春の良き日

今日も憎きコロナの話題である。

今朝、私の数少ない友人の1人から連絡がきた。

きっかけは昨夜の彼女のインスタのポストだった。
数年前から家族の仕事の都合でアメリカで暮らしている彼女は少し前から日本語教室のボランティアをしているらしく、彼女の生徒(10代の男の子)の絵と文章を投稿していた。
私も大好きなジブリ作品の絵と、その作品について説明するひらがなだけの文章の投稿は、作品に対する「好き」の気持ちが溢れていた。
「彼のモチベーションのためにぜひコメントが欲しい」との内容だったので、いつもなら友人の投稿にいいねだけしてコメントなど滅多にしない私も、その投稿に簡単な感想をコメントしたのだった。

友人からの連絡は、私のそのコメントに対するお礼だった。
彼女とこうして連絡を取り合うのは数年ぶりだった。
彼女は私が大のジブリファンだということを覚えていてくれたらしい。
私の絵も送れと冗談まじりにメッセージをよこすので、すぐにイラストを描いて返信した。

(いまどこに住んでるの?というメッセージに対して)

画像1

そこから、お互い落書きを描いては送りつけるという、妙なゲームが始まった。
そうだ、中学の頃、いつもコイツとこんなことをして遊んでいた。
美人で明るい性格で学校1の秀才だった彼女と、根暗眼鏡でどんどん成績の下がっていく私は、好きな漫画の話をしたり、交換ノートにくだらないリレー小説や落書きを書いては毎日ゲラゲラと馬鹿みたいに笑っていた。
あの頃、私は親が別居したり親戚に家の借金をカミングアウトされたりと散々だったが、彼女と次はどんな話をしようか、交換ノートは明日もらえるだろうかと考えるだけで学校に行くのが楽しみで、学校にだけ居場所があるように感じていた。
彼女にはそんな話、一度もしなかったけれど。

落書きといえば、と思い出して、最近Twitterで話題のあの妖怪を書いて送りつけた。

画像2

「なにこれ?」
「アマビエ。日本では今、江戸時代に出現した疫病を予言する妖怪・アマビエと、飛鳥時代の保存食である蘇を作るのが大流行中」

アマビエの絵をかいて飾ると疫病にかからないらしいよと言うと、まじかじゃあ私も書くわといって、なぜかアマビエを真正面から見た姿を描いてよこした。どうみても毛の生えたマンボウだった。
それがおかしくておかしくて、中学の頃のように馬鹿みたいに笑って彼女の絵をスマホのロック画面に登録した。
憎きコロナも、これで退散してくれるだろう。


昼過ぎになって、予約していた美容室に行った。
本来であれば夜に友人夫婦の結婚祝いを兼ねた食事会の予定だったが、不要不急の外出はやめようとキャンセルになった。
せっかくなので、食事に着ていこうと思っていた春物の新しい服を着て美容室へ向かった。前日の冬の寒さが嘘のように気温は22度まで上がり、自宅から徒歩15分の美容室に着くころには汗だくだった。
「どうですか、何か影響はありました?コロナ」というマスク姿の担当美容師に、今夜の食事の予定がなくなったことと、休校で暇を持て余した近所の小学生たちがずっとバスケをしてますと話した。
「えー、バスケて!あれけっこう音響くでしょ?たいっへんやなー」
そういって笑ってくれて、なんだか気持ちが楽になった。
しゃーないですね、こんなご時世だし、なんて言われていたら正論であってもちょっと凹んでいたかもしれない。

こんな髪型にしてくださいとスマホに保存した写真を見せようとした時、ロック画面に毛の生えたマンボウが出てきてまた笑ってしまった。
足取りも髪も軽やかに、寄り道せず帰宅した。
たったそれだけの1日だったが、とてもいい日だった。



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