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年中休業うつらうつら日記(2023年8月12日~8月25日)

クルーズから帰ってきました。船旅についてはいずれゆっくり書きたいと思います。10日間の旅を抜かした生活日誌となっております。

23年8月12日

お盆休みのために1週間更新を飛ばしてしまった。
クルーズ船は誰もがコロナ始まりの悪夢を思い出す「ダイヤモンド・プリンセス」。
きっとコロナを出してしまった以上、今ではどの船会社より気を遣っていることだろう。
問題は、これが外国船であること。
横浜出発で和歌山や高知、長崎をめぐることを考えると日本人の割合が多いと想像されるが、日本に観光に来ていて日本各地をクルーズしたい外人さんも多いのではなかろうか。

そもそも外国船籍の船が日本でクルーズ商売をするためには、どんなに日本の近くであろうとも必ず「外国」へ1回は出ないといけないという決まりがある。
今回はそれが韓国の済州島なわけで、今はロシアが戦争やってる関係で怖くて行けないが、前は青森・北海道方面を回って外国としてはサハリンに寄港するコースなども人気があった。

日本船の飛鳥Ⅱには2回乗ったことがあるけど、外国船は初めて。
細かいルールがいろいろ違う。
一番違うと感じるのは大浴場が1回90分で15ドル、とかかかるところだろう。
飛鳥Ⅱは大浴場入り放題で、まだ乗ってないが改修後の飛鳥Ⅱには大海原を臨める露天大浴場もあるそうなのだ。
また、飛鳥Ⅱでは全室に普通についている「ウォシュレット」が、ダイヤモンド・プリンセスだとジュニア・スイート以上のクラスでないとついてない。
ついでにバスタブもジュニア・スイートからだ。

私はどうしてもウォシュレットを使いたいタイプだし、夏場は水風呂に入るためにもバスタブが欲しいので、全体の値段が低いカジュアル船であるのをいいことに、飛鳥Ⅱではベランダ付きまでしか取れなかったチキンなのに今回はジュニア・スイートを奮発してしまった。
それでも飛鳥Ⅱのベランダより安いぐらいだが。

レンタルトランクが届き、自前で買ったのと合わせて大型トランクを2つも持って行くことになる。
自前の方はもう服を詰めて船に送ってしまったので、転がしていくのはレンタルの方だけ。
それでもせいうちくんの服や洗面道具、コード類やUSBコンセントがたくさんついた電源コード、Bluetoothスピーカーなど様々なものでかなりいっぱい。
万一の場合のために常用薬を14日分準備するように言われているので、心臓系と精神系両方の薬の量はかなりなものになる。
毎晩貼る湿布薬も10日分だけで相当かさばるし。

ほぼ詰め終わってあさっての出発を待つ。
せいうちくんももうお盆休みに入っており、準備はほとんど彼がやってくれた。
心配なのは真南から関東を直撃しそうな台風7号で、今の見込みだと出航日の14日には横浜は大嵐だろう。
まず公共交通の乱れが心配なので、前夜から横浜に入ってホテルに泊まることも検討したが、結局様子をみながら朝早く出発しよう、最悪電車がすべて止まってもタクシーを使えば何とかなるだろう、となった。
毎晩天気図を見ながら心配している。
波瀾万丈なクルーズになりそうだ。

息子から妻Mちゃんのウェディングドレス姿の試着写真が来た。
正面からと見返り美人。
白い妖精のように可憐で綺麗で、輝くようだった。
伸ばしていた髪でアップに結うことができるようになっててよかった。
小さく引いた裾や大きく開いた背中の華奢な肩甲骨まで神々しい。
こんなに素敵な人が息子と生涯の誓いを立ててくれるなんて、夢のようだ。

息子も、「Mちゃんきれいだよね」と書いてきたので、「こんなに綺麗な人と結婚式だなんて、胸が詰まって涙がこみ上げてこない?」と尋ねると、「相当ありがたいよね。言葉ではうまく言えないね」。
その気持ちを忘れずに一生過ごしてくれ。

あと、招待する方々には3万円の足代を出すことと飛行機の便や宿の紹介を電子招待メールでお知らせするつもりだそうだ。
着々と準備が進んでいるなぁ。
我々が手を放してからの方が断然うまくいってるみたい。
道路整理のアルバイト以外に学童保育の補助員も始めるらしい。
学童のない日に道路整理、って感じで働くって。
もちろんコントも続けるそうだ。
Mちゃんにおまかせしておくと息子はどんどん頼もしくなるなぁ。

23年8月13日

先日来の精神的不調が大きく、明日からのクルーズに行きたくなくなっているほどだ。
せいうちくんは慣れたもので、
「キミは、大きな旅行とかの前には必ず行きたくなくなっちゃうんだよね。でも、引きずってでも連れて行けばなんとかなるから、全然大丈夫」と前向き。
人の悪意ある言葉や罵倒は肉体的な暴力と同じで、後々まで傷跡がうずく。
せいうちくんの妹さんとの電話上の大げんかは意外と後を引き、2人とも胸が重い。
留守宅連絡というものがあるからお義母さんにはクルーズのことは伝えざるを得ず、当然妹さんも聞き及んでいるだろう。
また、「障碍児を預けているから自由気ままにできる」「いいわね、お金があって遊べて」と言われているのだろうか。

台風7号はなぜか西へ逸れ始め、横浜は暴風雨圏内ではあるものの中心は関西の方に上陸するようだ。
しかし、我々がまず向かうのは和歌山である。
進路は西、つまり台風に向かって突っ込んでいくわけだ。
思い切り南下して台風の通過したあとを航海するとかかな。

今日の時点でとても残念なお知らせは、熊野の大花火が8月22日に延期になったこと。
その頃には船はとっくに通り過ぎているので、船上からの花火鑑賞はスケジュールから消えてしまった。
これは相当目玉企画だったらしく、クルーズ自体のキャンセルを全額返却で受け付けるそうだ。
ものすごい大ごとだと、いち船客に過ぎない我々でも思う。
花火はとてもとても惜しいけど、クルーズ自体が好きなのでキャンセルする気はない。
そもそももう荷造りまでしちゃってるんだから。

23年8月14日

朝早く起きて、iPadやiPhone、歯磨きセットなど最後まで使っていたものをそれぞれのディパックに詰める。
天気はほぼ快晴で、交通機関の乱れは全然ない。
麦藁帽をかぶって昼頃にゆっくり出て、横浜港に向かう。

今日から始まる10日間はどんな感じなのか。
英語をすっかり忘れてしまってることはどのぐらいの重大事か。
あいかわらず精神的に絶不調で、早くも抗不安薬をのんでいる私は無事帰ってこられるのか。

クルーズ日記はいずれ時間ができた時にゆっくり書こうと思います。
しばらく陸よ、さようなら。


23年8月23日

船上での誕生日も無事迎え、ひとつ歳を取って帰ってきた。
とにかく疲れた。
スマホの万歩計を見ると毎日5千歩ぐらい歩いていて、普通の日常の13歩とか20歩とは大違いだ。

元気なせいうちくんが荷ほどきをしてくれて、各タンスや引き出しにしまう際には私も少しは働いて、午前中に家に着いて昼頃にはベランダに洗濯物がへんぽんと翻り、旅行のあとはすっかり消え失せてしまった。
マイトランクもクロゼットの奥にしまい込まれ、玄関にあさっての引き取りを待つレンタルトランクがあることだけが旅の証だ。
いつもながら、日常に戻るのが早い。

せいうちくんは買い物にまで行ってくれて、大荷物には大玉スイカが1個丸々入っていた。
船の上で食べたスイカがよほど美味しかったとみえる。
大河ドラマ「どうする家康」の最新回を観たあと、船のプールに浮かんで野外ステージの大画面で観たポワロものの「ナイルに死す」の新作がどうしても納得いかなかったのでTVシリーズでデヴィッド・スーシェの「ナイルに死す」を観て、家のお風呂にゆっくり入って、ああ日常っていいな。
家のベッド、やっぱり最高!

23年8月24日

せいうちくんは仕事に復帰し、私も日常が始まった証のように整形外科へ行って湿布薬と鎮痛ジェルをもらってきた。
お盆休み明けのせいか、昨日が休診日だったせいか、昼の受付終了寸前に行ったというのにものすごい混雑だった。
足腰の痛い人が来る整形外科なのに、座る席がないほどだった。

「あー、こりゃ時間がかかるな。いつもなら2、3人しか待ってなくて5分で呼ばれるのにな」と思いながら、これあるを見越して2冊持って来たコミックス「明日、私は誰かのカノジョ」と「片喰と黄金」の最新巻を読もうと思ったら、5分で呼ばれた。
「どうですか?」
「指も膝も腰もあいかわらず痛いです」
「辛抱強く鎮痛ジェルを塗ってください」
で診察が終わったので、すぐ終わる簡単な患者だから早く呼ばれたのかな?と考えていたら、コミックス2冊読み終わる頃に真相がわかった。
会計に時間がかかるのだ。
待っている患者さんたちはみんな診察はとうに終えており、ひたすら会計と院内処方薬を待っているだけだった。

30分ほど待って私もシップとジェルを手に入れ、自転車で1分の距離を帰った。
せいうちくんはちょうど仕事の区切りらしく、水風呂に入ろうとする私をつかまえて、
「10日間もずっと一緒にいたから、ちょっとでもキミがいないと寂しくて寂しくて。キミはいつもこんな寂しい思いをしてるんだね。ごめんね」と抱きついてくる。
嬉しいけど、今の私は熱のかたまりだぞ。

今夜は古い方の映画版「ナイルに死す」を観よう(それでもずいぶん新しい)。
新作映画版は「オリエント急行殺人事件」でもタフガイなポワロに違和感ありまくり。
挙句の銃撃戦などのアクション。
やたらに人生を反省するポワロ。
ハリウッドばりばりポワロは認めがたい。
やはりポワロはデヴィッド・スーシェにとどめを刺すなぁ。

23年8月25日

午前中にレンタルトランクの引き取りサービスが来た。
これでクルーズ旅行のあとはまったく残っていない。
普通に日常を送るだけの日々が帰ってきた。

実はクルーズ中ずっと不調で薬に頼り切っていたので、普段の倍量ぐらいを消費してしまった。
ドクターに謝って、またもらわなくちゃ。
今日は難しい患者さんが多いのか、3人しか待ってないのに1人1人が長かった。
せいうちくんも一緒に来てくれていたので、待たせて申し訳ない。
最初から診察室に入っている女性らしき声がしきりに聞こえるのだが、あんまりよくしゃべっているのでてっきり女性が2人、いるのだと思った。
でも出てきたのは1人。
1人であんなにしゃべれるものなのか。

男性が入り、彼はわりとすぐ。
高校生ぐらいの女の子が「ママも一緒に来て」と母親連れで診察室に入り、これも長かった。
初診なのだろうか。
母親が一緒に来てくれるというのは、いい関係なのか、母子関係に問題があるのか、判断がつかない。
そんなふうについつい他の患者さんを観察してしまうのだった。

私の番になり、せいうちくんと一緒に入る。
クルーズが楽しめなかったこと、薬をのんで寝ている時間が多かったことなどを話すと、ドクターは驚いていた。
「前回、4週間分出して、まだ2週間ちょっとですよ。人間の身体ってのはすごいねぇ。脳に効かなくても身体には確実に効いてるはずだから、あなた、ふらふらだったでしょう」
はい、船酔いも手伝ってふらふら歩いてました。
て言うか、日中はほとんど寝ていたかも。

せいうちくんの家族問題に巻き込まれ、理屈が通らなくて一方的に悪く言われるのが腹立たしくてたまらない、と訴える。
どこまでも、相手と同じ土俵で、できれば理屈が通って「1+1=2」の世界で勝負したい。
それでも負けるなら仕方がないが、そもそも相手の言うことがコロコロ変わったり怒鳴り出したりするのは困る。
薬をのんで寝て居ざるを得ない状態を「楽してていいわね。私ものんびりしたいわ」と言われてもなぁ。

ドクターは言う。
「あなたは、人の目にはわからないかもしれないけど、中学・高校の頃から人とは変わった存在だった。人にわからない傷を負っていた。尊厳を認められず、愛情を持って接してくれる存在がいなかった。そういう人の苦しみは、人にはわからない。生きること自体が苦しみだから」
「深夜徘徊や性的逸脱について、母は卑劣な手段で私の日記を読み、『あんた、エロ本でも書いたらいいんじゃないの』と侮蔑の言葉を投げました。『いやらしいことしてるから、見る人が見ればわかるいやらしい身体になっちゃってるのよ。そんなにお尻も大きくて』と、散々に侮辱しました」
おかげで今でも私は下ネタは好きでもセックスに対する嫌悪感を拭い去れない。どうしてくれる。

せいうちくんは、
「母親なら、『妊娠も心配だし、怖い病気もあるのよ。あなたの身体が心配』って優しく言うんじゃないかなぁ」と首をかしげている。

話は戻って、ドクター曰く、
「僕のところに来るような患者さんたちは、みんなまわりの無理解や差別に苦しんでいます。そういう人たちを、相手にすることはない。お母さんとの関係がどうしても義理の家族にも持ち込まれてしまうんだろうけど、理屈のわからない人たちに何を言っても無駄。言い負かすんじゃなくて、優越性をもって無視してください。あなたは間違っていないんだから」。

しかし、話し合いをせずに人を一方的に、しかもこちらが正しいと決め込んで無視するってのは私がもっとも嫌うことだ。
できればどこまでも抽象性のハシゴを降りて行って、言葉の通じるポイントを見つけたい。
犬が犬である、でもいい。
そこを手掛かりに、なんとか理解し合えないものか。

せいうちくんも、
「私が腰の強いタイプじゃないので、母親や妹を無視するというより言い負かされるので勝負したくないようにうさこには見えるんだと思います。そこがくやしいんでしょう。自分でも不甲斐ないと思っています」と言うと、ドクターは、
「いやいや、私も母親との関係に悩んで、手紙を書いて伝えようとしたことがあります。5ポイントぐらいに絞って書いたんですが、母親は『やだ、なんて怖いことを言うの』と反応したきりでした。あの世代は、『戦争は嫌だ』とか言ったら『怖いことになる』と思い込んでるんですよね。臭いものには蓋、でやってきた人たちです。そんな人たちと、その影響を受けた人たちを相手にしてもしょうがない。あくまで優越性を持って無視し、何か言ってきたらそっけなく冷たく返してやればいいんです。それが向こうの受ける報いなんだから」と語ってくれた。

優越性を持っての無視。
難しいが、トライしてみよう。

「お薬、保険組合がうるさいこと言ってくる寸前の量を出してますからね、できればだんだん減らしてくださいよ。しかし人間の身体ってのは驚異だなぁ。あれだけの薬がのめるとは」と何度も繰り返していた。
それでもまた多めに出してくれる。
早く先生の恩に報いて減薬したいものだ。
自分でも自分が薬臭くてたまらない。

今日の業は成れり。
もう何もしない。
夜はそうめんとスイカしか食べられない身体に2人ともなってしまった。

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