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年中休業うつらうつら日記(2025年2月1日~2月7日)

25年2月1日

2025年の2月最初を飾る今日は、友人男女と一緒に落語を聴きに行く。
年に2回、我々が柳家喬太郎さんのチケットを4枚取って男友達が蕎麦屋を予約してくれて、落語がはねたあとで「蕎麦屋呑み」をするのが恒例なのだ。
年に2回が必ず2月と8月で、正直8月の会は全員音を上げかけている。
自転車で来られるせいうちくんと私はまだしも、さんさんと照り付ける日光の下をやってくる友人たちはずいぶん苦しそうだ。
しかし、喬太郎さんも痛む膝をおして演台付きで頑張ってくれてるのに、こちらが先にまいったするわけにもいかない。

今日の香盤は前座の柳家小太郎が「粗忽の釘」。
まずまず無難な前座噺だ。
続いては御大喬太郎さんの「残酷な饅頭怖い」。
これは新作なのかどうなのか?入り方はまあ普通の「饅頭怖い」なんだが、1人1人が「怖いもの」に遭遇してショック死してしまうし、もちろん「饅頭が怖かった人」もお茶を怖がる間もなく頓死する。
そして誰もいなくなった。ホラーだ。
せいうちくんが「国家機密に触れるんじゃねえのか。饅頭だけに、『あん殺』だぜ」と語るところで全会場に響き渡るほど爆笑していた。
恥ずかしい男だな。「饅頭怖い」に「あん殺」はつきものだろうが。

仲入り後、㐂三郎さんの「あたま山」。
これっていつもシュールでわけわかんなくなるんだよな。
そして大トリは喬太郎さんの十八番と言うか、この人にこれだけはやらせちゃいけなかった演目か、「ウルトラ仲蔵」。
惑星Rでケムール星人と戦っていたウルトラマン、地球のピンチを聞きつけて、ゾフィー兄いが気を利かせて持たせてくれた「2つの命」で復帰し、ケムール星人との戦いで開眼した「スペシウム光線」を縦の輪にして切り付ける必殺技で大勝利。

キングが、ソフィーが、タロウが、ジャックが拍手喝采する中で、キングから直々にお褒めの言葉を頂戴し、「あの技は見事だった。『八つ裂き光輪』と名付けるがよい」とのお墨付きをいただき、
「世の中にウルトラマンは数あれど、お前こそが唯一のウルトラマン、そのままウルトラマンと名乗れる男だ」と褒められてちゃんちゃん。

こう書くと大したことないみたいなんだけど、膝が悪くて演台の向こう側で座布団たたんで胡坐かいてる喬太郎さんがさ、ケムール星人やウルトラマンになり切って、もう高座上でぴょんぴょん跳ね回っての大熱演なんですよ。
終いに膝をやってしまったらしく、「いてっ」って言うのも聞こえてたし。

いやあ、いいもの見せてもらいました。
また次回も来るから、無理しない程度に暴れまわってくださいねー。
なんだか新作を2本見たようなお得感で高揚し、いつも通り蕎麦屋が開く時間まで各人自由行動。
酒と落語を愛する名古屋の友人Cちゃんはこの件にいつも腹を立てており、「落語はもうちょっとはねるのを遅くするか、飲み屋はもうちょっと早く開店するかしてほしい。ビミョーな間が空くのよね、落語とその後の飲み会って」と憤然としているが、我々も常に困っている。

私たちは自転車で先に店の近くまで来てしまい、すぐそばの図書館分館のコミュニティーセンターで本を読みながら休憩。
なぜか大量の雛飾りがあった。
今、文字の本としては「ハリー・ポッター」シリーズを読み直してるところで、何度も読んだのに意外と興奮できる。
iPad miniでも読めるように文庫版を買って自炊したんだが、ハードカバー版では各章の始まりごとに入っているイラストが、文庫版にはなかったので、腹を立てて自分でデータ差し込んでイラスト入り文庫版を作ってしまった。
これでこそ電子の勝利と呼べるだろう。

時間間際になって店の前に行ってみたら、2人はもう来てた。
これが、一緒に行動してるわけでもないんだよなぁ。
いきなり片方が歩き出し、もう片方はバスに乗ってっちゃったり。
図書館レベルに「しゃべらないでください」と謳う喫茶店に2人で入ってるのを見たこともある。
謎めいた人々だ。

お酒は皆さんぬる燗で行きたいらしく、日本酒は飲まない私だけ梅酒ロックを頼んで、皆はざるにてんこ盛りになったお猪口の中から好きなものを選ぶ。
「〆張鶴が実はない」などの混乱は多少起こったが、「こっちも美味しいですよ」と薦められた日本酒を素直にいただく平和な客たち。

つまみはなぁ、ここは何でも美味しくて安いんだが、やはりこの季節、牡蠣ははずせない。
オイル漬けをもらって、あと、馬肉の刺身は「大」でもらおうね。
「ウド」の好きなKちゃんと私が「ウドの酢味噌がけ」と「ウドと赤エビの天ぷら」を堂々とかぶらせながら、最初の注文は終了。
おばあちゃん、ぽそっと「塩辛、あるよ」とか言われたら、頼んじゃうじゃないの!

話題の最初はとりあえず今日の喬太郎さんから入って、全員が心配するのは膝の悪い人があんなやんちゃしてていいのか、という点。
あと、体重を減らさないとね。
私も膝はイカれてるからわかるけど、減量と大腿四頭筋を鍛える、この2つに尽きるですよ。

私以外は親がまだ片方以上存命中で、介護的な話題も少々。
最近、60代老人が集まると必ずその話になる。
長生きの親を看取ったあと、自分たちの「老後」って意外と残ってないんじゃないかと、みなさんうすら寒くなってきているみたい。

それでも一生懸命お母さんのために料理をしているNさんは、八百屋で「ウド」の大袋を100円で見つけたけど、あの量をどうしろって言うんだ!とご立腹だったが、なんで買って、今日持ってこないんだよ!
Kちゃんも私もウド好きなのに。
まだまだ「おすそ分けの精神」に至るほどには主婦道に精通してないね、と冷たく突き放す。

つい先週、お通夜で会ってるわりにはTくんの話題は出なかった。
「あいつがなぁ…俺たちにもいよいよ迫ってきたなぁ」という感想ぐらい。
本当に、なんというか、「彼といれば大丈夫」みたいな安心感がハンパない男だったのだ。
身体がでかいためだけではあるまい。
故人をしのびながら飲む酒は沁みるなぁ。

私が「60歳になった時、自分は絶対小説は書けない、と思ってあきらめた」、と語ると、Kちゃんは驚いたように顔を上げ、
「そんなについ最近まで思ってたんだ!」と言う。
そりゃさ、一応筋トレとしてのブログはもう30年近く書いてるわけで、しかもここ数年は1週間分で1万字を超えるかどうか、というぐらいのボリュームになってるわけで、何でも数えるのが好きなGくんに言わせれば「オマエは月に1冊、新書を書いてる」と言われるぐらいだよ。
「嘘がつけない。お話が作れない。すべてのストーリーは本当に起こったことに限定されてしまう」という致命的な欠点に気づくのに時間がかかりすぎたが、やすやすと嘘を紡いで即興コントを奏でる息子を見て、やっと気づけたんだよ。
もう、自分が死んだら誰も読まない記録としての日記でいいや。
ただ、息子にはデータを渡しておき、彼の子供が(もしいたとして)例えば中1ぐらいで挙動不審になったら、その時期の私の日記を読み返してほしい。
絶対に書かれているキミ自身も同じように挙動不審だ!と気づくだろうと思う。


今夜は比較的早い時間にすでに蕎麦に移行し、そのあともだらだらと呑んでるイレギュラーっぷり。
これはこれで、いいね!
おなかをいっぱいにしてからゆるゆると呑むってのは意外と安心感があるよ。

今日はなんだかKちゃんが無口だったな。
仕事のことでも気になっていたかな(たいてい常に、締め切り間際の仕事を抱えている女)。
3時間ものんだから、これでお開きにしよう。
また、8月の酷暑の日に落語の会で顔を合わせよう。

25年2月2日

今日は節分であるので、本来ならば私がコンビニで買ってきた「恵方巻」を食べるしきたりになっているんだが、今回は金曜の帰りにせいうちくんが「2月の特別フェア」の一環としてかなり高くて大きな(2人で食べてちょうどいいぐらい)の太巻きを買ってきてくれるというので、コンビニのは出番なし。
もちろん太巻きと恵方巻は別もんだと知ってはいるが、だからどうした、って程度にはどうでもいいんだ。

「2月の特別フェア」とは、2月の最後の10日間ぐらいをせいうちくんが仕事を休んでくれて、ひたすらのんびりすごそうという計画のことだ。
もちろん私は色めき立って、
「ガッツレンタカーで軽バン借りて車中泊に行こうよ!10日もあればあれば東北回れるよ!」と提案したんだが、せいうちくん的には、
「年始からいろいろ忙しすぎた。キミも基本、くたびれてて目の下にクマができている。あえて予定は入れないで、ひたすらにテレビの録画を消化する、そんな休日を持ちたい」と譲らない。
それでもなんとか最初の3日ぐらいは車中泊にして、遠くには行けないから大好きなセコマのある茨城に行ってブルーベリージャムパンとHOT SEFのカツ丼を食べまくろう、ってとこまでは譲歩してくれたよ。

それ以外はのんびり、と思っていたらにわかに雲行きが怪しくなってきた。
Tくんの未亡人であるM子さんに「どうしてますか?ちゃんとごはん食べて、眠ってくださいね」と元気づけメッセージを送ったら、「お通夜の時、『四十九日にも集まりたいね』って言ってる人たちがいたんですけど、私と子供たちもそこに混ぜてくれませんか?今は、とにかくマンガ関係の人たちがなつかしいんです」と相談された。

Tくんは東大まんがくらぶの部長を務めるとともに「六大学漫研の会」にも深くかかわっていた。
私はそっちの方とはあまりお付き合いがないのだが、大学の枠を超えて親しくしていた人々がいたのは知っていた。
お通夜でも、「東大まんがくらぶ」からと「六大学漫研の仲間たち」からの2つの花が麗々しく飾られており、「こういうのが2個来ちゃっても恥ずかしくないのがTくんだよなぁ」と感銘を受けたものだ。
実際、10年近く前に故人となられた部員の葬儀で、献花について奥様に事前に問い合わせをしたところ、まんがくらぶからと書くのに多少問題があったことがある。
少なくとも、生前に職場に電話する時は「東大まんがくらぶの」とは言わないでくれ、と本人から言われていたらしい。
けっこうこの趣味を世間に隠して生きてる部員もいるんだ。
昇進した時の社内報のインタビューに「趣味:読書、特にマンガ。愛読書はちばてつやの『のたり松太郎』」と堂々と載せたせいうちくんみたいな人ばかりではないってことだね。

その件はさすがに大学サークルの問題であるから学外部員の私では貫禄が足りず、しかも実際よく知らないんだから、せいうちくんに丸投げした。
それとは別に、下北沢で昔時々行った酒場「レディー・ジェーン」が閉店と聞いていたが、と本気で調べ始めたら、4月にはもうほんとに閉店しちゃうし、なんらかイベントもあるらしい。
まあイベントに行くほどの通でもないから、せめて青春の思い出にグラスを傾けて挨拶してこよう、とMちゃんに連絡を取る。
8年前に亡くなったSちゃんが大好きだった店なんだ。

「閉店しちゃうなら、行っておきたいな」との希望を受けて、
「他に誰か、よく行ってた人いる?」
「Sちゃんかなぁ…」
親友だったSちゃんの死をいまだに乗り越えられずにいるようなMちゃんのため、とりあえず先日会ったばかりのNくんに連絡を取り、ついでにSちゃんMちゃんと仲の良かったAちゃんを誘って、Mちゃん夫妻と我々夫婦と6人で行く算段を立てる。
閉店間際の混雑が予想されるため、グループの1人が先乗りしての「席取り」や「居座り」は遠慮してほしいとWEBページに書いてあるから、全員集まった状態で、運を天に任せて突入するしかない。
比較的すいていそうな木曜で、多忙なAちゃんが来られるかもと言ってる20時半に目標を定める。

というようなことをしていたら、2月最後の10日間はほとんど自由の効かない日になってしまった!
息子夫妻が遊びに来てくれる予定さえ、泊まりを飛ばして外で食事し、みんなで娘に面会をしてお別れ、ってスケジュールになりそうだ。
「これは、私の詰め込み癖とは何の関係もないんだからね!」とスゴむと、せいうちくんも、
「わかってる。不測の事態だ。まあなんとかしよう」という頼りない返事。
人が何かやりたがっていることがあると、手伝いたくってしょうがなくなるんだよね。
これはもう、業のようなものかもしれない。

25年2月3日

朝からなんだか身体中の関節が痛い。
なんだろう、と思っていたら、夕方にかけて熱が上がってきてくしゃみ・鼻水の風邪の諸症状が出始めた。
熱がいきなり38度に達したので、
「悪くするとコロナかインフル。かかりつけクリニックの高熱外来に電話してみるから、出かける支度して」
病気がらみは慣れていててきぱきと問診票まで書き始めたせいうちくんに感心しながら、ふらふらと着替えをする。
「17時半の枠が取れたから、15分になったら出かけよう。可哀そうに。それで関節が痛かったんだね」
うん、確かに思い起こせば、あれは熱が出る時の痛みだった気がする。

クリニックに着くと私だけ使い捨てのスリッパを渡され、せいうちくんは普通のスリッパで待合室をする―っと抜けて、一番奥の小部屋に案内された。
こういう時にとっても頼りになりそうな江口のりこ似のちょっと冷血な顔した女医さんに会って、妙に安心する。
「熱が出ちゃったの?検査しましょう。ダンナさん、飛沫が飛ぶから、待合室に行ってて」と手際よくせいうちくんを追い出して、細い綿棒で右側の鼻の奥をうんと奥まで容赦なくぬぐう。私、これがものすごく苦手だよ~!

「結果が出るのにちょっと時間がかかりますから」と江口のりこ似はきびきびと血中酸素濃度と血圧を測り、胸と背中から聴診器で音を聞いてくれた。
「異常はないわね」とついには診察室へ戻って行ってしまった。
寂しいけど、今、この瞬間にも彼女の手を必要としてる人たちが待合室に大勢いるのだ!

と言うほどのこともなくじきに戻ってくると、ひと言、「陽性反応、出ませんね」。
「じゃあ、コロナでもインフルでもないと」
「そう」
「熱が高いだけの、ただの風邪だと」
「そうね」
以下、クールに漢方の風邪の熱を下げるやつ、鼻水に効く錠剤、そこで振り返って、
「カロナールは家にたくさんある?」
「はい、あります」
「じゃあ解熱と痛み止めはそれのんで。1日3回は大丈夫だから。今出すつもりの薬なら院内処方できるけど、どうする?」
「もう18時近いんで、薬局ヤバイです。院内処方でお願いします」
「そうね。わかった」

で、薬をもらって家に帰るなりそれらを飲ませたがるせいうちくんにいいようにされながら、あっという間に氷枕付きのベッドに放り込まれた。
「氷はたくさん買ってきたからね!溶けたらすぐ言ってね。新しいの作るから」
あの赤いゴムみたいな氷枕、不思議な留め具で口をふさぐアレ…彼は何かアレに萌えるところがあるんだろうか…

25年2月4日

昨日、医者に行っておいてよかった。
ずっと熱が下がらず、というか37度と38度の間を行ったり来たりして病人としての体裁は整えてくれてるものの、なんだかずっと関節が痛くて身体が気持ち悪い、イヤな風邪だった。
もちろんずっとベッドにはいるんだが、蟻走感(皮膚の表面がむずむずする)みたいなものが出るうえ、向精神薬の副作用で昔散々出たパーキンソン氏病の症状みたいなつんのめり感まで出て、じっとしていられない。

暖かい格好してせいうちくんの隣に座ってる許可は出たので、書斎のノートPCで自炊をする。
ちょうど大人買いした20巻30巻ものがたまりまくっていたのだ。
せいうちくんは仕事の合間に猛烈に六大学漫研の人たちと連絡を取っていて、昨夜我々がおおまかに立てた店選びが全部間違っているのがわかった。

まず、Tくんの知り合いがやってる店で彼らの結婚式の二次会をやったとこ、ここは我々も紹介してもらって「結婚10周年パーティー」を大真面目に開いた場所でもあり、しかもTくん夫妻は受付を買って出てくれたほどのゆかりの地なので、ぜひここにしたいと思ったのが、今では別の会社に吸収されて、本体は北海道に移動していた。

次に、妻のM子さんが「彼の好きだった店」と上げてきた候補は防衛省関係のホテルと「300円中華」。
落差に驚く間もなく、ホテルは全然人数が入らないこと、中華は1階と2階を全部部使えば50人入るが、やはり上下で交流するのはキビシイので、両候補とも落ちた。
M子さんちの近くでいくつかイタリアンの店を洗い出してみたのだが、料金は大体1人6千円から8千円。
それぐらいは仕方ないか、と思っていたら、Messengerでブレストを始めた「六大学漫研」の人々の希望は「一人5千円まで。それを超えるとキビシイ」というものだった。
高級フレンチのパーティーに燕尾服で出る傍ら、安い焼酎を飲みワインなんて全く頭に浮かばない人たちとも親しく飲んでいたTくんの懐の深さに心から感銘を受けた。

東大まんがくらぶはソムリエが1人いる関係で、皆さんワインが好きだからな。
私はもともとさほど飲めないうえに、ワインの味は本当に申し訳ないほどわからないのだ。
樹氷をコーヒー牛乳で割って「カルーアミルク」だと言い張っていた40年前からほとんど進歩していない。
なので、六大学漫研のメンバーたちの心意気の方に同調する。

いかん、また熱が上がってきた。
氷枕作ってもらって、もう寝よう。
パーティースペースを借りてMちゃんの友達で夫婦してケータリングサービスをやっているところから料理を取ろうか、といちおうMちゃんを通して聞いてみることにした。

でもこれ、それなりに値段が高そう。
あと、温かい料理は難しいんだって。
お酒やグラスをどうすればいいのかもわからないパーティー素人には無理なプランかも。

25年2月5日

昨日の晩38度だった熱が37度5分まで下がったが、あいかわらず身体中痛いし、いつまた熱が上がるかわからない。
咳が激しくて、みぞおちの筋肉が痛むほどだ。
心療内科の通院日で、今日行かないと薬が足りなくなってしまうので、なんとかせねば。

朝一番でクリニックに電話をかけてみた。
ドクターと話すことができて、風邪で高熱が出た旨話すと、
「処方箋を送りましょう。この近所の薬局ですか?」
「いえ、自宅の近くです」と薬局名と電話番号を伝え、
「あの、それで次の予約はいつに…」と言いかけたらもう切れていた。
自分も経験あるからわかるけど、面談中の患者さん側からすると、話してる最中のドクターに電話が取り次がれるのっていい気持ちはしないものなんだよね。
ドクターもそれで最低限で切り上げたんだと思う。

しばらくしたら薬局から電話がかかってきた。
ファックスで処方箋が届いたそうだ。
またしばらくののちに「調剤完了」の報を受け、せいうちくんが取りに行ってくれる。
3週間分もらえたようで、よかった。
こういう「非受診」の緊急時は1週間分しかもらえないのかと思ってたんだ。

仕事のリモート会議と六大学との会場探しでPCにしがみついてるせいうちくんを横目で見ながら、こちらもMちゃんと、それからご紹介いただいたケータリングサービスの方にお断りの連絡を入れた。
2人とも「お問い合わせはどんどんしてほしいので、気にしないでほしい」と言ってくれた。

Messengerでのやり取りがかなり長く続き、へろへろになった人が何かボケたことを言ってしまった時、仲間から「しっかりしてくれよ。もう、フォローしてくれるTくんはいないんだよ」と叱咤の言葉が飛んでいた。
Tくんがいない。
頼めば何でも「何とかしましょう」とにこやかに、手厚すぎるほどのサポートをしてくれた彼がもういない世界で、我々はこれからまだしばらく生きて行かないといけないようだ。
しんどいね。

こんな時になぜ、と悲鳴をあげたくなるが、せいうちくんのアメリカ在住の従姉が英語のLINEで「今、日本に来ている。明日帰るんだけど、今夜一緒にごはんしない?」と送ってきた。
娘さんも途中同行していたので、予定が読めなかったらしい。
こちらはあいにく私が風邪っ引きであると伝えると、
「それは残念!息子くんは仕事中かな?誘ってみていい?」と言うので
「ぜひぜひ誘ってやってくれ」と返事をし、息子にもそういう連絡があった旨を伝えておいた。

「ありがとう!連絡来たよ。お母さん、風邪なんだ。何かできることがあったら手伝いに呼んでね!」と返事が来て、寝る頃には従姉と息子と妻のMちゃんが写ったいい笑顔の写真が送られてきた。
「楽しかった!」と息子のコメント。
彼本人が自分の好きな親戚とは積極的につきあってくれるのはありがたいな。
従姉からも、「息子くんとMちゃんに会えて、楽しかった!いい息子を持ったね!2人が結婚して以来、せいうちのお母さんがより態度を硬化させて関係が良くないのは残念だね。Mちゃんはとっても可愛くて優しくて素敵な人なのに」と言ってきた。
ホント、そうなのよ。
あの人たち(お義母さんと義妹)は、ある種の手堅い人生以外を「失敗した」「おかしくなった」と断じるから、息子たちの結婚生活をよく思いようがないんだよね。
こちらも、電話でいかにもはばかられる話題のように声を潜めで。「で、あの子たち、どうなったの?就職は、したの?」とか聞かれると、やーな気分になるからね。

完全な風邪患者として横たわったり自炊をしたりしていたが、さすがに咳が乾いてきて痰が切れるようになってきた。
そろそろ完治してもいい頃だろうに。

25年2月6日

せいうちくんは出社し、帰りに六大学漫研の人たちとお店を何軒か見てくるようだ。
彼らとつきあえばつきあうほど、Tくんがまんがくらぶよりむしろそちらの方に交友力を割いていたのでは、と思わされる。
それぐらい、彼らの語るTくんは生き生きとして、頼りになり、皆の中心人物といった感じだからだ。
もちろんまんがくらぶの方でもそういう人だったが、六大学の方が「侠気」の通用する世界で、Tくんがそこにジャストフィットしていたんじゃないだろうか。
そんな人たちと一緒に行動し、亡きTくんの知らなかった面を見ることのできるせいうちくんは幸せ者だ。

25年2月7日

朝一番で緑内障の視野検査が入っていたけど、せいうちくんに、
「それは、風邪をおしてまで行くものではない」と言われたので電話してキャンセル。
今度、次の予約を入れておかなくっちゃあな。
眼圧を下げる目薬は十分足りているから大丈夫だろう。

確実に良くはなっていると思ったら、「咳は昼過ぎには 吐き気に変わるだろう」と歌いたくなるほど、気持ち悪くなってトイレにこもってた。
やはり、胃腸薬のサポートなしで1日3錠のカロナールは無理があるのだろうか。
熱が上がってきそうな気がして、せいうちくんはまたしてもコンビニに走り、隙あらば自炊をしようとする私を𠮟りつけて、氷枕とともにベッドに押し込むのだった。

結局、今週はずっと風邪をひいていた。
先に落語鑑賞を済ませておいたのは大変良かったんだが、既に保菌者で誰かに感染させてたらどうしよう。
どちらかと言えば人混みでのもらい風邪の可能性が高そうなんだが。

咳でよく眠れていないので、もう限界かも。
マンガ読みながら寝落ちしよう。

今読んでるマンガが3種類とも「女王」関係の話で、森秀樹の「ビジャの女王」既刊6巻は架空のストーリーと思われる蒙古軍対ペルシャの一部ビジャという小国の戦争の話。
白戸三平が「カムイ伝」の第二部を描いていた頃みたいな絵柄で(つまりは弟子の岡本鉄二みたいな絵、ってことになる)、砂漠の民の興亡が良く描かれた快作だ。

なぎなたマンガの「あさひなぐ」で印象深いこざき亜衣の「セシルの女王」既刊8巻は、実在のエリザベスⅠ世の幼少期から、様々に動く王位継承権をめぐる争いの中で彼女を女王にと忠実に尽くし続けた男爵のウィリアム・セシルを中心に描いている。

我妻幸の「血を這う亡国の王女」既刊4巻は、これも恐らく史実ではあるまい、大国に滅ぼされて娼館で働かされる王女をはじめとする女性たちが、逃亡し、同盟国への亡命を図る物語。

どのマンガを読んでも、印象に強く残るのは「女王」たちの意志の強さ、不屈の精神だった。
やっぱり精神的に強くないとできない職業なんだろうな、王族って。
長い伝統を誇る日本の皇室はどうなんだろう、と少し気の毒になる。
昔観た映画「太陽」の中で、昭和天皇役を演じたイッセー尾形が「私の身体は君たちとほとんど変わらない」と言っていたのが印象的だったが、いまや「まったく同じ」であることが周知され、それでも特別な存在でいなければいけないのは、大変な苦痛であり、苦行だろう。
考えると気が重くなる話だ。

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