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年中休業うつらうつら日記(2023年7月15日~7月21日)

23年7月15日

昨夜の定例ZOOM飲み会、少し遅れて入ったら長老はすでに山小屋入りしており、今年の流星群観測合宿についての話題に花が咲いていた。
我々はその頃ちょうど船旅の予定なので、今年は参加できない。
ここ数年、毎年のように長老の山小屋に寄せてもらうのが楽しみだったのだが。
来年はGくんとハイエースを買って、車中泊しながら向かいたいものだ。

前回、私がいなかった時間帯にマンガ評論を趣味とするHくんが「ふきだし論」について語ったところ、けっこう突き詰めた質問をしてくるSくんがまず決めつけから入るようにHくんには思えたらしく、その後自身のFBで「『ためにする議論』にしか思えなかった」と感想を述べた。
ちょっと頭にきたSくんが、「じゃあその場でそう言えばいいじゃないか」とリアルZOOM飲み会で怒っていたよ。

みんなで、Hくんはそういう人だから、と慰め励ましたが、
「もう、僕はあいつが入ってきたら落ちますからね!」と宣言するほどの気分の害しようで、実際Hくんが入ってきたらその瞬間に落ちてしまった。

Hくんに事態を説明すべきかどうか迷っていたら、長老がさくっと言ってくれた。
「さっきまでSくんがいたんだけど、FBのことで気を悪くしていて、落ちちゃったぞ」
Hくんもちょっと言い過ぎだったかなぁと思わないではない様子だったので、おせっかいな私は「Sくんに謝っちゃえ!」とけしかけ、「そうですね…謝ります」と言質を取ったうえでSくんにメッセージを送り、「Hくんが謝りたいって言ってるよ。戻っておいでよ」と促したが、「お気持ちだけいただいておきます。今日はせっかくの機会なので早寝します」とのことだった。

しばらくHくんを囲んで、「あの言い方はないだろう」とか「しかし酔っ払って好き勝手言えるのがこの場のいいところだから」などと話しているうちに、Uくんがやってきた。
ざっくり今日の出来事をお伝えし、UくんがFBを読んでみるのを待つ。

しかしそんな些細とも言えるマターよりさらに重要なことが世の中には起こっている。
ある男性は母親が亡くなり、遺産相続の手続きを始めなければならないのだが、同居介護していた弟からの「何もしなかったくせに」と罵詈雑言のレポートをもらったり、また別の男性は還暦近いというのに87歳の母親に家事のすべてをまかせていて、「明日お母さんが倒れたらどうするの?」という問いには答えがなかったり、それぞれの生活はみんな本当に様々だ。
私なんか心配性だから、夫を特養に入れたあとの義母87歳が1人暮らしを無事にできているかどうかいつも心配でならない。
せいうちくんは「妹と毎日電話で長話をしているに違いないんだから、何かあったら言ってくるだろう。そしてそれはたぶん『あなたは何もしない』という文句で始まるんだろう」と達観してるのか逃げているのか。
少なくとも親の介護をめぐってきょうだいから罵倒されることが現実によその家庭でも起こっていると知って、かなり気が楽になってしまったらしい。
それはそれで困りものだ。

なにしろ件の弟さんからの文句レポート中で友人が「兄貴」と書かれているだけで、
「いいなぁ、『兄貴』か。うちなんか、妹からの『おまえ』呼びだよ」とため息をついている。
「貴」がついてるからって、全然尊称じゃないからね。「貴様」が尊敬の言葉でないのと同じぐらいに。
いやぁ、幾田羊の「相続探偵」全7巻に「『相続』とは『争族』と書くぐらいですから」と書いてあったのも無理はない。

23年7月16日

電車で出かけて、よその駅前までギターとフルートの教室の無料体験レッスンを受けに行った。
せいうちくんはフルートだから取り外してケースにしまうと小さくなるんだが、ギターはどうしてもデカい。
それでも2年前にソフトケースを買い替えておいてよかった。
暑い日だったので、ずっとせいうちくんが運んでくれてたにもかかわらずすでにグロッキー気味の私。

指定されたスタジオの隅で、一生懸命楽譜を書いてくれてるのが私のギターの先生だった。
メガネに坊主頭で、小椋佳を少し若くしたような感じだ。
今後、心の中で「住職」と呼ぶことにしよう。
フルートの先生はプロフィールでもらった写真とはちょっと違う感じだったので、写真盛りなのか。
でも綺麗な若い人なので「小顔ちゃん」と呼ぼう。
小顔ちゃんが教室との間に立って事務も受けつけてくれるそうだ。

住職が書いているのはCを基調にしたギター譜で、
「ダンナさんと奥さんのどちらが歌うかわからなかったので、両方歌える音程にしました。フルートの音階は難しいので、Cを基調にした方がやりやすいでしょう」というところまで共有し、60分のレッスンの最後10分ぐらいで合わせてみる、と打ち合わせたあと、それぞれのスタジオに入る。

住職に用意してきた楽譜を渡すと、これはGを基調にしている。
「作ったのが素人ですね!」とスゴイ剣幕なので、
「Amazonで買ったんですけど、クソですか?」
「クソです!」とC調でやる気満々。
私はずっとG音で練習してきたし、C基調だと苦手なコードが多くてつらいこと、クソな楽譜がけっこう気に入っていること、などを一生懸命説明した。

「じゃあまず、その楽譜で弾いてみてください」と言われたので、歌をつけて全曲通す。
ああ、やはりできてないところが多すぎる。
だからこそ教室に通おうと思ったわけだが。

住職は「じゃあ、Cで僕が弾きますから、歌ってください」。はい、歌います。
歌い出すなり、「いいですねぇー!」。
終わると、「こっちの方が全然声が出てますよ。いい感じです」と言う。
しかし、6カポはキツイ。
カポタストが手元に来れば来るほど、弦の緊張は強くなるので押さえにくい。
Gで2カポぐらいがちょうどいい。

そのあとはなんだかずっとCかGかで論争してたなぁ。
あと、住職は中島みゆきの原曲のメロディを変えてしまっているので、そこはオリジナルで、とお願いした。
結婚式はワイワイしててあんまり余興とか聞いてないから、最後を「よ・び・ま・す~」と歌い上げることでワーッと湧くんだそうだ。
いや、悪いけど私は全曲きちんと聴かせるつもりだよ。

フルートとの合わせの時間になって、小顔ちゃんとせいうちくんが入ってきた。
さっそくしごかれたらしく、せいうちくんはへばっていて、前奏を吹き切る気力も出ないようだった。
「これはもう今後の課題にして、ギターの方を聞かせてください」っつったって、全曲通してのイメージを4人が共有するためにもフルートの前奏、間奏、後奏を入れてやってみなきゃダメじゃないか。
今思えば小顔ちゃんに適当なメロディで吹いてもらっておけばよかったな。

いずれにせよ、住職が弾くCのギターで私が歌って、メロディは原曲通りで、ひとさらいした。
「歌がこれだけ歌えれば、アカペラでもいいんじゃないですかね。僕がずっとギターを受け持って」という提案は、
「本番でカラオケ音源を使うことも考えましたが、やはり両親で楽器を演奏して贈ってあげたいので」とお断りした。
住職は「子供の結婚式で歌を歌いたい」という老婦人にしてはまともに歌えるので、安堵したらしい。
中高大フォークソング部をなめるなよ。

スタジオを出て、楽器を持った若い人でごった返すスタジオの隅の席でご入会の相談。
私としてはG基調にしてくれさえすれば住職に習いたい、そしてせいうちくんはこないだ来てくれたフルートの先生のリモートレッスンを受ければいいんじゃないか、と思っていたのだが、なぜかせいうちくんがすごく乗り気になっている。
「1曲集中8回コース」で、ぜひこちらに通いたいそうだ。
住職に、
「どうしてもGでやりたいって言ったらどうしますか?」と聞くと、
「それなら僕はやめますよ」と最初は言っていたが、結局彼が心配しているのはGは手に負担がかかるので自分も常に腱鞘炎になっている、音楽を楽しむ生徒さんの手を壊すわけにはいかない、という点らしい。
「そこをなんとか」と頼み込んで、最後には了承してもらった。

教室事務員でもある小顔ちゃんは嬉しそうにコースの説明をしてくれて、「入会金が1万円、事務手続き費が3千円かかるのですが、今お申込みいただければキャンペーン中なので無料になります」って。
出たな、「今なら無料」。
即決を誘う常套手段だ。
私はたとえ余分な費用が掛かる(1万3千円×2)としてもいったん家に持ち帰り、せいうちくんとよく相談したいと思ったんだが、なんだかせいうちくんに火がついちゃってる。
「2万6千円も節約できるんだよ?もう、今決めちゃおうよ!」
あなたがそこまで言うんならいいけれど。

実際のレッスンは8月末か9月頭から初めて2カ月かけて仕上げる、という話がまとまり、それぞれの講師とLINE交換。
私はギターの弦を替えたいと思っていたので、
「ライトとコンパウンドとどちらがいいんでしたっけ?」と住職に聞くと、自分が使っている、というものを勧められ、駅近くの楽器店に電話して在庫を確認してくれた。
Amazonとかで売ってるものは古い在庫だったりするので、やはり楽器店で買う方が安心なのだそうだ。
ついでに弦を張り替えるためにピンを抜く器具を持ってないが、ドライバーでもいいか、と乱暴な質問をしたら、
「楽器店で張り替えてもらった方がいいですよ。自分でやるとねじれとか出ます」とまた電話して、張り替えしてもらえるか聞いてくれてる。
「弦と合わせて3千円ぐらいでできるそうです」
おお、安いじゃないか!
悪いけど、住職がなじみの店に連絡とってマージン抜いて全部で1万円ぐらいかかるかと不安に震えていたぞ。

店まで一緒に来てあれこれお願いしてくれたあと、住職は去って行った。
「うさこさんの声と歌はとてもいいので、まったく心配してません。ギターの方、頑張りましょう!」と言って。
なんだかカッコいい人だなぁ。
左手の指の先はタコの上にタコができてもう平たくなっていて、人間の指じゃなかったよ。

15分ぐらい待ったら張り替えが終わった。
40年物の古い弦が、キラキラの「しゃら~ん」とした音のギターに生まれ変わっていた。
店員さんにも、「劇的ビフォーアフターですね」と笑われた。
新しくなったこのギターで、うんと練習しよう!

暑い暑いと言いながら家に帰りついたら、昔イタリア旅行をした時に知り合った群馬の土地持ちのおばさまから連絡があった。
数年に1回、ネギとかお手製のオレンジピールをくださるのだ。
今回はオレンジピールらしい。
もう10年も前のツアーでご一緒しただけなのに、とても長くおつきあいが続いている。
こういうのが旅の楽しみってやつかしら。
そう言えばクルーズも迫っているんだった。そわそわ。

23年7月17日

息子夫婦の結婚式の話を聞くのと、家族顔合わせの一環として大宮のビアホールに行ってきました。昨日はとにかく暑かった。

息子が甲斐甲斐しく全員の分の肉やソーセージを焼いているところが好感度高かった。
お兄さんのところのお子さん2人が一緒に来てくれて、息子夫婦は始終彼らを涼しい階下へ連れ出したり遊んであげたりで、2時間の飲み放題食べ放題でもMちゃんほとんど食べられなかったみたい。
「練習、練習」とビール飲みながら笑っているオトナたちはヒドいかも(笑)

沖縄で11月末、招待客は25人ぐらい、人前式と披露宴を一緒にやる、結婚式というより和やかなパーティーにしたい、といった希望を聞くことができた。
2人でよく相談して色々決めて行ってほしい。
どうも息子が「誰の結婚式?あ、僕かぁ」という感じで、イマイチ真剣みがないのは、男の人だからしょうがないだろうか。
これで式場を使ったいわゆる「普通の結婚式」をしないで手作りで行くとなると、Mちゃんの負担ばかり増えそうだ。
とにかくMちゃんのやりたいことを全部盛り込むよう、猛烈にはげましておいた。
のりつけ雅春の「アフロ田中シリーズ」での名言、「結婚式はオンナの風俗だ!おまえだって友達と風俗行く相談してるのに、『忙しいから検討する気になれない』『安い方でいいんじゃない?』とか言われたら頭に来るだろう!」という名言を理解している2人なので、大丈夫だと思いたい。

ビアホールを出る時に息子と私が代わる代わる撮った集合写真をMちゃんにLINEで送ったら、
「家族が増えたって実感がわきます」と感慨深そうだった。
確かに、我々も小さな子供たちやお兄さん、お母さんと姻戚になってるわけだ。
息子が温かく受け入れられ、本人も楽しそうに甥っ子姪っ子の世話を焼いている風景を見て、涙ぐんでしまったよ。
結婚って、本当に家族が増えるんだね。

そうそう、群馬のおばさまからオレンジピールがクール宅急便で届いた。
さっそくお礼のメッセージを送り、こちらからも水ようかんをお送りしておいた。
ピールは恐ろしくなるほどのグラニュー糖を使ってあるが、肉厚でとても美味しい。
毎年、自分とこの土地でとれる夏みかんで手作りしてらっしゃるようだ。
自然の恵み、人の想いのかたまりをいただいて、元気が出るなぁ。暑いのは止まらないけど。

ギターとフルートの教室から支払いについてのメールが来たんだが、「1曲集中コースは8回で5万円」「9月頭ぐらいから始める」と現場の事務の人と話がついていたにもかかわらず、「4カ月はコース変更・退会等はできません」「2カ月分をまとめて支払ったあとの3カ月、4カ月分の振り込みは別になります」などと書いてあるものだから、せいうちくんの血圧が上がってしまった。
おまけに「開始月」は7月になっており、そこから2ヶ月で終わらせろ、と。

「LINEも交換してるフルートの先生が大丈夫って言ったんだから、どうしても気になるならその人にLINEしてみたらどう?教室宛てにメール送ると返事が明日以降になって気が焦るよ」とか、
「たぶん『1曲集中コース』以外の部分はテンプレで、自動的にくっついてきちゃうんだと思うなぁ」となんとかテンションを下げようとしたのだが、
「こういうのはすぐにメールで返しておかないと大変なことになる。口頭でも契約は成立する場合があるし、明らかに話が違う!」と目が血走っている。
それって鶏を割くに牛刀を以てすみたいな職業病じゃないの?
まだ銀行口座もカードも教えてないんだから実害は何もないし、何なら今からやめたっていいぐらいだよ。
「せっかくいい教室に巡り合えたのに」って、繁華街の駅前まで行くつもりがあるなら世の中にはいくらでも音楽教室ぐらいあるよ。

「今、お申込みいただければ会費と事務手続き料の1万3千円がお2人分無料になります」ってのに引っかかったのが後悔のタネかな?
長老がよく言ってるよねぇ、「テレフォンショッピングなんかで『あと30分のみ!』とか『本日に限り!』とか煽ってるのはたいていインチキだから、引っかかっちゃいかん」って。
部屋の入り口から顔突っ込んでそう言ったら、
「どうしてこんなに人が困ってる時に意地悪を言うんだ」って呪詛の言葉が響いてきたよ。
よっぽど身に覚えがあるんだね。

なんとかなだめてLINEで済ませてもらったところ、当該フルート教師の小顔ちゃんからすぐに返事が来て、「『一曲集中コース』は全然体系が違うから大丈夫です!紛らわしいご案内をしてしまってすみません!」と謝罪してきた。
やっぱ余分なテンプレ貼ってあっただけじゃん。
「今夜のうちに解決してよかったね~」と寝ようとしたら、なんか、
「うさこにまた教えられてしまった。僕はうさこに到底かなわない」とか、
「何十年も家庭にこもっているのに、どうしてそんなにフラットな見方ができるんだ。どういう才能なんだ」と床に手をついてうなだれているから、「頭がいいだけだよ~ん」と言い捨てて寝ることにした。
まあこういう人間と結婚してるとたまに便利でしょ、せいうちくん?

23年7月18日

才能。
書いて笑えた。
持ってる人はとっくに使ってる。
ある人からはだだもれてる。
文字にしてみてわかるが、誰にでもあって、いつでもあって、でも使えない人にはない、架空の財産のようなもの。

何よりやっぱりやりたいことだよね。
私の場合は自然にやれることしかやってこなくて、できないことを一身に励んで身につけた経験がない。
文章を書くにしても、少しは推敲したり構成を考えたりしてみなければ他人さまに読んでもらうのに耐えるシロモノにはならないのではないだろうか。
こんな書き散らしを、毎週毎週申し訳ないことです。

ただね、何か書いてないと苦しいんだよ。
言葉を発するために生きている気がするんだよ。
人の言葉を理解し、自分の言葉を伝えられる時だけなんだよ、生きてる気がするのは。
だから、まだしばらくおつきあいお願いします。

23年7月19日

心療内科の通院日。これがまた、バッチリ陽の出たカンカン照りなんだ。
禁じ手のタクシーを使うことにする。
道がうまく説明できないのでヘンな汗をかいてしまうものの、やはり家の裏からクリニックまでほぼエアコン内で行けたのは大きい。
熱中症で倒れる方がお金がかかる、と開き直って、夏の間はこれで行こう。

ドクターには、
・息子の結婚式
・そこで弾くギターを習いに行く
・3週間後に迫った外国船クルーズ
が激しいストレスとなってのしかかり、頓服の抗不安薬が足りないと訴える。

「どれも、楽しい予定じゃないですか。パスポート持ってる?パスポートさえありゃあ、外国船だって大丈夫だよ。ギターは、とにかく心がこもってて息子もお客さんもみんな喜ぶから、頑張って」ときわめて大雑把にまとめてくれた。
確かに今、本当の意味で困ってることは何もない。
虚心坦懐に受け止めれば楽しいことばっかりだ。
小人閑居してジタバタす。

23年7月20日

夫婦の平和について考える。
お互いがお互いのいやなことをせず、喜ぶことだけをしてあげられたらまず問題はないだろう。
しかし、たとえば私はイヤなことに遭遇するとその内容を言語化し、外に発散し、要するに悪口や愚痴を言いまくらないとおさまらないのだ。
それが終わるまでは胸がふさがれたような重苦しい気持ちになる。
ただ、いったん外に出しきってしまえば「まあそこまで言うことでもないよな」と落ち着きを取り戻せる。

せいうちくんは真逆で、イヤな思いは自分の胸の中だけにしまっておきたいらしい。
そして自然に忘れるのを待つ。(ひと晩寝ればたいがい忘れるそうだ)

問題は、2人で同じ不幸にあった時だ。
私は「問題」をつつきまわしいじくりまわし、あーだこーだと理屈をこねて分析し、少しマシな気分になる。
だが、それを聞かされているせいうちくんにとっては「自分が考えたくないこと」についての考えをずっと聞かなきゃいけないわけで、忘れるいとまもない。
先日そういうケンカをした時、言われた。
「どうしても、その問題について今、話さなきゃいけないものなの?」
あったりまえじゃん、事件は現場で起こってるんだよ、今さっきこうむったイヤな思いを、今開陳せずにいつするって言うんだい!と言いかけて、せいうちくんの口調のあまりの悲しい意地悪さに気づいて口をつぐんだ。

それぞれのニーズを満たすって難しいもんだな。
誠実なるせいうちくんはあとから謝ってきた。
「今日はキミの気が晴れるまで問題をしゃべってもらって、僕は明日、たまったイヤな気分を処理すればよかった。まずキミの気が済むようにさせてあげたい。僕よりずっと神経が細いんだから」
そんなこと言われたって、こっちだって相手がイヤなのわかってて罵詈雑言ぶつけ続けるなんてできないよ。
この問題はこれからもゆっくり話し合っていこう。

好きな人とはいつも結婚したかった。
だから、「こういうタイプと結婚したい」と思ったことはなく、「その時好きな相手がドタイプ」だった。
それでもささやかな夢はあり、「何歳になっても毎日のハグとキスを忘れず、『大好きだよ』と言ってくれ、寝る時はずっと抱きしめていてくれて寝る前にはお話を聞かせてくれる人」がいいなぁと思ってた。
まさかど真ん中を引き当てるとは。
これで私より早く寝入ってしまう習慣がなかったらどんなにか理想の男性だろう。

23年7月21日

禁煙を始めた。
元々15年ぐらい前から禁煙には成功していた。
18歳から50歳ほどまで、よく吸ったもんだ。
世間でも嫌煙運動が高まっていたし、うちで喫煙者は私だけだったので、タバコの大幅値上げを機に止めた。
特に苦労はしなかった。

それがなんでまた喫煙者に戻ったのか。
すべては息子が23歳過ぎて家を出てからタバコを吸い始めたせいだ。
時々泊まりに来ては「灰皿、いい?」と言って換気扇の下でタバコを吸う。
それを見ていたら、私も彼と一緒に吸ってみたくなっちゃったのだ。

最初は彼が来た時だけ1、2本もらって一緒に吸っていたが、1年間千駄木で賃貸アパート生活をしたらもう止まらなかった。
部屋中どこでも吸ってよしとなったので、息子も遠慮しない。
退去する時は敷金を全部取られたうえ、壁紙張り替え代まで出さざるを得なかった。

好きだったんだよね、息子とタバコ吸う時間が。
彼の妻やせいうちくんがいても、一族がビアホールに集おうとも、
「お母さん、タバコ吸いに行く?」のひと言にうなずくだけで、息子と2人きりで話す時間が持てた。
他愛もない話ばっかりだが、私にとっては至福の時間だった。

父が肺がんで亡くなった71歳まであと7年。
息子の結婚式で「糸」を歌おうにも、心肺機能が弱くなっていて声が伸びない。
タバコをやめて少しでも肺活量を回復させるしかないだろう。
息子よ、君もいつか愛する者のために禁煙しなくてはならない日が来るんだと思うよ。
その時はしっかりきっちり止めてくれ。

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