビエルみたいな髪型)にできない修道士のファルコ。
修道僧仲間に、俗世にいた時は警吏だった過去を持つ者がいた。
薬草に詳しく、事件があるとついつい背後関係を推理してしまい、「いかんいかん、俗世のことは忘れなくては」と反省する彼こそがこのスピンオフの主人公「オドアケル・ショルツ」である。
14世紀半ばのドイツ屈指の大都市ケルンで警吏を務めるオドは、薬草の知識と推理力、探索力によってさまざまな事件を解決する。
青池保子のキャラとしてはエーベルバッハ少佐の先祖に見えるが、彼よりはオドの方が人情にもろく融通の利く部分がありそう。
「アルカサル-王城-」全13巻+番外編と「修道士ファルコ」既刊5巻と「ケルン警視オド」既刊6巻、どれもおススメなのでできれば全部読んでほしい。
22年8月26日
忙しい友人ミセスAの来訪が昨夜急に決まった。
この家に越してきてからもう3回目だと思う。
本当に、いつマンガを読んでるんだろうと不思議になるほど母親として主婦として多忙な人なので、遠くから来てくれるのはとても嬉しい。
朝一番で気になっていたケーキ屋さんに行き、テリーヌショコラとおみやげ用のドーナッツをたくさん買った。
自分用にもパウンドケーキとマドレーヌを少し。
11時過ぎに来てくれて、ダンナさんの仕事やお子さんの都合で帰投せざるを得ない12時半を過ぎても名残惜しそうに精いっぱいおしゃべりしてくれた。
せいうちくんの大好きな月餅をたくさんおみやげにくれて、「ヤマザキのですけど」と言うミセスAに、「いえ、月餅に貴賤はありませんから」と答える模範的な月餅ファン。
私にもバームクーヘンやマドレーヌをたくさんいただいた。
彼女が「呪術廻戦」を読んだと聞いて私も読んでみたくなったので、その話で盛り上がった。
推しキャラは当たり前のように「やっぱり五条悟でしょう」ときた。
私は「狗巻棘」なんだ。
本当は「メガネみたいなのをつけてるから」って理由で七海さん推しだったのだが、「キングダム」で王騎を推さないのと同じ理由で途中でやめた。(ネタバレか?)
狗巻は「呪いの言葉を発しないように『おにぎりの具』しか言わない。しゃけは肯定でおかかは否定。それ以外は意味不明」なんてところが好き。
マスクじゃなくて襟を立ててるビジュアルもカッコいい。
パンダも板垣巴留「BEASTARS」のゴーヒンさんみがあって好きだなぁ。
何しろ限られた時間内で、しかもミセスAはパン屋で買ったカツサンドを食べ、こちらが出したテリーヌショコラを食べながらだったから、忙しかった。
2センチぐらいに切って出したのだが、見た目の通りとてもねっとりと濃いチョコ味で、これはせいうちくんが最初に言っていた「かまぼこぐらいの薄さでいいのでは」が妥当だったかもしれない。
彼女の息子さんはドイツとドイツ軍とドイツ語が大好きだそうなので、青池保子の「エロイカより愛をこめて」中で活躍するバリバリの戦車オタクなNATOのエーベルバッハ少佐をおススメしておいた。
何ならアマゾンで全巻セットを買ってプレゼントしようかと思ったぐらいなのだが、39巻セットが1万8千円以上するのでびっくりしてやめた。
さすがは「まだ終わってない」シリーズ、人気が高い。
名残り惜しそうにミセスAが帰ったあと、息子に渡す指輪の受け取りに電動自転車で出かける。
平和な王蟲の目のような三連カボションカットのサファイアが並んだ、せいうちくんが買ってくれた中では一番高い宝飾品だ。(婚約指輪が3万円で、それより高い)
家宝と言うには安物だが、奇遇なことにカノジョの誕生石だったので、サイズ直しをして息子とカノジョのイニシャルを刻印してもらうしかない。
「中古だけど、いいの?」と聞いたら、
「古着とか好きな人なんで、大丈夫」って。
「指輪、出来上がったよ」と写真を送ったら明日取りに来るそうだ。
9月中にはプロポーズの話が聞けるかもしれない。
わくわくするなぁ。
今日のマンガはのりつけ雅春「アフロ田中」シリーズ。
高校時代から結婚して子供ができるまで、連載と同じ時間が流れているらしい「高校アフロ」「中退アフロ」「上京アフロ」「さすらいアフロ」「しあわせアフロ」「結婚アフロ」各10巻ずつの全60巻。
息子の大好きな、彼を支えてきてくれたマンガであると最近読んでよーくわかった。
カノジョの指輪のサイズを知るため、寝ている時にそっと糸で指まわりを測るという作業を、息子はこれで読んでやってのけたらしい。
北海道に行ったのも沖縄に行ったのも東北にボランティアに行ったのも、全部アフロに教わっていたのか。
せいうちくんは多忙な中でも毎晩10分ずつ読み進め、なんとか息子が結婚するより先に「結婚アフロ」まで読み切りたいと努力している。
読めば読むほど息子のすべてが「アフロ田中」で出来上がっていると思うのだそうだ。
そうだろう、私もまったく同じ感想を持ったよ。
せいうちくんと「完全アフロ」を共有する日が楽しみだ。